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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二十一話・攻撃用の魔法を使う


 ワルワさんの家に戻るとタヌキが飛びついて来た。


フニャーフニャー


「置いて行ったって怒ってるのか、あははは」


全然怖くない毛玉の威嚇にほっこりして抱き締める。


「どうやら、その子はアタトくんの魔力に惹かれているようじゃな」


ワルワさんは魔法の研究者。


エルフである僕とワルワさんたち人間との違いは、やはり魔力ではないかと考えたようだ。


フニャフニャ鳴くタヌキに僕は体内から魔力を引き出して纏わせてやる。


フニャーン


うっとりした顔になるタヌキ。


「そうか、お前は僕の魔力が目当てだったのか」


何か残念だ。


苦笑する僕を皆が笑って見ていた。




 僕がタヌキに癒されている間にモリヒトがワルワさんに事情を説明してくれている。


「それは申し訳ない」


ワルワさんが苦しそうな顔をした。


『いえ、こちらが勝手にやったことです。


せっかくご協力頂いたのに無駄にしてしまい、申し訳ありませんでした』


話し合い、確認した上で、もし何か面倒なことになったら連絡をもらえるようにお願いする。


「え。 連絡ってどうやってするの?。 手紙とか届かないよね」


ヨシローの疑問にモリヒトはパンッと一つ手を叩く。


小さな光の玉が現れてフラフラと部屋の中を漂い出した。


『これはわたくしの一部です。 何かございましたらコレに呼び掛けてください』


ただし、これは声を掛けるだけで捕まえることは出来ない。


何せモリヒトの一部だから、僕以外の者に触らせるわけがない。


でも、連絡用の分身か。 そりゃあ便利そうだな。




「それじゃ、僕たちは帰ります。 お世話になりました」


買い物という当初の目的は達成されている。


それ以上を望むから失敗するのだ。


せめてもう一晩泊まっていけというワルワさんの申し出は有り難いが、すぐにでも移動したほうが良いと判断した。


「そうですね、後は私たちで何とかしましょう」


ティモシーさんは、これから来るであろう面倒ごとを引き受けてくれるらしい。


「ありがとうございます」


ティモシーさんに礼を取り、外に出る。


そして、夕闇に向かう森へと僕たちは足を踏み入れた。




 岬の塔に戻って数日。


鍛冶部屋の炉が完成し、ガビーは嬉しそうに小物作りに精を出していた。


しかも鍛冶だけでなく家事についてもモリヒトとの間にうまく調整が出来つつある。


「魔法で出来る範囲はモリヒトさんにお願いして、細かいことや手で作るものに関しては私にやらせてもらいます!」


例えば、部屋の掃除など埃の除去は魔法で一発だが、食器や鍋などを保管している収納棚は一々中身を動かすので雑巾で拭いたほうが早い。


ガビーは細々とした家事も好きらしく、モリヒトが洗浄除菌した布でシーツや僕の下着も縫ってくれた。


「へえ、器用なもんだ」


ドワーフとしては細身だが、ガビーはエルフや人間と比べれば十分な筋肉がある。


それなのに手先はびっくりするほど器用だ。




「へへっ、ありがとうございます。 アタト様の指導のお蔭です」


いや、僕は指導したわけじゃない。


単に「こういうものが欲しい」とガビーに頼んだら、試行錯誤しながら作ってくれるのだ。


素材は実家から取り寄せ、ほぼ元の世界のものと遜色なく出来ている。


「いやいや凄いよ。 僕としては助かるし嬉しい」


そう言って称賛していたらモリヒトの機嫌が少し悪くなった。


『アタト様、魔法の練習をいたしましょうか』


あ、なんかこれ難しいやつをやらせる前触れだ。


「は、い?」


有無を言わさず外に連れ出され、


『本日は魔獣狩りにいたしましょう』


と、モリヒトがニヤリと笑う。


まあ、ここんとこずっと魚釣りだったからいいけどね。




 魔獣の森に向かって歩く。


『まずは防御結界を』


「はい」


僕はフワッと魔力を纏う。


毎日タヌキに魔力を纏わせていたら、以前よりかなり上手くなった。


ありがとう、タヌキ。


 最低限の防御魔法が出来るようになったので、最近は攻撃魔法を習い始めている。


モリヒトにまだ危ないから早いと言われたが、僕としては何でも眷属に頼るのは嫌なんだ。


だから、もう命令でいいかと思って「教えろ」と言ってみた。


『よろしいですよ』


……案ずるより産むが易しだった。


『ですが、アタト様。 上手くいかないからとイライラして他の者に当たらないでくださいね』


うっ。 そりゃあ、初めての防御魔法は上手くいかなくてストレスを溜めまくってたのは確かだ。


だが、あの頃の僕とは違うのだよ。 ふっふっふ。




 というわけで、魔獣の森に到着。


魔獣の棲む森は人里に近いため火魔法は使えない。


「風よ、切り裂け」


申し訳程度の風が吹いて魔獣の足元の草を刈り取る。


うーん。


モリヒトなら一瞬で魔獣が真っ二つなのに。


魔獣がこっちに気付いて向かって来る。


「土よ、崩れろ」


魔獣の足元の土が崩れて穴が開き、魔獣がコケた。


あ、これなら使えるんじゃないか?。


「どうよ」とモリヒトの顔を見ると首を横に振られた。


『まだまだ穴が小さ過ぎます。 逃げられますよ』


モリヒトが何かを呟くと魔獣の足元に水溜りのような泥が発生した。


こっちに向かっていた魔獣が泥に足を取られ、そのまま沈んでいく。


はあ、すごいっすね。




 火魔法に関しては魚や肉を焼く時に使っている。


まだ不安定なので屋外でしか許可されない。


狩りを終え、塔の前で焚き火を囲む。


ガビーがバーベキュー用の網を作ってくれたので、簡易な竈を作り中に火を着ける。


モリヒトが捌いた肉を魔法で熟成させ、食べ易い大きさにしたものを網に乗せた。


肉を焼きながら一定の火力を保つ。


火の調整は結構難しいな。


僕の苦労も知らずに、ガビーが嬉しそうにパクパクと食べている。


「ガビーは火魔法が得意だっけ」


「はい、私たちドワーフは火の精霊に愛されてますからあ」


鍛冶系魔法最強種族だったな。


『安定するまで、がんばって焼いてくださいね』


モリヒトに「はい、シショー」と返したら、ものすごく睨まれた。


「タヌ子、ほれ」


冷ました肉を皿に入れてやる。


タヌキは雌だったことが判明したので、名前をタヌ子と付けた。


僕には名付けのセンスがない。



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