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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百八話・令嬢の父親との会話


 これがクロレンシア嬢の父親か。


息子と同じ濃い金色の髪が全体的に白くなっている。


メガネは片眼鏡なので老眼鏡だろう。


魔道具店でそんな説明を聞いた気がする。


クロレンシア嬢の同年代の父親からみれば高齢だ。


遅くに出来た子供かな。


そりゃあ可愛がるか。




 執務用の部屋から別室に移る。


多分、貴族管理部だから貴族対応用なんだろうな。


豪華な応接室という感じ。


「アタト、で良いのか?」


向かい合わせに座ると、公爵は僕と椅子の後ろに立つモリヒトを見比べる。


「あー、よく間違われますが、僕がエルフのアタトで、後ろが眷属精霊のモリヒトです。 モリヒト、本性を見せてあげて」


『はい』


モリヒトは一瞬、光の玉になるが、すぐにエルフ姿に戻る。


なんか、すごく警戒してるな。


もしかしたら、この部屋に魔道具でもあるのか、誰か護衛が潜んでいるのかも知れない。




 文官の一人がお茶を運んで来た。


「すみません、同席させて頂いてよろしいでしょうか」


跡取り息子だった。


「こちらは構いません」


僕は頷く。


「まあ良い」


ため息混じりに公爵が許可した。


息子は嬉しそうに扉の近くに立つ。




 公爵がカップを持ち上げて一口飲む。


僕もそれに合わせて、お茶を啜った。


そういう作法があるのだと、先日のお茶会に出席する際に習っていた。


上等な紅茶だな、普通に美味い。


この世界は緑茶が発達しており、珍しい紅茶を高級品として嗜む貴族が多い。


 そういえば、土産があったんだっけ。


僕はモリヒトに辺境地から持って来た茶葉を出してもらう。


「よろしかったら部署の皆さんでどうぞ。


辺境地で過ごされている『異世界人』サナリ様がお好きなお茶だそうです」


指導した、と言うと拙いらしいので好みの問題にすり替えた。


「へー、緑茶ですか」


息子のほうが興味を示す。


「僕はよく知りませんが、緑茶でも高級な抹茶というものらしいです。 あまり高温でない湯で淹れると美味しいと聞いています」


説明書付きなので誰かに淹れてもらってくれ。


僕は知らないことになっている。


公爵は、僕たちのやり取りを眉を顰めて聞いていた。




 そろそろ本題に入ってほしい。


「それで、僕は何をすれば良いのでしょう?」


呼び出されたのだから、何か用事があるのだろう。


書類?、証言?。 魔道具で何かされるのかな。


「ああ。 本来であれば恋愛は自由であるし、公爵家の娘に高価な贈り物をしても構わないのだが。


今回、魔獣の毛皮で仕立てられた外套が国宝級であったことが問題になった」


僕はウンウンと頷いて、先を促す。


「聞きたいのは、それだけ価値のある物を何故、公爵家に贈り、国に献上しなかったのかということなのだ」


僕は首を傾げる。


公爵家に対するご機嫌取り?。


王族を蔑ろにした、と思われた?。




 僕は毛皮を大量にもらったが処分に困り、外套にしたことを話した。


「まずエンデリゲン王子に贈ることにしました。 それだけでは余ったので、知り合いの中で、王子の次に似合いそうな方に贈っただけです」


エルフにはそもそも、神に対して奉納することはあっても、高位の者や国に対し、献上する習慣がないことを話す。


まあ、これは僕が知らないだけかも知れないが、モリヒトがそう言ってたから間違いないと思う。


「では、王子殿下やクロレンシアに贈った理由はー」


「はい。 似合いそうだったからです。 王子と公爵令嬢なら似合うし、あれを着て宴や式典に出たら映えるなあって」


平民や下位貴族には、上等な毛皮を来て出席するような、そんな機会は無い。


せっかくなら着てもらいたかった。


「では、気を引こうとした訳ではないと」


「ええ。 なんなら、また手に入ったら贈りましょうか?」


子供の僕が持っていても宝の持ち腐れだし、売ったとしても奪い合いや盗難の危険に晒される商売人がかわいそうだ。


キチンとした警備がある王宮か高位貴族の館が安心出来る。


「……そういうことだそうです」


公爵が低く言葉を漏らした。




 すると突然、壁に扉が現れた。


モリヒトが警戒していたのは、これか。


その扉から入って来たのは、ヨボヨボの爺さんである。


「しかと聞いたぞ」


ん?。


爺さんの後ろから、また誰かが入って来た。


何故か僕を敵視して睨んでいる。


モリヒトがピリピリするからヤメテ。


「この方は引退された先代の国王陛下だ。 一緒にいるのは」


公爵の紹介を遮って、後ろにいた中年男性が口を開く。


「私は国に雇われた宮廷魔術師。 この国の最高位の魔術師だ!」


はあ、そうなんだ。


じゃ、爺さんは元国王で、隣の若作りの中年男性が魔術師と。 うん、把握した。




「それで?」


僕は座ったまま、まったりとお茶を飲む。


「無礼だ!」とかなんとか、魔術師が叫んでいるが、引退した爺さんと公爵より下位の人間だろ?。


僕は盗み聞きしてたヤツに対する礼儀は持ち合わせていない。


 元国王の爺さんは公爵の隣に座る。


「ではエルフ殿、新しい毛皮が入ったらワシにも作ってくれんか」


「はい、いいですよ」


確か、黒狸の毛皮ならあるけど、黒色はあまり喜ばれないと聞いた。


「モリヒト、御守りならあるんじゃない?」


白と銀の毛玉の御守りを、スーから余分に買ったはず。


誰かのお土産になるかなと思って。


『これならありますが』


二つの白い毛玉と、二つの銀の毛玉の御守りが出て来た。


 それを二つとも爺さんに差し出す。


「効果は小さいですが、汚れを寄せ付けないという特性持ちの魔獣の毛で出来てます。


どなたか魔術師様に魔石を組み込んでもらい、『清潔』や『洗浄』なんかの魔力を込めてもらうと良いかなーと思いますよ」


チラリと魔術師を見る。


国一番の魔術師なら、それくらい出来るだろ。




 好奇心旺盛な公爵子息が、じっと見ている。


僕はモリヒトからもう一つ取り出させた。


白と銀色の2色の毛玉の御守りだ。


「これは見本として国に献上いたします。 モリヒト、魔石はある?」


『はい』


モリヒトは、小さな魔石を取り出して毛玉に埋め込む。


「『浄化』を」


『はい』


毛玉の魔石に魔法を込めた。


これで『浄化』の魔道具の完成である。



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― 新着の感想 ―
[一言] 「ではエルフ殿、新しい毛皮が入ったらワシにも作ってくれんか」 何でも欲しい欲しいと乞食そのもののセリフですな。他人から物を貰って当然と考えているのでしょうね。
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