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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第二百話・魔道具の効果を見た


 重ねた手の隙間からピカッと光が漏れた。


「えっ」


司祭と若い神官が驚きの声を上げる。


「『異世界人』の思考が読めました。 サナリ様はケイトリン嬢との婚姻をお望みのようです」


「はい、そうです!」


ヤマ神官が読み取った言葉に、ヨシローが嬉しそうに答えた。


「うむ。 当然だな」 


喜ぶヨシローを見て王子が頷く。


ティモシーさんは様子を見て、とりあえずホッとした顔になる。




「ど、どういうことだ!、これは。 何故、私では反応が無く、コヤツなら反応するのだ!」


「それは司祭様のほうがよくご存知なのでは?」


焦る司祭にヤマ神官が突っ込んだ。


「それは偽物だからだ」と遠回しに指摘したのだが、


「知らぬ!、バカなことを言うな」


と、怒られてた。


神職者の喧嘩なんて見てられん。


僕はヤマ神官に頷き、サッサと種明かしをしてもらう。




 ヤマ神官は、司祭たちに手のひらを広げて見せる。


そこには普通に見えるコインが乗っていた。


「司祭様からお預かりした魔道具は箱に入ったままです」


そう言って箱を開くと、キラキラと輝くコイン型魔道具が収まっていた。


「えっ。 では、今、光ったのはこちらの魔道具ですか?」


若い神官が二つのコインを見比べている。


「ヤマ神官。 その魔道具はどこから持って来た」


司祭の顔色が悪い。


さっきまで怒りで赤かったのに、だんだんと青くなっていく。




「前任の管理者より預かったと仰る方から内密にお借りして来ました。 お借りしただけですので、すぐにお返しする約束ですが」


「なんだと!。 それは教会の所有物だ。 我々のものなのだから返してもらうのが当然ではないか!」


おやおや、この司祭は爆弾発言したのに気付いていないのかな。


 では、教えてやらねばなるまい。


「へえ、その魔道具のコインって本物なんだ。 じゃあ、このキラキラしたヤツが偽物ってこと?」


僕は装飾された箱のコインを指差す。


「そんなはずはない!。 私が保管していたものが本物だ」


あーん?、矛盾してることに気付いてないの?。


「じゃあ、借り物のほうは持ってた人に返してあげても問題ないですね」


ヤマ神官は頷き、司祭はハッと気付いて奥歯を噛んだ。




 僕は、この場を取り仕切っていた若い神官に顔を向ける。


「でさ。 この場合はどうなるの?」


「そうですね。 違う結果になってしまったので、神様に伺う必要があります」


若い神官は相手が子供のせいか、丁寧に話してくれる。


「ふうん。 どうやって神の声を聞くんですか?」


「『神の声を聞く』という才能持ちの人に、神に伺ってもらうのですよ」


へえ?。 いるのか、そんな人。


「その才能持ちの人ってどこにいるの?」


若い神官は司祭の顔を見る。


「確か、司祭様のー」


「お前たちが急に来るから、間に合わなかったのだ」


ちゃんといるけれど「今日は来ていない」ということらしい。




 ティモシーさんが、わざとらしく声を掛ける。


「でしたら。 神に訊ねる代わりに、ここにいらっしゃる精霊様にお聞きしてみるのはいかがでしょうか、司祭様」


精霊は神の御使みつかいといわれ、人族、エルフ族、ドワーフ族等より神に近い存在である。


魔力のみで構成された生命のため、嘘を吐くことが出来ない。


「はーい。 僕の眷属精霊のモリヒトに聞いてみていいですか?」


司祭と若い神官は周りを見回す。


あれ?、見つけられない。 モリヒト、気配消し過ぎだ。


モリヒトが黒メガネを外すと、司祭たちが驚いて凝視した。


気配遮断?、認識阻害?。


かなり強力なヤツを魔道具である黒メガネに付与したな。


「エルフ、ではないのか?」


いつもの金髪緑眼の美形エルフの姿だからな。


「うん。 モリヒトは『大地の精霊』なんだ。 僕の眷属だから、僕の言うことは聞いてくれるよ。 モリヒト、本性に戻れ」


『はい。 アタト様』


一瞬で金色に輝く光の玉になる。


これが本性、本来の精霊の姿だ。




 宙に浮いた光の玉を見て、若い神官は腰を抜かし、司祭は青ざめていた顔から血の気が引いて白くなった。


「モリヒト、コレをどう思う?」


『はい、真実のみをお伝えいたします。


まずは、その箱に入ったコインは、単に輝くという魔法が込められた魔道具。


ヤマ神官の手にあるコイン型魔道具は、いにしえの『異世界人』が作り上げた物です」


魔道具の真偽の判定。


虚偽の魔道具を使用した司祭の罪が決定した。




 モリヒトはエルフ姿に戻る。


「私は知らなかったのです。 本物だと信じていました!」


司祭がモリヒトの前に跪いて訴える。


「おかしいですね。 我が同胞が司祭様に依頼されて魔道具師から品物を受け取って来たと証言しています。


その魔道具師は司祭からの依頼品だと話していたそうですが」


ティモシーさんが証拠品として箱を取り上げた。


なんだ、ちゃんと聞き込みしてたのか。


「嘘だ!、私は嵌められたのだー」


「警備兵を呼んで参ります」


若い神官が扉を開けようとして異変に気付いた。


「開かない?」


扉を叩き、廊下にいる警備兵を呼ぼうとしたが、返事がない。




「閉じ込められたのか?」


ティモシーさんやヤマ神官も扉をガチャガチャやるが開く気配はない。


呼び掛けても、大きな音を立てても、外の反応がない。


「なるほど」


これがウゴウゴが嫌がった魔力か。


 僕は司祭の表情を伺う。


焦った風に見せているが、どことなく口元が緩んでいた。


『アタト様、この魔法は部屋と外部を完全に遮断しています。 このままでは命の危険があります』


なんてこった。


全員殺す気か。 それとも、自分だけは助かるようになっているのか。




「ウゴウゴ、イヤな魔力を全部吸ってくれ」


『エー、ヤダー マズソー』


僕は懐から丸くなっている真っ黒な魔物を取り出した。


「ヒッ」「ま、魔物!」


軽く部屋の中がパニックになる。


ウゴウゴの言葉を理解出来るのは僕とモリヒトだけだしな。


「好き嫌いは良くないぞ。 不味くても残さず食べなさい」


『ハーイ』


不満そうに返事をしてギュルンと触手を伸ばす。


「うわああ、来るなああ」


ウゴウゴは椅子から転げ落ちた司祭の服に張り付いた。


『アッタヨー』


ヨシヨシ、後で美味い魔力をやるぞ。



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