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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百九十二話・約束の魔道具を予約


 僕はため息を吐く。


「どうした?、アタトくん」


いつの間にかヨシローが傍にいた。


チラリと見ると、ケイトリン嬢はアリーヤさんと二人で何かを手にして話し合っている。


女性たちの話にはついていけなかったか。


「モリヒト用のメガネですよ。 変装用にどうかと思って」


モリヒトは魔力で何でも作り出せるかというと、実はそうでもない。


参考になる実物が必要で、洋服とか身に付けるものは一度作成すれば後は魔力を元にして作ると聞いた。


知らないものは作れないのである。


「ああ。 そう言ってたね」


ヨシローも一緒に見てくれたが、やはり見解は同じだ。


高価過ぎて、使い勝手が悪い。


キラキラのモリヒトをなんとかしようとしてるのに、さらにキラキラにしてどうする。


「申し訳ありませんが、お店に行けば僕が買えるような物はありますか?」


店員はウンウンと顔を縦に振り、


「もちろんでございます!」


と、勢いよく答えた。




 結局、僕はその場では購入せず、後日、店のほうに伺うことにした。


ケイトリン嬢たちのほうは、さらに夫人を交えて話し込んでいる。


僕は彼女たちの手元を見た。


指輪かな?。


「ヨシローさん」


「うん?」


僕は背伸びして、ヨシローさんの耳元で囁く。


「最近、ケイトリンさんに何か贈りましたか?」


「え?、ないな。 たぶん」


ハーッと大きく息を吐く。


「せめて婚約指輪くらい用意してあげてくださいよ」


たぶん、ここにある物は高くて買えないと思うが。


ヨシローは顔を青くした。


「うわっ。 そうか!、王宮の貴族管理部に行くなら必要だよな!。 どーしよ!!」


オロオロするヨシローを引っ張り、僕はケイトリン嬢の傍に移動する。




 ケイトリン嬢の服をそっと引いて、こちらを向いてもらう。


「ケイトリン様、ヨシローさんが指輪を贈る予定らしいんですが、好みを教えて欲しいそうです」


こういう時、子供は得だよな。 空気読めとは言われない。


「ま、まあ」


顔が赤くなるケイトリン嬢を既婚女性二人が微笑ましく見ている。


ヨシローは冷や汗ダラダラだろうが自業自得だ。


全く、サッサと用意しとけよ。




 今回呼ばれた商人は魔道具商会だったため、単なる宝飾品は無い。


指輪型などの装飾品を元にした魔道具はあるが、どうしても魔力を必要としない宝飾品よりは高価になる。


「ヨシローさん、先ほどの訓練に付き合って頂いたお礼がしたいです。 何か気に入ったものがありましたか?」


僕は笑顔でヨシローを促す。


さあ、早く決めろ。


「リーンちゃ、ゴホン、ケイトリンさん。


気になったものがあれば教えて欲しい」


ヨシヨシ、ちゃんと言えたな。


「えっ、でも高価なものばかりで……」


僕は夫人に顔を向ける。


「では奥様。 申し訳ありませんが、ヨシローさんがケイトリン嬢に贈る指輪を選んで頂けませんか?」


「えっ」


ヨシローとケイトリン嬢が同時に驚く。


「あら、アタト様のお願いなら喜んで」


嬉々として並んでいる商品から選び始めた。




 ヨシローが僕の背中を突く。


「ど、どういうこと?」


ケイトリン嬢は、夫人に促されてアリーヤさんと共に指輪型魔道具を見ている。


「僕が奥様に買ってもらってヨシローさんに渡すので、それをケイトリン嬢に贈って婚約指輪ということにしてください」


「それはー、なんかちょっと違うようなー」


ヨシローは顔を顰める。


まあ、元の世界なら給料三ヶ月分とかいって、自分の稼ぎに合わせて贈るものだしな。


自分の金で用意したいのは分かるよ。


 本来なら既に婚約指輪は贈っていなければならない。


「今回は急遽、決まりましたから間に合わなかっただけということにしておきます」


王宮の貴族管理部に行くなら約束の証である婚約指輪をしていたほうが良い。


それも辺境伯夫人に見立ててもらった高価な物のほうが良いはずだ。


「辺境地に帰ったら、ちゃんと分割で払ってもらいますから」


無料ただほど高いモノは無いから、お代は頂きますよ。




 近いうちに貴族管理部に向かうことになる。


「役人たちに仲の良さを見せ付けてやりましょうよ」


僕がニヤッと笑うとヨシローの顔が引き攣る。


「お、おう」


そろそろ女性たちも決まったかな。


「あ、あの」


おずおずとケイトリン嬢がヨシローに見えるように宝飾品が入った箱を見せる。


その後ろから夫人の解説が入った。


「これは伝統的な王国式の指輪ですわ」


家の紋章を入れて貴族階級であることを示すものだという。


ケイトリン嬢の場合はヨシローが婿に入る形になる。


下級貴族で領主である父親の後を継ぐので、家紋を入れた宝飾品は持っていてもおかしくはない。


「え?。 ケイトリンさんはまだ平民では?」


ヨシローが訊ねた。


貴族の子供でも爵位を賜らなければ平民と同じである。


「大丈夫ですわ。 ケイトリンは我が辺境伯家が認めた後継者であり、王族からはいずれ中位貴族に取り立てると約束されていますもの」


よほどのことがなければ覆せないらしい。




 それよりも、僕はこの魔道具に付与されている魔法が気になる。


「装飾品には基本的に、それを身に付ける方の体格に合わせる調整が付与されております」


担当らしき店員が説明してくれた。


あー、指輪の場合はサイズを自動で調節してくれるやつだな。


採寸しなくていいのは助かる。


 僕は懐のウゴウゴをツンと突く。


『ダイジョーブー。 マズイ マリョクジャナーイ』


良かった。


僕も了承し、家紋を入れてもらう手続きに入る。




「これでしたら明日にでも終わりますので、夕方にはお届け出来るかと」


店員にそう言われたヨシローは、


「それなら、取りに行きますよ」


と、僕を振り返って微笑む。


「アタトくんが店に行く予定だから、ついでに一緒に行こうと思います」


あー、はいはい。


「分かりました」


僕が頷くとヨシローはキランを呼ぶ。


「すみませんが、ティモシーさんに連絡を取ってもらえますか?」


「はい。 承知いたしました」


急いで部屋を出て行く。


「じゃあ、私、変装しないと」


アリーヤさんが突然、そう言い出した。


「え?」


一緒に出掛ける気らしい。


変装するのがかなり楽しかったんだと。



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