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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百九十一話・王都の魔道具を選ぶ


 僕は擬態魔法を発動して見かけを人間にする。


魔法を使わないってルールだったから擬態を解いたけど、考えたら身体的に違和感が無いせいか、エルフのほうが動きやすいんだよな。


まー、ズルではないからいいか。


 ヨシローの懐からウゴウゴが顔を出したので、こちらから手を伸ばすとスルッと腕の中に移動して来た。


それを撫でていたら声が掛かる。


「エルフ様でしたか、大変失礼いたしました」


家令さんを始め、兵士たちまでが整列して礼を取る。


「はあ、エルフだと何かあるんですか?。 辺境地では皆、異種族でも普通に接してくれましたが」


僕が首を傾げると館の者たちも同じように首を傾げた。


「えーっと、ではエルフ様は怒っておられない?」


老兵の言葉に僕は顔を顰めた。


「は、怒る?。 何に?」


試合に負けたからって機嫌が悪くなるようなガキじゃないぞ、僕は。




「うふふふ。 アタト様、申し訳ございません」


辺境伯夫人が謝罪しながらやって来た。


意味が分からんのだが。


「王都では、ほとんどの者がエルフ族を見たことが無いのです。 それで皆『エルフは傲慢で怒りっぽい』などという噂を勝手に信じておりますのよ」


「ああ、なるほど」


エルフはずっと以前から過剰にチヤホヤされたり、捕まえようとされたりしたんだろう。


そうなったら僕でも怒るよ。


そんなヤツらは魔法でコテンパンにやられたんじゃないか。


だから、エルフという恐ろしい客の機嫌を損ねたのでは、と心配したわけね。


「普通に接してもらって大丈夫ですよ。 あー、僕の種族については秘密でお願いします」


イタズラっぽく笑ってみせる。


「はいっ!」


元気があって大変よろしい。




「さあ、お食事にいたしましょう。 午後から魔道具商会から人が来ますわ」


そうだった。 王都の最新の魔道具なんてワクワクする。


「楽しみです!」


元気に答えるとクスクスと笑い声がした。


ん?、なんで皆、ほっこりした顔なの?。


「珍しいな、アタトくんが年相応に見えるよ」


ほお、ヨシローは目が悪いのかな。




 昼食は辺境伯王都邸の本館で頂いた。


ゆっくりとお茶を飲んでから商人が待つ部屋へと移動する。


「奥様、この度はお声掛け頂き、誠にありがとうございます」


大袈裟に挨拶する小太りの中年男性が店主らしい。


頭が少し寒そうなんだが、あれはやっぱり魔道具ではなんともならんのだろうなー。




 夫人は優雅に微笑む。


「こちらのお客様方に見せて頂きたいのです」


「はいっ、本日は色々と取り揃えて参りました!」


いくつかあるテーブルに、二人の若い男性店員がテキパキと品物を広げていく。


「アタト様、ヨシロー様、お代は我が家が引き受けますのでお好きな物をどうぞ」


いや、そんな気は無かったけど。


「ありがとうございます。 では、お言葉に甘えて」


遠慮するのは子供らしくないからな。


「いやいや、そんな訳には」


ヨシロー、止めとけ。 ここで遠慮は美徳じゃないぞ。


「ヨシロー様。 魔道具を見せて頂いてからにいたしましょう」

 

ケイトリン嬢はずいぶん貴族らしくなったな。


値段交渉は欲しいものがあったらで良い。


「そ、そうだね」


うん、ヨシローは尻に敷かれとけ。





 僕はそっと懐に手を入れる。


「ウゴウゴ、変な魔力を感じるものはないか?」


誰にも聞こえない程度に囁く。


『ウーン。 アッチカラ マズソーナ マリョク、カンジル』


服の中で壁のほうをツンツンとつつく。


分かった。 近寄らないようにしよう。


 ケイトリン嬢とヨシローは魔道具に夢中だ。


アリーヤさんは僕用に並べられた物を見ている。


僕と同じ年頃の子供がいるそうだから、気になるものがあるのかな。


夫人は店主と離れたテーブルでお茶を飲みながら歓談中である。




 僕の傍に店員の一人が張り付いていた。


「気になるものがございましたら説明させて頂きますので、気軽にお声掛けください」


「はい、ありがとうございます」


キランくらいの長身の優男だが、商人らしい気配りが見える。


さすがだな。


「メガネはありますか?」


「メガネでございますね」


この世界では、視力はある程度魔力があれば矯正が出来る。


しかし、よほど普通の生活に不自由がない限り、必要な時だけ魔力を使う感じだ。


そんな視力を助け、魔力を節約する魔道具がメガネである。


他の人より魔力を多く消費してしまうため、常時メガネを掛けている者は魔力に余裕があるとみなされるらしい。


まあ、平民はあまりメガネを掛けている者はいない。




「大人の男性用です。 贈り物にしたいので」


自分用ではないと伝える。


「承知いたしました。 こちらに」


あ、ウゴウゴが嫌な魔力を感じるって言ってた壁際のテーブルだ。


「こちらに各種ご用意させて頂きました」


ふうん。 この館の誰かが僕たちが欲しがっている物を伝えたのだろう。


確かに事前に聞いたほうが準備はし易いから、店側が知っていても不思議ではない。


だけど、その魔道具から嫌な気配がするのは勘繰ってしまうな。




 魔道具にも色々な種類がある。


制作する時点で職人が魔方陣を刻み、魔力を込めるもの。


発動した時だけ使う魔道具で、マッチみたいに点火するだけなど魔力消費が少ない場合が多い。


また、魔石という電池のような動力源にすでに魔法が

込められているものもある。


こちらは照明など継続して魔力を消費する場合、その魔力に見合った魔石が必要だ。


「値段を訊いても?」


「はい。 こちらの列は有名な職人による美術的にも価値のある逸品になっておりまして」


はあ、そんな物は夫人にでも売り込んでくれ。


「えっと、平民が少しがんばったら買える程度でお願いします」


「あの、奥様がお代の心配は不要とー」


僕は優男の店員を見上げる。


「僕みたいな子供が貴族が買うような品物を贈ったら喜ばれますか?」


受け取った方が逆に気を使うような物は要らない。


「さ、左様でございますね。 では、こちらなどいかがでしょうか」


テーブルの隅に飾りの無い、どこにでもありそうな形のものはある。


だけど、素材は金や銀、琥珀を使った飴色、珊瑚のような赤。


どれも平民には無理だな。



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