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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百八十六話・王都の館と貴族街


 辺境伯家の王都邸は、王都の貴族街と呼ばれる地区にある。


僕は馬車の中で、キランがヨシローに説明しているのをぼんやりと聞いていた。 


「王都は大まかにいうと、王城を中心に円状に広がり、貴族街、施設街、商人街、一般住民街に分かれています」


この王都は、地形的には周囲を高い山に囲まれた盆地だ。


その中央にある小高い山の上に王城がある。


「王城には王宮や国政庁という役所があり、高い城崖に囲まれ厳重に守られています。


その山裾に貴族街が広がり、その周囲の北側に施設街、南側に商人街。


それ全体を囲む外環が一般街と呼ばれ、王都を囲む塀までが庶民の住む地区になります」


必然的に塀の外に貧しい人々が住む地区はあるが、それはどうやら見て見ぬフリらしい。


まあ、僕には関係ないな。




 辺境伯家の王都邸に到着。


貴族の館はそれぞれに高い塀に囲まれている。


辺境伯の館は、豪華な模様を描く金属製の魔道具である魔法柵で守られていた。


門番が馬車の紋章を見てすぐに大きな門を開く。


「土地代だけでも高そうだな」


広い敷地を見たヨシローが呟く。


土地代なんて、この世界にあるのか?。


「国の土地は全て国王の所有地で、それぞれ任命された貴族が領主となって国民に土地を貸し出して使用料を取り、国に納めます」


それが基本的な税らしい。


商売に対する税についてはかなり複雑らしく、詳しい事は教えてもらえなかった。


「国王様や高位貴族は、領地の一部を自分の部下である下位貴族に任せることもあります」


国から領地持ちの貴族に対して年予算も出ているし、高位貴族からは部下にきちんと報酬も支払われるそうだ。


王都周辺の領主や辺境伯の飛び地なんかもこれに当たる。


 任された土地を地主である国王の代わりに活用し、人を集めて利益を上げないといけない。


取り立てが厳しいと人が減り、活用出来ない荒れた土地でも地代は領主が支払うという仕組み。


貴族も甘くないということだ。




 辺境伯家の王都邸の玄関に到着し、まずは家令や使用人たちの出迎えを受ける。


家令さん、デカい。


モリヒトより大きな人間は久しぶりだ。


辺境伯家は使用人の多くが武人寄りなんだよな。


しかし、この図体で家令ということは人を扱うのが上手いんだろう。


「奥様、お帰りなさいませ」


「出迎え、ご苦労様。 今回はお客様がいらっしゃるのでよろしくね」


「はい。 畏まりました」


ここまで同行した辺境伯家の護衛や使用人たちは、そのまま館での仕事につく。


王都邸の使用人たちは淡々と荷物を運んで行く。




「失礼ですが、お荷物は」


僕は使用人に問われ、預かっていた荷物を出すようにモリヒトに頼む。


モリヒトは次々と大量の荷物を玄関前に出していった。


『こちらが辺境伯夫人の物です』


ドワーフたちに荷馬車を貸したため、乗り切らない荷物を預かっていた。


あとは王都邸で預かってもらえると聞いている衣装の箱だ。


『こっちはケイトリン様、隣りはサナリ・ヨシロー様の分になります』


それを見た家令さんと使用人たちが固まった。


いったいどこから現れたのか分からなくて呆然としている。


「モリヒト様、これで全てでございますか?。 確かにお引き受けいたします。 ここまでお運び頂き、ありがとうございました」


キランが、ここぞとばかりに出て来た。




 馬を降りた護衛たちは、ここで一旦、任務終了となる。


「我々はここで失礼いたします」


ティモシーさんをはじめとする教会警備隊員が夫人に挨拶をする。


「道中、ありがとうございました。 御礼は後ほど届けさせて頂きますわ」


「ありがとうございます」


おそらく寄付という形になるんだろうな。


 ティモシーさんはヨシローに、


「何かあればここに連絡をくれ」


と、王都の施設街にある宿を教えている。


教会本部を指定しないのは、そこを信用していない証拠だ。


「うん、分かった。 色々と街中も見て回りたいし案内を頼むよ」


「あはは、承知した。 アタトくんも一緒にな」


「はい」


軽く手を上げるティモシーさんに僕は会釈で答えた。




 警備隊がいなくなると、それぞれの部屋に案内される。


僕たちは四人まとめて別棟にしてもらった。


辺境伯領都の本邸のように別棟があるなら、とお願いしたのである。


結界を張るには、すでに何かが入り込んでいる可能性がある本館より別棟のほうが都合が良い。


 今回、辺境伯家の王都邸で世話になるのは、僕とモリヒト、ケイトリン嬢と護衛メイド、ヨシロー、アリーヤさん。


一応、アリーヤさんは僕の保護下にある。


他の町での熱狂ぶりを見ると、アリーヤさんの安全のためにも高位貴族の館のほうが面倒がなくて良い。


夫人もすっかりアリーヤさんのファンなので、嬉しそうに承諾してくれた。


 ヨシローに関しても、呼び出した教会が面倒を見るはずだった。


僕がたまたま王宮に用事が出来て同行する形になったため、辺境伯が教会を断り、まとめて肩代わりしてくれたのである。


なので、教会からは警備隊の派遣のみだ。




「建物の一階は共有になります。 寝室はそれぞれ二階にご用意いたしました」


一階は厨房付き食堂、娯楽室、大きな浴場。


二階は客用の居間を中心に、主客用寝室が一つに護衛用と侍女用が別にある。


「主寝室はアタト様に、ヨシロー様は護衛用部屋。 アリーヤ様とケイトリン様と護衛メイドは侍女部屋と伺っておりますが、本当によろしいのですか?」


家令さんが案内しながら訊いてくる。


「使用人用といっても広さは十分です。 ベッドも有りますし、私たちには勿体ないくらいですわ。 ね、アリーヤ様」


「はい、ケイトリン様」


ケイトリン嬢は下位貴族の娘だが、まだ貴族ではないし、アリーヤさんも平民である。


僕も皆と同じ扱いで構わないのだが、夫人が「恩人ですから」と譲らず貴賓客扱いになった。


家令さんにだけは『モリヒトは人間ではないので』と伝えたが、顔色を変えなかったのはさすがだ。


しかし今回、ケイトリン嬢がヨシローの付き添いになり、辺境伯夫人まで同行。


これは、辺境伯に何か意図がありそうな気がする。



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