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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百八十三話・警備の仕様を変更


 あらかじめ、馬車を結界で囲っておき、取り付こうとする人々や教会関係者を寄せ付けない状態にしておいた。


「では、失礼いたします」


アリーヤさんは優雅に一礼して馬車に乗り込む。


動揺を見せないのは、さすが舞台慣れしてるな。


 すぐに馬車は動き出し、町が見えない所まで来て休憩にした。


街道を外れ、行き交う人々からは見えない位置に2台の馬車と1台の荷馬車が停まる。


僕はキランに頼み、御者や護衛たちに軽食と飲み物を渡す。


慌ただしく出て来てしまったため、まともに食べていない者が多かったのだ。


「食事しながら聞いてほしい」


ティモシーさんが、今後の警備の変更を伝える。


「王都まで、あと3日だ。 その間、休憩並びに宿泊は基本的に町の郊外にしようと思う」


今朝の騒ぎを見た皆は納得して頷く。




「町で食材などの買い出しが必要な場合は、侍女殿か使用人の誰かに買い出しをお願いする。 出掛ける時は必ず護衛に声を掛けてくれ」


町での単独行動は禁止し、最低でも三人くらいでの行動が望ましいとされた。


宿泊予定だった宿や、事前に寄ることを知らせていた飲食店には変更を伝える必要もあるという。


 キランが手を上げ「私が行きます」と請け負った。


ジェダさんも必ず付き添うと約束する。


おそらく町中の様子も見ておきたいのだろう。


どこで教会関係者が待ち構えているかも分からないしな。




「アタトくん、モリヒトさん、毎回お手数だが小屋のほうは頼む」


「はい、任されました」


僕は微笑んで頷く。


 アリーヤさんが立ち上がり、


「皆様、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」


と、謝罪の礼を取る。


「とんでもない!。 アリーヤさんのせいではありませんよ。 俺たちこそ力不足で申し訳ない」


ヨシローも立ち上がり、頭を掻きながらペコペコと頭を下げた。


暗い雰囲気が、皆の疲れた顔が、ヨシローのお蔭で歌姫を見守る暖かい目になる。


そうだよな。 誰が悪い訳でもないのに謝るのは何だかかわいそうだ。




「すみません。 一つ提案なんですが」


僕はティモシーさんや夫人を中心に話をする。


「念の為伺いますが、この先、魔獣は出ないと思いますか?」


「ああ、それは滅多にないよ。 人間のほうが厄介だがな」


ティモシーさんがため息を吐く。


ならばようはある。


 僕はスーを呼ぶ。


「なによ」


「ここにいる女性たちを髪型や化粧で別人に見えるように出来ないか?」


アリーヤさん、ケイトリン嬢、辺境伯夫人。 この辺りを中心に。


「ええ、出来ると思うわ」


僕は簡易な小屋を作り、ガビーに手伝わせて準備に取り掛からせる。


 オシャレさんのスーは、女性の髪型を変えたり、小物を使って飾り立てたりするのが好きだ。


ガビーに言わせるとセンスは良いらしく、旅の間も色々と買い込んでいた。




「どういうことかな?」


ティモシーさんが眉を寄せて訊いてくる。


「変装して頂こうと思いまして」


女性たちの顔に驚きと好奇心が溢れた。


「まあ!、それは楽しそうね」


夫人はノリノリである。


「男性方も軍服や制服を脱いで、平民の旅装にしてください。 無いという方は次の町で買い揃えるまでマント着用でお願いします」


匂いや魔力で襲って来る魔獣ならば意味は無いが、同じ人間なら誤魔化せる。


目眩し程度でもやってみる価値はあると思う。




 残りは2泊3日。


「馬車も3台は目立つので、1台ずつに分けたほうが良いかと思います」


街道を移動中なら周りにも馬車は多いが、休憩地などで並んで停まっているとかなり目立つ。


「馬車の紋章は布を掛けて隠しましょう。 それぞれに最低限の護衛と交替の御者は付けてください」


長旅に護衛と交替の御者は付きものなので、町で雇った傭兵ということにする。


相談して組み分けを行うことにした。


 まず、ケイトリン嬢とヨシローを夫婦に見立て、メイドとキランがそのまま使用人として付き添う。


先頭になるのでティモシーさんが護衛として付く。


 荷馬車はドワーフを中心にした職人の移動に見せかけて一組にし、余った護衛や使用人たちも乗せる。


騎乗兵の一部は荷馬車の護衛に移し、希少なドワーフの荷物を積んでいることにした。


 僕たちは、辺境伯夫人と親子に見せかけて、侍女に化けたアリーヤさんと同乗する。


まあ、どう見ても貴族か富豪の家族にしか見えないので、僕たちはそれなりの衣装になってしまうが。


「あ、ティモシーさんたちも教会警備隊の制服は着替えてくださいよ」


「あ、うん、分かった」


領兵の中にマント姿が三人ほどいるので、キランに次の町での買い物を頼んでおいた。


まあ、女性たちが変装を終えるまで時間がかかるのは仕方ないね。




 町から離れていれば町の有力者にお伺いを立てずに済むが、不審者に見られないかな。


「この街道沿いの領主には事前に辺境伯夫人の一行が通ることは知らせてありますから」


と、キランが言うので、何かあっても領主の許可はあるので大丈夫らしい。


 少し日程に遅れは出たが、町に入らない野営なら特に問題はない。


宿に入る時間や、町に入る時間を考慮しなくて良いからな。

 

好きな時に休憩して、適当な場所を宿泊地にする。


沼地と違ってこの辺りは地盤が良く、平地が広がっているので、遠慮なく部屋が数個ある宿並みの建物を作った。




 野営で一泊した翌日、本来なら次の宿泊予定だった町が見えて来た。


街道を外れ、少し早めの昼食休憩にする。


「では行って参ります」


キランは、ジェダさんと他にも領兵を連れ、買い物がてら馬で町の様子を見に行く。


問題がなければ、一行は馬車でこのまま町を通り抜ける予定である。




「ふふふ、楽しいわね」


豪商の奥様風に変装した辺境伯夫人は終始ご機嫌である。


夫人の実家から頂いた食材がまだ豊富にあるし、モリヒトが自重なく建てた小屋には立派な厨房もあった。


使用人たちは腕を振るえるので嬉しそうだ。


 時間を掛け、ゆっくりと昼食を食べていると、キランたちが戻って来た。


同行した領兵には買って来たものの整理と配布を頼む。


キランとジェダさんには僕の部屋で町の様子を聞くことになった。



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