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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百五十四話・属性の話を聞く


 そんなわけで、僕たちはしばらくワルワ邸に滞在することになった。


モリヒトが忙しいので、僕はウゴウゴとおとなしく本を読んだり、魔力の受け渡しをしたりして遊んでいる。


「本当に黒いんすねー」


ウゴウゴを見ながらバムくんが言う。


「あははは、色んな魔力を餌にしてたら、いつの間にかこんな色になってましたー」


本当は僕がダークエルフという種族だからなんだろう。


長老の資料の種族特性の中に『闇属性』というのがあった。


たぶん、その影響ではないかと思う。




 ワルワさんは魔法や魔力の研究者だ。


闇属性についても知ってるかも知れない。


バムくんが家に帰り、ヨシローはティモシーさんと飲みに行ったと聞いて、僕はワルワさんの部屋を訪ねた。


「すみません、少しだけお時間を頂けませんか」


「おお、もちろん。 どうぞ、お入り」


僕は一人で部屋に入る。


モリヒトは地下の部屋に置いて来た。


 ワルワさんの部屋は二階にあり、一階の居間の半分くらいの広さがある。


ベッドやタンス、広い机には書類が山積み。


床にも所々に資料らしき紙束や本が散乱していた。


ワルワさんは椅子を持ち上げ、ベッドの横に置いて座る。


僕はワルワさんのベッドに腰掛けた。


「何かね?」


「えっと、あの」


ワルワさんは僕を危険じゃないと言ってくれた。


だから訊いてみる。


「『闇属性』とは、なんでしょうか」


「そうじゃな。 では魔法の属性の話からしよう」




 ワルワさんによると、主な属性は火、風、水、土で、他にも種族特性や生まれながらに持っている才能と様々なものがある。


「その他にも、ある日突然、才能に目覚めたとか、神から御神託として与えられたという特例もある。


その一番の例が『異世界人』じゃ」


僕はドキリとした。


「彼らについては全く分からん。 本人たちも自覚なく、訳の分からん魔法を使うのでな」


と、ワルワさんは笑う。


 保護された『異世界の記憶を持つ者』には二種類いる。


『産まれた異世界から来た転移者』と『この世界に産まれながら異世界の記憶を持つ転生者』である。


特に『転移者』は、どの属性にも当て嵌まらない魔法を使っていた例もあったと言う。


どちらにしても何かが干渉している。




 僕は、ゴソゴソと自分で作った薄いノートを取り出す。


「蔵書室から借りた本を書き写したものです。 『居なくなってしまった種族の特性魔法』だそうです」


色々な詠唱文である。


「司書さんが言うには、その種族と同じ特性がなければ発動しないそうで」


ワルワさんに手渡す。


「僕は、一度だけ試したことがあります」


「発動したのかね?」


僕は黙って首を横に振った。


今はまだ言えない。


 ワルワさんは静かにページをめくる。


「なるほどな。 確かに現在では使われていない詠唱文じゃな」


そう言ってノートを返してくれた。




「『闇属性』とは何か。 実際のところ、ワシも見たわけじゃないから分からんことは多い」


今度はワルワさんが紙束を渡して来た。


「『闇』などと恐ろしい言葉を使ってはいるが、良い印象のある『光』と言われても碌でもない魔法もある」


光魔法と書かれた一覧表のようだ。


「ピカピカ光るだけなら良いが、強い光で相手の目を潰したり、感覚を麻痺させたりする魔法もある」


僕の頭を一瞬、トスのスライムであるギョギョが過った。


トスは光魔法の特性があるらしく、それを餌にしているギョギョは常に薄く光っている。


「ワシは『闇属性』だから危険なのではなく、その魔法の使い方によると思っておる」


僕は頷く。


 たぶん、ワルワさんも僕が『闇属性』かも知れないと気付いている。


でもまだ子供で、魔法にしても未熟だから『危険はない』と判断したのではないか。


そんな気がした。


「ありがとうございます」


ペコリと頭を下げて立ち上がる。




「あの」


部屋を出るために扉を開け、一瞬、立ち止まる。


「あの絵はご家族ですか?」


ごちゃごちゃした部屋の中、一ヶ所だけ綺麗に片付けられた棚の上に、陽に焼けた若者が小さな赤子を抱いて笑っていた。


「うむ、息子と孫じゃ。 この近くに住んでおったんじゃが」


現在は行方不明だそうだ。


「失礼しました。 お休みなさい」


僕は静かに扉を閉じる。


悪いこと訊いたな。




 地下の客室に戻って毛布を被る。


こんな僻地に流れて来る人々は過去に何かあったのかも知れない。


辛いことや悲しいこと、様々な事情を抱えている。


願わくば、これ以上、辛いことがありませんように。


僕は目を閉じた。



 ◇ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇



「なあ、ティモシーってさ、魔法使えるんだよな?」


「ああ、一応な。 急になんだい?、ヨシロー」


「スライムの色がさ」


「あー、ワルワさんの所にいる魔物だね」


「餌にする魔力で色が変わるって知ってた?」


「聞いてるよ。 だからトスのスライムが光ってることは教会でも話題になった」


「やっぱり、アレは光属性なのか」


「そうだね。 教会では光魔法を使える人材は欲しいからな」


「ティモシーとしてはどうする?。 トスを教会に誘うのか?」


「いや、別に何もしない。 神職になるための修行が厳しいのは知ってるからな」


「そっか」


「ヨシローもスライムを欲しがってたね」


「うん。 俺にも魔物の相棒が出来たら、魔法が使えるかなーって」


「ヨシローは異世界人ってだけで魔法よりすごいよ」


「あはは。 そういえば、アタトくんって何の属性なんだろう。 スライムは真っ黒だけど」


「さあ。 エルフのことはよく分からないな。 ただ、アタトくんの眷属精霊はすごいよ」


「大地の精霊だっけ。 土属性だよな」


「まあね。 でもかなり上位の精霊だよ、アレは」


「精霊にも階級があるのか」


「例えば、貴族には下位、中位、上位があって、その上に王族がいる。


その上位貴族の中でも公爵家は王族の血縁だから特別だ」


「なるほど。 王族に何かあったら王位を継ぐ血筋か」


「まあ、現在の王族は人数が多いから、その心配はないだろうが。


おそらく、モリヒトさんは上位精霊の中でも公爵家くらい特別なんじゃないかな」


「へえ、強そう」



 ◇ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◇


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