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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百三十四話・買い物の後の相談


 ふう、たくさん買わされた。


これが町の住民のためになるなら、と少しお金を使い過ぎたかも知れない。


何より、モリヒトが何の躊躇いもなくヨシローの言いなりになっていたのは解せん。


一度ワルワ邸に戻り、預けていたタヌ子を引き取って森の別荘に戻る。


「なんでついて来るんですか?、ヨシローさん」


「なんでって、アタトくんの別荘、見たいじゃないか。 ガビーちゃんたちも来てるんでしょ」


そりゃあいるが。


「女性がいるからですか?。 ケイトリン嬢はいませんけど」


横目で胡乱な顔をすると、ヨシローはちょっと罰が悪そうな顔になる。


「あはは、まあまあ」


僕に何か用事でもあるのか?、誰にも知られたくないような。




 別荘に戻り、夕食の準備が始まる。


さっそく魔道具を設置した二階の厨房では、ガビーが忙しく動き、スーは一生懸命に手伝いという邪魔をしているようにしか見えなかった。


僕とモリヒトは、厨房に食材などの保管用の箱と棚を作った後、各部屋を回って家具を設置していく。


魔道具類に嵌め込む魔石は、先日、大量に入手したばかりだ。


ドアノブやタンスの引き出しの取っ手も、モリヒトが何かを参考にしたのか、凝った物をヒョイヒョイと作っていた。


 客用寝室や護衛や使用人の控え室にはベッドが必要だ。


『わたくしが寝台を作り、ガビーが毛布やシーツ、枕といった布物を作りますので』


木材はこの空き地を別荘の敷地にするために切ったものがあるらしい。


布地はガビーの依頼で以前から、かなりの量を買い込んである。


僕の服をいったい何着作る気だと思っていたが、コレかあ。


カーテンや布団なんかを作るなら大量に必要になる。


「ガビーに、窓に光を透さない布のカーテンを頼みたい。 照明器具は、応接室のみ派手にしとけば良いぞ」


廊下や階段、普通の部屋の照明器具は魔道具店で買って来た普通の品物で良い。


風呂用給湯魔道具はまた王都からの取り寄せになるため注文済みだが、まだ到着していない。


しばらく入浴はモリヒト頼みになるな。




 地上二階の全て、一通り周り終わる。


「夕食ですけど、ヨシローさんはどうされますか?」


ずっとヨシローがついて来ていたので、今回、地下にはには行かなかった。


「もちろん、泊めてほしいです!」


はあ。 もう辺りは暗いから帰れとは言わないが。


「雑魚寝で良ければ」


寝具はまだなんで、野営用の毛布を寝袋ぽく体に巻いて寝ることになる。


「うん、大丈夫。 領都へ行った時と同じでしょ」


ヨシローは楽勝だと親指を立てて、ニカッと笑う。


その合図はあんまりやらないほうが良いよ。


下品なヤツだって言われるらしいぞ。




 良い匂いがして来たので、裏口から外に出る。


「坊主。 飯だぞ」


親方特製の立派な窯が出来上がっていた。


まあ、他に何もないから構わんが。


冷え込んで来たので、親方が作った料理は建物の二階の食堂に運んで食べる。


食堂といっても、まだテーブルと椅子しかない。


「ヨシローとやら、飲め飲め」


親方は見慣れない異世界人に酒を勧め、ヨシローはあまり強そうではないのに、断り切れずに飲み続ける。


ドワーフの女性たち、ガビーとスーは「いつものことだから」と、お腹を満たすと早々に自分たちの小部屋に戻って行った。


 僕はモリヒトに目で合図を送り、酒の瓶を取り替えた。


「ヨシローさん、これ、特別な酒なんです。 どうぞ」


新しい瓶の中身は薬草茶である。


同時にモリヒトが親方に領都土産の高級な酒を飲ませ、気を逸らす。




「そういえば、ヨシローさん。 今日はティモシーさんと一緒じゃないんですね」


異世界人であるヨシローの護衛兼見張り役の、教会から派遣されている騎士ティモシーさん。


年齢はヨシローの方がだいぶ上だが、二人のやり取りを見ていると、ティモシーさんの方がしっかりしている。


二人はよく一緒にいるから、ヨシローが一人での外出は珍しい。


「うん、まあ、忙しそうだしねぇ」


教会警備隊所属であるティモシーさんは、年中人手不足のこの辺境地の教会には応援で来ていた。


「ほら、王子様ご一行に公爵令嬢まで来ちゃって、田舎じゃ滅多にないことだし」


町の警備隊も領主の護衛たちも、かなりの緊張で疲弊してしまった。


それで彼らを休ませて教会警備隊が町全体の警備に走り回っている状態らしい。


特に最近は新しい住民が増えている。


そりゃ、確かに忙しいわな。




 それで相棒がいなくて寂しいの?、大のオトナが。


「あー、いや、そうじゃないんだが」


酒のせいだろうか。 ヨシローの顔が赤い。


しばらくモジモジしていたが、意を決したように薬草茶を飲み干す。


「この間の話。 俺なりに考えてみたんだ」


「ケイトリン様のことですか?」


ヨシローは「うん」と頷き、親方とモリヒトを見る。


あの二人は酒談義に花が咲いているようで、こちらを気にする様子はない。




「俺には元の世界に残して来た家族がいる。 もう俺は死んだことになっているんだろうか、行方不明者だろうか。 どっちにしても迷惑を掛けてしまった」


「それはヨシローさんのせいじゃありませんよ」


偶然なのか、選ばれたのかは分からないが、こっちの世界の誰かが影響したのは間違いない。


僕はその一例を身をもって知っている。


「ケイトリンさんはなあ、俺の妹に似てるんだよ」


六歳も下で、忙しい両親に代わって、よく面倒を見させられた。


「自分でも気付いていなかったけど、ずっとケイトリンさんに力を貸してたのは、残して来た妹に何かしてやりたかったんだなあって」


赤い顔でポツポツとヨシローはしゃべる。


「ケイトリン様はヨシローさんの妹さんではありませんよ」


この世界は元の世界とは違う。


「分かってる。 だけど、その、やっぱり、ほら」


まったく煮え切らない男である。




 ん?、もしかして。


「ヨシローさんは女性と深いお付き合いをしたことがない?」


ヨシローはハッとした顔になる。


「あ、いや、それは!」


「こちらの女性が向こうの世界の女性と、体の構造が同じとは限らないということですね」


「ア、アタトくんっ?」


それが原因だな。



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