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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百二十八話・別荘の間取りを決めよう


 クロレンシア嬢には平謝りされた。


「分かっていただければ結構です」


そう言って喫茶店を出たら、何故かそこには。


「殿下?」


王子一行がいた。


「クロレンシアとすれ違ったのに気付いて追って来たんだが」


辺境伯領に続く街道は一つしかない。


「悪いな、迷惑を掛けたようだ」


「いいえ。 若者が必ずかかる病気みたいなものです」


夢見がちな、青い感傷とでもいうのか。


「殿下。 クロレンシア様を責めないでくださいね。 あの方は思い通りにならない自分の代わりに、ケイトリン様には幸せになってほしいと願っただけなので」


「ふん。 お前は子供のくせに生意気だぞ。 まあ、我も気持ちは分かるからな」


王子は軽く片手を振って店内に入って行った。




 僕はサッサとその場を離れる。


何か変なこと言っちゃったかも、と少し恥ずかしくなって、フードを被ったまま森へと駆け抜ける。


だいぶ町中の道も覚えたので、一人でも大丈夫だ。


ワルワ邸に着くと家には入らず、そのままスライム小屋の裏に行き、岩をどけて地下道に入った。


 地下道に灯りは無い。


エルフは夜目が効くので暗いところでも普通に視える。


地下道から出て石の扉を開けると、塔のようにツルピカの壁と床の建物の中だった。


『アタト様、お疲れ様でした』


モリヒトが出迎えてくれる。


「モリヒトもお疲れ様、ありがとう」


眷属を労うのも主人の勤め、なんてな。




「何か手伝おうか?」


『そうですね。 この建物を何に使われるかによりますが、調度品を揃えたいですね』


どうやらモリヒトも領都での滞在中、上位貴族の屋敷で影響を受けたようだ。


『ガビーさんは鍛治で忙しいですし、資金もそれなりにありますから町で購入で良いかと』


そうだな。


この別荘は来客用に使いたいと思っているので、今後、王族や貴族が訪ねてくる前提で準備しなくてはならない。


「じゃ、まずは部屋割りからだな」


『はい』


まだ家具は何もないので、野営で使うような簡単な椅子とテーブルを作る。


部屋の真ん中に設置。


モリヒトがテーブルの上に紙を一枚広げた。




 建物は現在、地上二階、地下一階。


ガランとした壁と床と階段。


広さとしては、元の空き地部分がワルワ邸ほどだったのが、少し周りを整地したようで倍近くになっていた。


しかし、地下はそれよりもまだ広い。


「こんなに必要か?」


辺境地の町の建物は皆、地下に予備室を持っている。


それは魔獣が大量発生した時に何日も立てこもる必要があるからだ。


 それにしても、これは地上の敷地の数倍はある。


モリヒトに何故こんなに広げたのか訊いてみる。


『今はまだ必要ないかも知れませんが』


モリヒトは地上の住居と同じ部分とは別に、地下に2箇所空間を作り、違う結界にすると言う。


「どういうことだ?」


『住居部分の地下はそのまま予備室にいたします。


それ以外は、一つは魔法の訓練用に』


荒れ地で抜け殻たちをぶっ飛ばしてから、地上であの魔法は使わせてもらえていない。


それが使えるなら僕としては嬉しいが、かなり強固な造りになるだろう。




『もう一つは、地下牢にしたいと存じます』


モリヒトは無表情のままだが、何故か、怒りの気配を感じる。


つまり、対魔獣用ではなく、対人間用ということだ。


……そうかー。


領都で色々あったからなー。


「うん、分かった。 任せるよ」


『ありがとうございます』


そこで微笑むか。 やっぱ怖いな、眷属精霊は。




 建物を中心に左右に2箇所ある地下空間はモリヒトに任せ、中央の住居部分に部屋割りを書き込む。


「地下は貯蔵庫を広く、部屋は住居分と客用で厨房は共用。 風呂場は広めのものを二つ、手洗いは各部屋に」


僕はペンで大雑把に線を引いていく。


「地上一階は、玄関口の扉を大きく両開きにして、馬車一台は入れる広さがほしい。


玄関の天井は吹き抜けにして階段を中央に。 階段脇に護衛用の待機室と簡易厨房付き使用人部屋」


一階はそれでいっぱいいっぱい。


「二階に食堂兼厨房と居間。 応接用を広めに二つ。 一階も同じだが、手洗いと簡易風呂は各部屋に設置」


それで全部かな。


 ウンウンと頷いていたモリヒトが首を傾げる。


『アタト様の部屋がありませんが?』


「僕の部屋は塔にある。 こっちで寝泊まりが必要なら地下の予備室で十分だ」


それに、自分だけならワルワ邸に泊まればいいしな。


『なるほど』


反対するかと思ったが、モリヒトはすんなり受け入れてくれた。


まあ、やってみて、都合が悪かったらまた考えよう。


『後は、明日にでも町で調度品を注文いたしましょう』


部屋の仕切り壁はモリヒトが作ってくれるそうだ。




 別荘から出ると、すでに魔獣感知の魔道具は停止していた。


魔石はあるのに魔力を使い切って動力を失った状態である。


「せっかくの魔道具が勿体ないな」


ワルワ邸に到着してすぐに相談する。


「そうか、魔道具内部の魔力が枯渇して停止したのか」

 

ワルワさんも魔獣感知が働いていないことは感じていたようだ。


 夕食をご馳走になりながら話を続ける。


「僕たちは魔道具を設置する場合、魔素を取り込んで魔力を生成出来る魔石を動力として使うのですが」


王都から持って来たという魔道具には動力源になる魔石がなく、使い捨ての魔石が組み込まれていたようだ。


「使い捨てというか、魔石を魔獣から取り出して長時間が経つと魔素を取り込めなくなるんじゃ」


「え?。 じゃあ、あれは僕たちがいつも魔獣から回収している、ごく普通の魔石と同じなのですか?」


ワルワさんは「そうじゃよ」と頷いた。




 魔獣から取り出した魔石は、その時点ではまだ生きているそうだ。


「魔石を手にすると暖かいと思ったことはないかい?」


「確かに取り出したばかりの魔石は暖かいです」


でも、それは暖かい体内から取り出したからだと思っていた。


「獣の体内に過剰な魔素が入り込むことで、獣の魔力が魔石に変化するんじゃ。 勝手に魔素を取り込んで魔力を作り出す魔石にな」


それが獣には魔石が無く、魔獣に魔石がある理由。


体外に出た魔石は段々と弱って行き、魔素を取り込む能力を失うということだ。



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