ドス赤い思考
自転車で転んで怪我したあの秋の夜
私の指はズタボロに穴が開いていた
血が垂れ滲み打ち身に襲う鈍い痛み
誰も通らない大学近隣休日の通学路
買い物帰りの荷物は無事だろうか
私の脳は己の身より荷物を庇った
それほど重要な物は買っていない
私に出来るか試しに買った手芸品と
多少気になる帰ってからのお楽しみ
夜のデザートに買ったワッフルだけ!
バッグを開けようとするその手は血に塗れ
拭き取る物もバッグの中
滴る血に手を振り払うと、血で染まる道路。
通学路に血飛沫が線を成す。
線を辿る私に戦慄が走る
意外と目立つ血のそれは
民家の壁にも着いていた
そこはアチラ系と噂の家
そもそも私が転んだのは
この家の飼い猫が飛び出して来たからだ!
避けて転んで血が出たのに
何故に私が怯むのか
元は商店なのか軒先には
自販機だけが動く店の跡
ポスターに笑うその笑顔
白い歯に着く血が垂れる
吸血鬼……
明朝、ここを通る学生達の会話が脳裏に過ぎる
ふと見れば、倒れた自転車のベルが無い
けれど私の脳裏に響くベル
行こう!
明日へ向かって進むんだ!
先ずは手当が必要だ!
明日から始まる噂話を考えて、私はその場を後にした。
心の痛みよりも、疼く身体の痛みが私を急かす。
血の雨が降ったが夜空には雲一つ無く明日も晴れ
乾いた空気に夜露で流れ消される事もないだろう
黒猫が横切ると云々も、放し飼いにするから起こること……
人前を横切り帰った飼い主の家に起こるのよ……
不幸の連鎖は不手な飼い主の家に返るのよ……
噂話が私の元へと届く頃
治りかけの指をポケットに隠し
素知らぬ顔を作り応えてみせた
へぇ、ドスを振り回しての抗争痕に血塗られた呪いのポスターかぁ、それマジ怖いね。
と……
バチが当たった訳ではないけれど
ワッフルは半分潰れていた。
メープルが無く、蜂蜜をかけて思うことに
ワッフルも多面体……
ハニカム構造だったら潰れなかったんじゃないのかと!
買った手芸は指の痛みに二ヵ月も出来なかった。
あの時の古傷が記憶を呼び覚ます
少し悴む寒さが訪れた秋の思い出。
あの噂話にあったドスの話の出所ですが
何処かに転げ消えたベルの金属音かと考えます事に……
だとすれば、いったい誰がその噂に紐付けしたのでしょう???
未だ解けぬその謎こそが、ミステリー。
ドス赤い思考
シス・夏夜