1話 いざ青春!……そんなに俺を見つめてどうしたのさ?
はぁ…暗いな…。
やっぱ俺死んだんだね。うん。
かっこつけて女の子をトラックから庇って死ぬんじゃなかったよ…いや助けられたならそれでいいけど。
さっき俺は死んだ。痛みは__言うまい。察してくれ。
はぁ…ほんとつまらない人生だったなぁ。高校生になって青春を楽しむ予定だったのにまさかの始業式の帰りでグンナイとかなんやねん。
おい女神かなんか誰でもいいから俺を転生させてくれッッ!
次こそは後悔のないように青春をエンジョイしてやるんだッ!なんでもいいから__いややっぱりイケメン貴族とかイケメン王族とかチート持ちとかにして欲しいかも。うん。それでお願いします。
だから!頼む!もう一回チャンスを___
《その望み、承った。》
音がこの無の世界で響く。___あ?女神様?よっしゃ!よろしくお願いします!まさか来るとは思わなかったケド。
《あなたに栄光あれ。》
うおぉぉぉぉぉ!よしこれから俺のチート無双の始まりか!
今度こそ__悔いのないように。
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男の魂が昇華したのを確認した女神__アースは苦笑いをする。
「転生体にちょっと問題あるけど…うーん青春をエンジョイってなんだろ?」
彼は知らない。自分の転生体がどんな人物なのかを。
知るのはただこの女神のみ__。
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「___ちゃま!」
うーん、なんかおっさんの声がするぞ…。
「__ちゃま!」
ちゃま?ちゃまって何それ美味しいの?
「坊っちゃま!」
「うっほい!」
びっくりした…。僕ちんを呼んだのはこのおっさんね。はいはい、そうそう僕ちんは坊っちゃまね。坊っちゃま。僕ちんは__僕ちん?いや俺だろ?…ん?
「ひょっとして…」
そうだ…僕ちん__じゃなくて俺はあの時トラックに轢かれて…女神(声で判断)に転生してもらった。
そう、そうだよ…。俺は、今……!!
「異世界に…きちゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぼ、坊っちゃま……?」
その時、おっさんに怪訝な眼差しを向けられたのは言うまでもない。
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改めましてこんちゃ!異世界に転生しました!こっちでの名前はエディス•ミゼス•ヘルメス。現在16歳!
なるほどね…途中で記憶が覚醒するパターンね。まぁそう言うラノベパターンもあるよね。
さてさてここで問題が一つ…16歳までのエディス君の記憶がほとんどないです!さっき覚醒する寸前まではあったんだが完全に覚醒したら結構忘れてしまった。人の名前とかは覚えていたけど…。え、どうしよこの子って情熱系なんかな…たぶんさっき鏡で見た感じだとクール系だよね?
鏡で覗いたエディス(俺)は氷のような透き通った青髪に右目が銀、左目が漆黒のオッドアイ。
…うんこれはやばいね。イケメンすぎ。前世の俺って上の上__嘘です。中の中__おいそれはガチだって。
えー話を戻します!改めまして!エディス君イケメン!ちょっとさっき見た時「これが…私…!」なんて言ってしまったよ…。ん?なんだおかま口調なんや俺。まぁいいや。
でもまぁ事実なんだよね。だって見てても飽きないし。5分くらい自分の顔見てたけど途中で
おっさん__マーガスに呼ばれて仕方なく洗面所を立ち去った次第だよ…。__見てないよな?マーガス。
明日も朝覗いて見ようと思う。あー今更ながらこれがナルシの気持ちなのかね。うんうん。
朝ご飯の時間だ!俺の家はどんなのかはわからないけどたぶんいい家柄だと思う。だって執事のマーガスとかメイドさんとかも結構いたしかなり広いしこの家。
女神様ありがと…こんないい待遇の家の子に転生させてもらって。しかもエディス君すごいイケメンだしこれだとモテモテだね!はっはっは!これで青春をエンジョイしてやるんだ!!
食卓に着いた。もうすでに家族は揃っているらしい。
俺の家族構成は父、母、俺、妹の4人。父の名前はゲイズ。母の名前はメビウス。妹の名前はルナ。
「お、起きたかエディス…。頭を打ったらしいが…大丈夫かい?」
ゲイズ__うーん一応父上と呼ぶか。父上が俺に恐る恐る尋ねる。いやなんでそんな恐る恐る尋ねんだ?息子だぜ?おいらはよぉ…
「はい!ご迷惑をかけ、大変申し訳ありませんでした。父上。」
ふっどうよ。このクールエディスメンにぴったりだろう。決めた。俺はクール系プラス優男になると!というか前世もものすっごい優男だったけどね!__うるさいよ、そこ。
「「「!?」」」
「……?どうされましたかみんな?」
なんかいきなり「え?お前どうした?」って顔をされてるぞ俺。しかもみんな。メイドも執事のマーガスも。
「い、いやなんでもないよ…さ、さぁ食べようか!」
「はい!」
あー腹ペコだ!貴族の朝ご飯って優雅だね!あれもあるじゃないか卵を乗せたなんかアレ。ん?アレはアレだよ…仕方ない裸卵と呼ぼうあれを。なんて呼ぶか知らない。
「「「女神アースに感謝を込めて。いただきます」」」
「あ…女神アースに感謝を込めて。いただきます」
ふむ、どうやらこういう風にしてから食べる感じなのか。まぁアレだね前世でもあるやつだね。そこまでびっくりはしなかったけど。
さてさて食べるとしますか………!?美味しい!なんだこのスープ!すごい美味しいな!なんかラノベとかにあるやつだと黒パンとかああいうのを想像してたけど違うんだな!……いや貴族だからか?うーんあとで色々と調べないとな…。
食事のテーブルマナーについては問題無し。なんか前世の方の母ちゃんがうるさかったからな。
こうして俺は貴族の朝ご飯を十分に堪能した。ふぅー食べた食べた。あとはお皿を洗うだけだな。
「よいしょっと…」
「お坊っちゃま!?我々が下げます故、お部屋にお戻りになってください!」
「……?このぐらい自分でやれるから大丈夫だよ。あ、父上達のも洗いましょうか?」
「!?ど、どどどどっどどどどどどうしたのだエディス!?」
いや「ど」多すぎ。某歌手さんのド○○もんの歌よりも多かった気がするぞ。
「え?何か僕が不手際でも?」
ふっ…ここでしっかりと「僕」呼びがまた一段とクールだね……。それに僕呼びは別に抵抗がない。俺は割と一人称は適当だからな。俺も僕も私もなんでも使うし。……ただ僕ちんはないけど…。なんであの時僕ちんって言ったんだ?
「僕!?い、いやお前に不手際はないよエディス。ただいいから部屋に行って寝なさい。」
「あ…はい。分かりました。」
なんか俺悪いことしたのだろうか…。仕方ない、部屋に戻って少し本とか漁ってみるか。
部屋に戻る際にメイドさんやマーガスが目を点にして俺を見ていた。なんだよ一体!?
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ゲイズは朝ご飯を食べ終わるとすぐ自身の部屋にエディスを担当する執事のマーガスとメイドのメリルを呼んだ。
「私から聞きたいことはただ一つ…エディスに…あの暴れん坊に何があった…?」
ゲイズ達は驚愕した。あの事あるごとに癇癪を起こしものを壊したり、メイドの服を脱がせようといたずらしたりマーガスの大事な大事な最後の砦と言える髪の毛を引っこ抜こうとしたり、妹に暴言を言ったりするエディスが今日はものすごく静かに食卓に来て行儀よく朝ご飯を食べていた。それだけでなく自ら自分の皿やゲイズ達の皿を洗おうとしたりなど天変地異でも起こったのかと皆がハラハラした。
「わ、わかりません…私が坊っちゃまを起こすときに何やらイセクイ?キチャ?みたいなわけもわからないことを叫んでましたがそのあとはすぐに「あ、マーガスか。ごめんね驚かしてしまって。すぐ顔を洗うよ。」などと言っており、私も驚きました。いつもならすぐ癇癪を起こして魔法を撃とうとするのですが。」
「な、なんと…こ、これは滅亡の兆しなのか…?」
「ど、どうなのでしょう……?それに洗面所でも5分ほど何やらずっと自身の顔見てはイチェメン?推せる?などと呪文のように言っており…」
「我々メイド陣も驚きの一言です。いつもならハサミを振り回したりするのですが……一体何が何やら……」
「と、とにかくしばらく様子を見よう。何かあったらすぐに報告をしなさい。いいね?」
「「かしこまりました。」」
そうしてマーガスとメリルはゲイズの部屋を退出する。
「何があった…息子よ……!」
ゲイズは1人頭を抱えて呟く。
そう、エディスは記憶が覚醒する前まではこの国、ガディウス帝国でも有名な暴れん坊坊ちゃんだったのだ。
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