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聖なる夜に

クリスマスということで書いてみました。

相変わらずいちゃついてます。


作中にフランス語を使った所為で、必死に調べていたら家族から一言。


「そんなに必死になるなら使わなきゃ良いのに」


使いたかったんです。フランス語の語感が好きなんです。話せませんけど。


それでは皆様、Joyeux Noël !(ジョワイユ ノエル)

「大和さん、雪です」


寝室で窓から外を見ていたら、雪が降っているのが見えた。


昼間は晴れていい天気だったのに、あっという間に雪雲が広がった。しばらくは降らずに()っていたんだけど、降りだしてきた。


コルドになって、雪の降る日も多くなって、積もる事も増えた。私は水属性と風属性で氷属性の取得を目指してるんだけど、まだ取得できてない。


属性って言ったけど、派生魔法になるから、魔法属性には含まれないらしい。取得を目指しますって言った時、ローズさんに教えてもらった。一般的には氷魔法とかって言うんだって。


何故、氷魔法の取得を目指してるかって言うと、ホアに有ったら良いよね、って思ったから。異空間に保存しとけばホアに氷が使えるはず。


「また積もりそうだね」


大和さんが若干嫌そうに言った。大和さんが積もるのを嫌がるのは満足に走れないかららしい。私には言わないけど、ゴットハルトさんが聞き出したって、教えてくれた。


「地球ではそろそろクリスマスですよね」


「そうだね」


「前、サンタクロースの事を何か言ってましたよね」


(セント)ニコラウスの事?」


「はい。(セント)ニコラウスってサンタクロースのモデルなんですか?」


「そう言われてる。(セント)ニコラウスって言うのは聖人の1人。俺の知ってるのは正教会の話だけど、たしかこんな話だったよ。


ある時ニコラウスは、貧しさのあまり三人の娘を身売りしなければならなくなる家族の存在を知った。ニコラウスは真夜中にその家を訪れ、窓から、あるいは煙突から金貨を投げ入れた。このとき暖炉には靴下が下げられていており、金貨はその靴下の中に入ったという。この金貨のおかげで家族は娘の身売りを避けられた。


ここからサンタクロースが煙突から侵入したり、クリスマスに靴下を下げたりってなっていったらしい」


「侵入って言わないでくださいよ。夢がないじゃないですか」


「プレゼントをもらう日も、各国によって様々だよ」


「そうなんですか?」


「一応フィンランドにサンタ村があるけどね。クリスマス近くになるとそこに世界中の子供から手紙が届く」


「それ、全部に目を通すんですか?サンタさんって大変ですね」


「妖精が手伝うらしいよ」


「妖精さんですか?」


「そう。普段からサンタクロースを手伝ってる」


「クリスマスって言ったら、あの歌があるじゃないですか。赤鼻のトナカイ。あの赤鼻のトナカイが自分に重なって嫌でした」


「人と違うって言うのが?」


「はい。バカにされたり笑われたりって言うのが重なっちゃって」


「見た目は変えられないしね」


「そうなんです。高校で葵ちゃんに会って、初めてこの眼を綺麗って言って貰って変われましたけど」


「俺も咲楽ちゃんの眼は綺麗だと思うけどね」


大和さんに見つめられて、恥ずかしくなって俯いた。


「トナカイにも名前があるって知ってる?サンタクロースの乗るソリって8頭立てなんだよ」


しばらく黙っていた大和さんが話し出した。


「赤い鼻のトナカイさんだけじゃないんですか?」


「8頭立てって言ったでしょ。ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、ダンナー、ブリッツェン、キューピッド、コメットの8頭」


「赤鼻のトナカイさんってどれですか?」


「赤鼻のトナカイと言われるのは、ルドルフだよ」


「9頭になっちゃいますよ」


「ルドルフが先頭を走るんだって」


「ピカピカのお鼻がライト代わりですか?」


「ライト代わり……。くくっ。確かに」


大和さんが笑いながら私を抱き寄せた。


「こっちではクリスマスは無いからね」


「ですよね。代わりが星見の祭(ステラフェスト)でしょうか」


「似たようなものかもね」


「こっちに来てこの眼が平気になりました」


「咲楽ちゃん、俺の髪の色が抜けてきてるって前に言ってたけど、咲楽ちゃんの眼の色も、かなり緑になってきてるよ」


「そうなんですか?」


「綺麗だよ」


大和さんの顔が近づいてきて、眼を閉じたらキスされた。


「このまま進みたいけどね」


「えっと……」


「待ってるからね。焦らないで」


「すみません」


「無理強いする気はないから。だから、せめて抱き締めさせてね」


「大和さん」


「ん?」


「外に出たいです」


「庭に出るの?」


「はい。ちょっと暑いです」


「脱いじゃえば?」


笑いを含ませた声で、大和さんが言う。


「脱ぎません!!」


焦って声が大きくなった。


「咲楽ちゃんは可愛いねぇ」


「からかったんですね?」


「だって暑いって言うから。男にそんなこと言っちゃ駄目だよ」


「駄目ですか?」


「煽ってるって思われるよ」


「煽ってる?」


「えっとね、咲楽ちゃん、無理矢理は嫌でしょ?」


「当たり前です」


「誘ってるって思われるって事。俺は分かってるし咲楽ちゃんの気持ちを待っていられるけど、他の男にそんな事、言わないでね」


「はい。暑いって言っちゃダメなんですね」


そう言うと、大和さんがため息を吐いた。


「そうじゃなくてね。暑いって言ってもいいよ。男と2人っきりの時に言っちゃダメって事」


「大和さん以外の人と、2人にはなれません」


「それなら良いけどね。で?外行くの?」


「行きたいです」


「コート羽織って、手袋して、スヌードもしておいでね」


「はい」


大和さんに言われた防寒着を全部着て、寝室に行くと大和さんがコートを着て待っていてくれた。


「行こうか」


「はい」


階下に降りて、庭に出る。雪が積もり始めてて、庭が真っ白になっていた。


「光球出しますね」


灯りはごく小さくぼんやりと。数を増やしてみた。それを庭に浮かべる。


「綺麗だね」


「はい。これ、やりたかったんです」


「咲楽ちゃんの全身が白いから、雪の妖精みたいだね」


「雪の妖精って」


そう言って笑うと抱き締められた。


「消えてしまいそうだ」


「消えません」


「雪に同化してどこかに行ってしまわないでね」


「行きませんよ」


大和さんのコートで包まれる。


「大和さん?」


「捕まえてないと、不安になる」


「大丈夫です。どこにも行きません」


「それは分かるんだけどね。綺麗すぎて不安になる」


「中に入りますか?」


「咲楽ちゃんが満足したならね」


「満足しました。光球でイルミネーションも出来たし」


「明日も早いからね」


「明日も走るんですか?」


「天候によるかな」


話ながら、家の中に入る。光球はそのままにしておいた。


2階の窓から庭を見下ろした。


「わぁ!!大和さん、綺麗ですよ。見てください」


「そうだね」


大和さんが私の後ろに立って庭を覗き込む。


「咲楽ちゃん、体が冷えてる」


「大和さんもです」


「ベッドに入ろうか」


「ベッドにって、間違ってはないですけど」


光球を消す。


「ほら、おいで」


「はい」


ベッドに入ったら抱き締められた。


「咲楽」


耳元で囁かれる。


「や、大和さん?」


「可愛い。咲楽」


「あの、大和さん。いったい……」


くっくっくっと笑い声が聞こえた。


「本当に咲楽ちゃんは、反応がいちいち可愛いね」


「もぅ!!ドキドキさせないでください。眠れなくなります」


「ごめん、ごめん。さっきちょっと不安になったからね」


「なんですか?その言い訳」


「雪に溶けて消えてしまいそうな恋人を、繋ぎ止めたかったんだよ」


妙に熱っぽい目で私を見ながら、大和さんが言う。


「恋人って……」


意識したら恥ずかしくなった。


「婚約者は良いのに、恋人は恥ずかしいの?」


「だって、婚約者は世間に『私には相手がいます』っていうアピールじゃないですか。恋人って言われると、当事者として登場させられたって感じになって」


「当事者としてって、婚約者も当事者でしょ」


「何となく現実味がないというか」


「日本では婚約者ってあまり言わないしね。その間も恋人だから」


「恋人って言われると恥ずかしいです」


「あぁ、彼氏彼女って言う方が身近か」


「はい」


ma chérie(マ シェリ)に変わりはないんだけどね」


「マシェリ?」


「愛しい人って意味」


「何語ですか?」


「フランス語」


「傭兵さんの時に使ってたんですか?」


「使ってないよ。団員が使ってるのは何度も聞いたけど」


「使われたりとかは?」


ma chérie(マ シェリ)は、男性が女性に対して使う言葉だから。俺が使われてたって事はどう言うことかわかるかな?」


「大和さんが女性として扱われたって事ですか?」


「しかも恋人として、だね。それは丁重にお断りするよ。拳を交えてでもね」


まぁ、分かりますけど。しかもちょっと不機嫌ってことは、腐女子の方の薄い本で出演させられてたんだろうなぁ。言わないけど。


「たいていその場合は俺がタチ役だから」


「えっ?なんの事ですか?」


「気付いてなかったの?独り言で言ってたよ」


「すみません。それで、タチ役って何ですか?」


「男性同士の肉体関係で、いわゆる挿入する側のこと。肉体関係がなくとも精神的にリードする側のことを指す場合もある、らしい」


大和さんはスッゴく嫌そうな顔で言うと、顔を覆った。


「どうして恋人にこんな事を説明しなきゃならないんだ」


「すみません」


「慰めてくれる?」


「どのコースで?」


大和さんがニヤッと笑った。あ、嫌な予感……。


「白ネコちゃんパジャマでの膝枕、キス付きコースで」


「着替えなきゃじゃないですか」


「俺は精神的なダメージを受けたの。それくらいでないと回復できない」


しばらく抵抗してみたんだけど、大和さんの「誰の所為(せい)かな?」攻撃に負けました。


「やっぱり可愛い。ほら、フードもかぶって」


そう言ってニコニコ笑う大和さん。って言うか、かなり楽しんでる。


大和さんの胡座の足に頭を乗せて大人しく撫でられた。


「私はネコじゃないんですけど」


「俺にとっては可愛い仔ネコちゃんだよ」


「仔ネコちゃんって」


「こういうこと言うと、日本じゃ変な目で見られるね」


「言った事あるんですか?」


「女性に対して?無いよ」


「女性に対してじゃなかったら?」


「そりゃあ、本物のネコに対して。名前を付けるって事がなかったから。家で飼ってたネコが仔ネコを産んだ時には、俺が世話をしてたし」


「え?どうしてですか?」


「ネコどもが寄ってくるからだよ。ネコの世話をしていた女子衆(おなごし)と、ネコ目当ての男子衆(おとこし)がその時期だけは俺の所に来るんだ。『若が1番慣れてますから』とか言って」


「猫って何匹飼ってたんですか?」


「最終的に何匹になったかな?4匹だったかな」


「4匹。モフりたい放題じゃないですか」


「あいつ等って撫でろって寄ってきて、飽きるとすぐに逃げるから、極力手は出さないようにしてたよ。たまに撫でる位がちょうどいいんだ」


「へぇ。そうなんですね」


「咲楽ちゃんはネコになると余計に可愛くなるね」


「可愛くって」


「恥ずかしがる咲楽ちゃんも可愛いし、何でもないような事ではしゃぐ咲楽ちゃんも可愛いけど、俺に全てを委ねてくれてる感じが可愛い」


「大和さんに撫でられるのは好きですよ。このパジャマはかなり恥ずかしいですけど」


「似合ってるんだからいいじゃない」


撫でられてたら、眠くなってきた。


「眠そうだね。寝ていいよ」


その声に眼を閉じる。


「Bonne nuit,ma chérie.Joyeux Noël」


大和さんが何かを言ったけど、意味は分からなかった。でもすごく優しくて安心できる声だった。













「Bonne nuit,ma chérie.Joyeux Noël」

「おやすみ愛しい人。メリークリスマス」


という意味だったはず。


大和さん、カッコつけてます。

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