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「シロヤマさん。元気になったのね。今日は1人?トキワ様は?」


「大和さんはお仕事です」


「そうか、そうよね。あ、お衣装を考えてたんだけど、何かアイデアはない?」


流れるように衣装部に連れていかれた。


そこには数枚のデザイン画があった。


「今日は3人で集まってたのよ。トキワ様の奉納舞の衣装のデザインを出してたんだけど、これって言うのがなくてね」


「あの、リリアさんに先に話していいですか?」


「えぇ、良いわよ」


リリアさんと別室に入る。


「ようやく許可が出たのね。リシア様からは話せないって言って、聞けなかったのよ」


リリアさんに異世界転移の事を話すとやっぱり驚かれた。


「そうだったのね。じゃあ、あのサクラっていうのも元の世界の?」


「はい。やっぱりこの世界にあの木はありませんよね」


「見た事はないわね。ここにある本は花の図鑑なんだけど多分ないと思うわ」


元の部屋に戻ると団長さんの衣装が変わっていた。


「あなた達、団長様は勤務中でしょ?」


「そうでしたの?」


「まぁ、この位なら楽しい。これ以上は遠慮したいが」


団長さんは制服をもって着替えに行った。


「それで?何かアイデアはない?」


「元の世界のイメージでいいですか?」


デザインを描いていく。この世界の騎士服はスーツ型。かなり首元は詰まってるけど。私が大和さんの剣舞を見ていて思ったのは立ち襟の軍服。イメージは某漫画の日本さん。葵ちゃんが一時期はまってて、見せて貰ったのを思い出して描いてみた。


「ほう。トキワ殿に似合いそうだな」


「この形の襟は思い付かなかったわね」


「装飾は最小限って言われてるんだけど、何か無いの?」


「えっと、ごめんなさい。思い出せません」


「でもこれ、下手に装飾を入れると、派手になるわよ。このままか、ボタンの色位じゃない?」


「そうねぇ。シンプル過ぎる気もするけど」


「あの、私達の国はシンプルな方が良いってされてて、この位が良いんです。エポレットとか襟章もありますけど、あまり覚えてなくて」


「襟章は分かるわ。この襟につけるのよね。エポレットって?」


「肩に付ける装飾?みたいな、えっと、こういう……」


一応絵は描いたけど伝わるかな?でもあの日本さんの肩にはモールは着いてなかったよね。


「へぇ。こういうのなのね。じゃあこの部分はある程度の硬さが必要ね」


「良いわね。やってみましょうか。私達の腕の見せ所よ」


何か変なスイッチを入れちゃった?


「シロヤマさん、これからどうするの?」


「時間があったらジェイド商会に行ってみようって思ってたんですが」


「ローズの所?」


「はい。ローズさんに会いたいので」


「一緒に行きましょうか?」


コリンさんが言ってくれたけど、良いの?


「でも、コリンさん、お仕事は?」


「今日は休日。トキワ様の衣装のアイデアを話しに来ただけだから、心配しないで」


「違うでしょ。みんな暇だからって来たんでしょ。今日の当番は私だったの」


「当番?ミュゲさん、何かあるんですか?」


「騎士団の方達は闇の日も訓練があるでしょ?たまにボタンが取れたとか裾がほつれたとかあるのよ。大きなものは翌日に回すんだけど、小さなものならその時にやっちゃった方が早いし、光の日に溜まってるのを見て嫌にならなくて済むでしょ。だから当番を決めてるの。で、今日は私の番。コリンは暇で来ただけだし、リリアもそうかな?他に理由がありそうだけど」


そう言って意味ありげにリリアさんを見るミュゲさん。


「そうなんですか。そういう当番なんですね。コリンさん、お願いしても良いですか?私一人だと迷いそうです」


「任せといて。ローズは居るかしらね」


衣装部をお暇する頃に4の鐘が鳴った。


「今日もナイオンを連れているの?」


「はい。大和さんが連れてけって。それに家でお留守番も心配だったので」


「なんと言うか、どちらも過保護ね」


「そうだ、シロヤマ嬢。あの虎の鞍は持っているか?」


「持ってますけど」


「着けておいた方が良い。騒ぎになったら困るだろう?貴族街に行くならなおさらだ。騎獣の印は付いていたが、変に誤解されても嫌だろうし」


団長さんにそう言われて、待機場でナイオンに鞍を着ける。


「ナイオン、次はジェイド商会なんだけど、コリンさんも一緒だからね」


ナイオンは分かってるという風に頷いて歩きだした。


「本当に頭が良いのね。こんな子なら欲しいわ」


「ナイオンを欲しい?」


「えぇ。でもこの子が嫌がるでしょうね。貴女とトキワ様以外に従う気がなさそうだもの」


「そう見えますか?」


「そうね。虎で白色ってことは希少種でしょ?多分プライドも高いでしょうし、今は特に貴女を守っているもの」


ナイオンの鞍にはリードみたいな紐が付いてるから一応持ってたんだけど、これって本当に『一応』だよね。


コリンさんと話をしながら通りを歩く。すれ違う人がたまにナイオンを見ているけど、鞍が着いているのを見て安心したように通り過ぎる。


ジェイド商会が見えてきた。この間にも何回かコリンさんに軌道修正された。おかしいな。私って方向音痴だったっけ?そう言えば葵ちゃんが独りではどこにも行くなって言ってたっけ。あれって私が方向音痴だったからなの?


「シロヤマさんって……まぁ良いわ。トキワ様が居たら良いんだし」


コリンさんに言われてしまったけど、仕方がないもん。


コリンさんの案内でジェイド商会に着いた。


「サクラちゃん!!」


お店にいたローズさんが出てきて、抱き着かれた。


「よく来たわね。どうしたの?なにか欲しいものでも?それとも私に会いに来てくれたの?」


熱烈歓迎されたけど、ナイオンの事とか、コリンさんの事とか、言いたいのにぎゅうぎゅう抱き着かれてるから言えない。


「ローズ、ちょっと落ち着いたら。シロヤマさんが苦しそうよ」


コリンさんの声にやっと解放された。


「コリン、居たのね。え?どうして?」


「今、気が付いたの?あのね、シロヤマさんは最初神殿にいたでしょ?今回も神殿に連絡が入ったでしょ?エリアリール様とスティーリア様が心配なされてね。特にスティーリア様が食事の手配とかしちゃったものだから、ほぼ全員がシロヤマさんが具合が悪いって知っちゃったの。その状態で食堂のおばちゃん達が放っておくわけないじゃない。お見舞いの差し入れがたくさんあったから、神殿にお礼を言いに来たのよ。私はその次いでで会って、ここまで案内してきたって訳」


「そうなの。入って。なにか欲しいものでも?」


「欲しい物って言うかローズさんに話したいことがあったんですけど、その前に、ナイオンを、どこか居てもらえる所はありますか?」


「ナイオンって、虎!?大丈夫?」


「ナイオンは賢いので」


「神殿の待機場でも大人しかったわよ。余計な手出しをしなきゃ大丈夫じゃない?」


「そ、そう。じゃあ、こっちへどうぞ」


連れていかれたのは商会の裏手だった。


「誰かいる?この子を預かってちょうだい」


出てきたのはお爺さん。


「おや、お嬢さん、この子ってこの虎ですか?珍しい。白い虎とは」


「お願い。大切な人の大事な子なの」


「お任せください」


ローズさんが頼んでる間にナイオンに話しかける。


「ナイオン、少し待っててね」


ナイオンはガゥ、と小さく返事をすると、日当たりのいいところで寝そべった。


「よく言うことを聞くものですなぁ」


お爺さんが感心したように言う。


「よろしくお願いします」


ナイオンを頼んで、ローズさんとコリンさんの3人でローズさんのお家へ。


「話したいことって何?」


お部屋に行く途中でローズさんに聞かれた。


「えっと、私の事なんですけど」


「それは……コリンは知ってるの?」


「えぇ、聞いたわ。後は部屋の方がいいんじゃない?」


ローズさんの部屋で話をする事にした。


「一応の事情は知ってるけど、話していいの?」


ローズさんが聞く。


「許可はもらいました」


「あのね、シロヤマさんが話せなくてそれで何度か体調を崩して、トキワ様が王宮に掛け合ったらしいわ。ローズが知っているのはどんな事?」


「サクラちゃんの魔法の指導を頼まれたときに聞いたのは、ほとんど魔法が使えないんだけど魔力、属性ともに多い子が居て、指導して欲しいって依頼だったわね。その後で魔術師筆頭様から、どうも世界が異なっているらしいって聞いたんだけど。ルビーにもこの事は伝えてあるわ。口止めはしてあるけど」


「世界が異なるというか……違う世界から転移してきたんです。気が付いたら神殿の一室で横たわってました」


「トキワ様は?」


「横にいたみたいです。大和さんに起こされて気が付きましたから」


「それであの時、あんな話をしたのね」


「あんな話?」


「貴女が神殿で倒れたときよ。頭痛がどうのって言ってたけど」


「急激な頭痛は脳の障害を疑う、ですか?」


「そう。その話。大丈夫なの?」


「今の所、脳障害を疑う症状は出ていません。ただ、あの頭痛がなんだったのかが分からなくて」


「それについては筆頭様が仮説を立ててらしたわ。魔法のない世界から転移してきたってことは魔力も無かったってことだろうから、魔力を授かったときに身体が付いていけなかったんじゃないかって」


「ちょっと待ってよ。シロヤマさんだけ?トキワ様も同じよね」


「魔力がサクラちゃんに余計に流れ込んだとしたら?説明はつくのよ。本来は2人分だったのが、均等に分けられなかったのかも。トキワ様は何か言ってなかった?」


「身体が軽く感じるって言ってました」


「話していても結論は出ないわね。サクラちゃんが何者でも良いのよ。今はこの世界に居て施術師をしている。それでいいじゃない」


「そうね。シロヤマさんが何者でも良い……ってローズ、いつからシロヤマさんの事『サクラちゃん』って言ってるの?」


「施療院に来た日からよ。ルビーがそう呼びたいって言って、私も、って言っちゃった」


「神殿はねぇ。そういう呼び名とかスティーリア様が厳しいから。同僚とかなら良いんだけど、『シロヤマさん』って呼ぶのも最初良い顔はされなかったもの」


「私は別に構わないんですけど」


「普段呼んでると咄嗟でも出ちゃうから諦めるわ」


「サクラちゃん、何か用があったんじゃないの?」


「この話をしたかったのと、刺繍糸とかを見たかった、って感じです」


「あら、じゃあ商会に行きましょう。サンドラもいるわよ」


「あの人もいるの?シロヤマさん、大丈夫?」


「サンドラに会って悲鳴をあげなかったのよ、サクラちゃんは」


商会に向かいながら話をする。


「ああいうおネエさまは、元の世界にもいらっしゃいましたから」


「そうなの?妙なところが同じなのね」


商会に着いて服飾部に行く。


「お邪魔して良いんですか?お仕事中なんじゃ?」


「忘れてる?今日は闇の日。本来は休みよ。サンドラも休みだけど、あの人は来ちゃうのよね。休めって何度も言ってるのに」


服飾部に着くとアレクサンドラさんは何か作業をしていた。デザインでも針仕事でもない作業。


「サンドラ、何をしているの?」


ローズさんが声をかけるとアレクサンドラさんが顔をあげた。


「あら、お嬢様、いらっしゃい。久しぶりねコリンちゃん。シロヤマちゃんもよく来てくれたわ」


「で?何をしてたの?」


「これ。会長から『何かに使えないか?』って持ち込まれたんだけど」


そこにあったのは小さな石の欠片。色んな色がある。


「こんな不定形な物、何に使うの?」


「それを考えてるのよ。もしこれが使えたら、小遣い稼ぎになるかもしれないじゃない?スラムの子とかなら収入になるのよ」


「これってモザイクとか出来ないかな?」


呟いた言葉に反応したのはコリンさん。


「モザイク?」


「モザイク画ね。でもねぇ、石が小さいから大変だ、ってなったのよ」


「別に絵にしなくても良いんです。何かの飾りの台とかに隙間なく埋めたら綺麗じゃないかなって」


「そういう使い方ね。良いんじゃない?そうね。絵にしなくても良いわよね」


「穴が開いてれば繋げてアクセサリーとか」


「穴ね。石が小さすぎて無理だったわ」


「ですよね」


私達が話してる間にローズさんとコリンさんは2人で話をしていた。


「シロヤマちゃんは何か買いに来たの?」


「刺繍糸が欲しくて。どんなのがありますか?」


「糸はこっちよ」


案内された先には色とりどりの刺繍糸。


「大抵は揃ってると思うわ。どんな色が欲しいの?」


「白っぽいのってどんなのがありますか?」


「白?そうね。こんなところかしら」


出されたのは10色ぐらい。クリーム色とか桜っぽい色もある。その中から5色を選んだ。


「それで良い?後は?」


「今はこれで良いです」


話をしている間に5の鐘が鳴った。


「あ、帰らなきゃ」


「トキワ様が通るまでここに居たら?店員に頼んでくるから」


言うが早いか、ローズさんが行っちゃった。


「お連れ様?」


アレクサンドラさんが聞く。



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