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37

翌朝起きたら大和さんは居なかった。


魔力量は6割を越えていた。ちょっとホッとする。


着替えて降りることにした。あ、お風呂も入りたい。でも大和さんの剣舞も見たい。先にお風呂にだけ入っちゃおうかな。


家の中にナイオンは居ない。大和さんと一緒に走りに行っているのか、外に出ているだけかどっちかな?


入浴を済ませてから庭に出る。ナイオンが寄ってきてくれた。


大和さんは……瞑想中だ。


「ナイオン、側にいかなくていいの?」


ナイオンは私の側にいてくれている。ナイオンを撫でながら大和さんを見ていた。


瞑想中の大和さんはとても綺麗だと思う。「近寄り難いと言われていた」って大和さんが前に言っていたけど、綺麗すぎて近寄り難いってこともあると思う。


瞑想を終えた大和さんはチラッと私を見て、そのまま舞台に上がる。


いつもならそのまま舞始めるけど、今日は何かいつもと違う動きをしてから、舞に入った。お家でやっていた舞の前の動きなのかな。


今日も枝垂桜は見えている。ふと、気になってナイオンに聞いてみた。


「ナイオンにもあの桜って見えてるの?」


返事は当然無いけれど、ナイオンの尻尾が揺れている。見えているってことでいいのかな?


大和さんの舞が終わってもナイオンは側にいてくれた。


大和さんがこっちに来る。


「咲楽ちゃん、おはよう。体調は良さそうだね」


「おはようございます。体調はかなり良いです。魔力量も6割を越えました」


「なら良かった。もし調子が悪そうだったら休もうかと思ってた」


そう言って笑う大和さん。


「もしかしてお風呂に入ったの?」


私をギュってして大和さんが言う。


「はい。やっぱり入りたかったので」


「出来たら……まぁいいか。中に入ろう」


大和さんと家に入る。ナイオンも付いてきた。


大和さんがシャワーに行っている間に私は大和さんの朝御飯とお弁当の準備。


久しぶりに食料庫に入る。2~3日入らなかったはずなのに、なぜか食材が増えてるような気がする。


首を傾げながら材料を持って食料庫を出た。


まずは大和さんの朝御飯とお弁当の準備。私の朝御飯はどうしよう。あんまり食欲はないんだけど。


ミルクとパンでパン粥を作る。少し野菜を刻んでそこに入れてみた。


「咲楽ちゃん、楽しそうだね」


シャワーから戻った大和さんがそう言ったけど、楽しそう?


「楽しそう、ですか?お料理は好きなので、確かに楽しいかもしれません。あ、コーヒーですか?ちょっと待ってくださいね」


「慌てなくていいよ。いつもより早いし」


「そうですか?」


その時1の鐘が鳴った。確かにいつもより早い。


「大和さんって時間の感覚とか、正確ですよね」


「まぁ、慣れだね」


「慣れ、ですか。私はいまだにあんまり分からないです」


「この世界の人も、全員が分かってる訳ではないと思うよ。全員が分かってたら鐘守なんて要らないんだし」


そう言いながら大和さんはダイニングから椅子を持ってくる。


「コーヒー、淹れるの見るんでしょ。ここに座ってね」


「大和さんがコーヒーを淹れるのを見るの、久しぶりな気がします」


「この3日間の内容が濃かったってことでしょ」


そう言いながら大和さんは準備を進める。


「あれ、やってください」


「あれ?」


「始めさせていただきます、っていうの」


「はいはい、お嬢様。では始めさせていただきます」


そう言って胸に手を当てて礼をする。


ドリッパーにゆっくりとお湯を注ぐ大和さんはやっぱり格好いい。


やがてコーヒーを淹れ終わると、再度礼をして大和さんは言った。


「楽しんでいただけましたか?」


思わず拍手。


照れ臭そうに笑った大和さんが朝食のプレートを運んでくれる。


「咲楽ちゃんのは、何?」


「パン粥です。大和さんと同じようなものはちょっとキツいけど、これなら食べられるかなって」


「今日はゆっくりできそうだし、刺繍でもするの?」


「部隊長さんのハンカチのデザインを決めて、それから大和さんのランチョンマットです」


「やっぱり作るの?」


「狼さんの刺繍は入れたいんです」


「咲楽ちゃん……」


困ったように大和さんが私を見る。


「なんだか私の中でイメージが固定しちゃって」


「1度良いって言ったからね。構わないよ。無理だけはしないようにね」


食べ終わったお皿を片付けてくれながら大和さんが言う。


「ナイオンと一緒にいます」


大和さんは今日から出勤だからその準備。私は自室でデザインのための筆記具と、刺繍の道具と、膝掛けを何枚か魔空間に入れた。今日はいい天気だから四阿(あずまや)で居ようと思う。


私が部屋を出ると、下から声が聞こえた。大和さん?


「いいか?咲楽ちゃんを守れよ。今日は何もないと思うけどな。後、咲楽ちゃんが無理をしないように気を付けてやってくれ」


ナイオンもガゥっと返事をしている。可愛い。


「大和さん、今日は暖かそうだから四阿(あずまや)にいます。ちゃんと膝掛けも何枚か持ってきました」


「ホントに無理しちゃダメだよ」


「大丈夫ですって」


「昨日あんなに弱っていたから心配なんだ」


「でも今は元気ですよ」


「分かってる」


そう言って、でも心配そうに私を見る。


「心配しすぎるのもどうかと思うんだけどね」


出勤する大和さんを見送る。


こうやって大和さんを見送るって初めてかも?大和さんが角を曲がるまで見送って家に入った。


一応結界具を作動させておく。設定は私と大和さんは出入り自由に。ナイオンも同じ。家に訪ねてきて私の招いた人も出入りは自由。これってこの先ずっとって事?


調べてみたらゲスト扱いとかの設定になるみたいで、一回一回の設定し直しが必要だった。


暖かいお茶を用意して、庭に出る。そういえば私って魔空間はよく使ってるけど属性複合魔法の『異空間』は使ったことない。確か異空間って時間経過無しって言ってた気がする。でもさすがに今試す気はないけどね。


複合魔法って、光と闇で時空間、地と水で樹魔法、風と水で氷魔法だったっけ。


そういうことを考える前に、部隊長さんのガラスの花のデザイン、だよね。


図録を見る。正式名称『フルールアルカンスィエルエフェメール』通称ガラスの花、薄くてコスモスみたいな花弁が6枚、花芯は円形になってる。花の色は透明に近い白、虹のように輝いている、って書いてある。


これだったら白で縁取りをして、花全体に虹っぽく弧を描いて7色をいれちゃおうかな?白の糸にラメでも入ってたらいいんだけど、そんなのは無いし。花の色は全体に白にして、あれ?この茎の色も虹っぽい。こっちは緑の茎の所々に虹の色を入れよう。


デザイン画を描いてみる。これでガラスの花って分かるかな?誰かに確認って誰もいないしどうしよう。


「ナイオン、これってガラスの花だって分かるかな?」


答えないのは分かってるけど、ナイオンにデザイン画を見せてみた。


ナイオンはチラッと見てくれたけど、答えてくれない。当たり前だよね。


先に大和さんのランチョンマットを作ってしまおう。でも先に狼さんのデザインかぁ。


狼ってどんなのだったっけ?魔物の本には怖い感じのしかなかった気がする。


犬とは違う感じだよね。犬をワイルドにした感じ?あ、ダメだ。シベリアンハスキーしか出てこない。


日向ぼっこをしていたナイオンが動いた。誰か来た?


「シロヤマさん、いる?」


「ミュゲさんとアルフォンスさん?」


「こっちは私の付き添いと言うか、私が付き添いと言うか」


「ひどいですね。私が付き添いですよ……虎!?」


「ナイオンです。あ、中にどうぞ」


「お邪魔するわね。何をしてたの?」


「ちょっと刺繍のデザインをしていました。今日は天気がいいので外で」


「外?」


ミュゲさんたちは四阿(あずまや)を見て驚いていた。


「何これ?四角いガゼボ?でも風避けがある。何これ?」


「大和さんが建てました。四阿(あずまや)です。風避けはミメット部隊長ですけど」


「建てたって……」


しばらく中に入ったり外から眺めたりしていた2人は諦めたように四阿(あずまや)に入ってきた。


「刺繍のデザインって言ったわよね。どんな刺繍?」


「ガラスの花って花です」


「それは難しい物を……」


「これが考えたデザインなんですけど」


「シロヤマさんって綺麗な絵を描くわね」


「確かにガラスの花だ」


「これを何に刺繍するの?」


「ハンカチです」


「ハンカチ?」


「えっと、ミメット部隊長さんのプレゼント用の刺繍を頼まれたと言うか、させて欲しいって頼んだと言うか……」


「それって市場(バザール)での事?リリアから聞いたわよ。今は体調は大丈夫なの?」


「体調は良いです。魔力量もだいぶ戻ってきました」


「それを聞こうと思って来たの。エリアリール様とスティーリア様から『シロヤマ様が話すなら』って許可は貰ってきたんだけど」


「私は決闘騒ぎのあの夜に、トキワ殿から聞いた。口止めはされたけど」


話していいのかな?アルフォンスさんが言ってるのって『異邦人』ってことだよね。王宮で話し合いをするって大和さんが言ってたけど。


ナイオンが側にきた。ストレスだって感じてるから来てくれた?


「あの、その件については多分今日、大和さんが話し合いをしていると思います。魔力量については、私は人より多くて、たくさん休まなきゃいけなかったのと、魔力譲渡がなぜか出来なかったので」


「魔力譲渡が出来ない?」


「はい。魔力切れになったときに、アリスさんと魔術師筆頭様が魔力譲渡してくれようとしたんですけど『魔力が反発する』って言ってました」


「聞いたこと無いわね」


「それはトキワ殿との魔力譲渡でもそうなのか?」


「分かりません。魔力量が違うから怖くて」


「違うってどのくらい違うの?」


「えっと……」


「かなりってことじゃないのかな?魔力譲渡しようとしたのが、あのアリス嬢と筆頭様なんだろ?」


「あぁ、あの2人ならそうかもね」


「ごめんなさい」


「謝らないで。そういう事を話せるようにって話し合いなのね」


周りを見回していたアルフォンスさんが舞台を見て近付いた。


「シロヤマ嬢、これってトキワ殿の舞台?」


「はい。修練するのに欲しいって作ってました」


「修練用って言うよりシロヤマ嬢に見せたいって思ったんじゃないかな?この上、上がっていいですか?」


「正式なものじゃないから良いって言ってましたけど」


「正式なものじゃないから良いってどういう……いやいい。トキワ殿の許可を貰ってからにする」


「私はトキワ様の剣舞って見たこと無いんだけど、そんなにすごいの?」


「僕が見たのは確かふゆうの?」


「『冬の舞』です」


「それだ。その剣舞を見たときコルドの嵐が見えた。一瞬だったけど」


「奉納舞の時もそういうのが見えるのかしら」


「私には見えてるんですけど、どうなんでしょう」


「見えてるって何が見えてるの?」


「フラーの光景が」


「良いわねぇ。シロヤマさんだから見えているのかしら」


「分からないです。たまにナイオンも見えてるみたいな動きをしますし」


「この虎も?そういえば白い虎って珍しいな」


「騎獣屋さんから預かってるんです」


「騎獣屋ってマイクさんの?」


「はい。新しく引き取ったのが目が離せないからって」


「マイクさんもレベッカさんも、そういうのを見過ごせない人だから。酷い扱いの騎獣を何頭も引き取ってるし。もしかしてこの虎も?」


「『言うことを聞かない』って言われてたみたいです。でもちゃんと乗せてくれるし、言うことを聞いてくれてます」


「言うことをっていうか、シロヤマ嬢を守ってるみたいですね」


「大和さんが出勤前に言い聞かせてました」


「トキワ様が虎に話してたの?想像すると可愛いわね」


「ナイオンもちゃんと返事をしてたんですよ」


「さっき『乗せてくれる』って言ってたけど、どこか行ってたの?」


「気分転換にって街門の外に」


「知り合いが言ってたアレか」


「多分それです」


「何があったの?」


「街門の外で黒き狼と天使様が襲われた話」


「黒き狼ってトキワ様よね。え?襲われた?」


「襲われたっていうか、私に治して欲しい人がいたんです。その為に私を連れていこうとしたって、言ってました」


「トキワ様、怒ったんじゃない?」


「怒ってました」


「でしょうね。貴女が狙われたって知ったらそうなるでしょうね」


「アルフォンスさん、『知り合いが言ってた』って街門の兵士さんですか?」


「街門で吟遊詩人が()ってたって言ってた。兵士じゃないよ」


「街門でってアルトゥールさん?」


「知ってるの?」


「聞かされました……恥ずかしかったです」


「聞いたの?私も聞きたいのに。街門まで行こうかしら。酒場には行けないし。ダーナ様、連れてってよ」


「女性は酒場には連れて行きにくいですねぇ」


「分かってるわよ。私だって商売女って見られたくないし」


「商売女って何ですか?」


「えぇっと、色を売るって分かる?」


黙って首を振る。


「お金を貰ってお酒の相手や夜の相手をする商売をしている人の事ですよ」


「ダーナ様、はっきり言うわね。そう、それを商売にしている人を『商売女』とか『色を売る』とかって言うの。お酒の相手だけってことはまず無いしね」


「そんなことをする人がいるんですか?」


「居るのよ。好きでやってる人もいるし、仕方なくやってる人も、ね」


「仕方なくやってる人?」


「お家に借金があって、他にできる事が無いとかね。手早くお金を稼ごうと思ったら、そうするしかない、って考える人もいるし」


「辛くないんでしょうか?」


「それでも決めたのはその人だから。無理矢理やらされているなら保護もできるけど、そう言うことは表に出にくいからね」


なんだか考え込んでしまった。そんなことは考えたことがなかったし、思いもしなかった。


「そういう人を可哀想って思っちゃダメよ。誇りを持ってやってる人もいるんだから」


「誇り?」


「別に話をするだけ、お酌をしてくれるだけって人もいるし、そっちの女性(ひと)も多いんですよ。ただ、やっぱりお酒が入る場所だから、気が大きくなった男が手を出したりする場合もある」


「さすがに詳しいわね」


ミュゲさんがからかうように言う。


「神殿騎士になってからはありませんが、地方騎士の時は酒場の諍いの仲裁とかも任務の内でしたからね」


「任務じゃなくて、そういう場に行き合うこともあるんでしょ?」


「まぁ、そりゃ、男ですからね」


「大和さんもそういう事、あるのかな?」


ポツリと呟くと2人が一斉に否定した。


「無いでしょ。当事者になることは絶対に無いわね」


「トキワ殿は仲裁に入る事はあるでしょうが、考えられませんね」


「トキワ様の場合、男同士で静かに飲んでる気がするわ」


「トキワ殿ってお酒は強いんですか?」


「飲んでるのは1度しか見たことありませんけど、強いお酒なんかも飲んでたって聞いたことはあります」


「へぇ。1度一緒に飲んでみたいですね」


「お酒って美味しいものですか?」


「シロヤマさん、飲んだこと無いの?」


「無いです」


「人によって色々ね。美味しいって言う人と、美味しくないって人と。リリアから聞いたけど、シロヤマさんってお料理するんでしょ?余ったお酒ってどうしてるの?」


「ソースに使ったりとか、前に使ったときは大和さんが飲んでくれました」


「どのくらい?」


「ボトルに1/4位です」


「ますます一緒に飲んでみたいですね」


3の鐘がなる。


「あら?もうそんな時間?シロヤマさん、お昼は食べられる?神殿で昨日はスープだけだったけど」


「スープだけ?少なくない?元から少なかったけど」


「体調が戻りきってなくて、食べられないんです」


「そう。どうする?」


「朝作ったパン粥がありますから、それを食べます」


「スティーリア様から預かった分があるんだけど、どうしようかしら」


「お2人で食べてください。中で一緒にどうですか?」


「お邪魔しても良い?」


「はい。もちろんです」


3人で家に入る。デザイン画は魔空間に閉まった。ナイオンは日向ぼっこをしていて動かなかった。


「気持ちの良い家ね」


「そうですか?ありがとうございます」


暖炉のある……もう、ここリビングで良いよね。リビングでお昼を食べる。


「トキワ様のお昼ってどうしてるの?」


「私が作ってます。簡単なものばかりですけど」


「あぁ王宮騎士団の知り合いから聞いた。お昼になると一部で取り合いが始まると。あれはトキワ殿でしたね」


「お知り合いって第2隊ですか?」


「アイツは第4ですよ。ミメット部隊長にトキワ殿を取られたって、酒に付き合わされました」


「トキワ様、大人気ね」


「取り合いって言うのが信じられないんですけど」


「自分のお料理でしょ?自信を持ったら?」


「そうは言われても……」


「シロヤマさんって、可愛いし、刺繍もあの腕を持っていて、お料理も上手で、治癒師としても『天使様』なんて呼ばれてるのに、自信がないのねぇ。私なんて羨ましい位のに」


「その自信はトキワ殿がつけさせてるんじゃないかな?」


「あぁ、そうね。昨日もそうだったわね」


「あの、昨日はご迷惑をかけてしまって……」


「気にしなくて良いわよ。謝らなきゃいけないのはこっちだし」


「何があったんです?」


「女性の秘密よ」


「それは聞かない方が良さそうです」


アルフォンスさんが笑う。


お昼の後片付けをしたらアルフォンスさんは帰っていった。


「さぁて、シロヤマさんは刺繍でしょ。お話でずいぶん邪魔をしちゃったけど」


「ミュゲさんはどうなさるんですか?」


「どうしようかしら。リリアから聞いてるのは……あ、テーブルランナーを作るって」


「後、コルドの色が決まってないんです」


「コルドの色って?何枚か作るって言ってたわね」


「季節毎に変えようかと思って。フラーは緑に黄色の刺繍でミモのイメージ、ホアは暑いから涼しくなるように青、アウトゥはオレンジがかった赤までは決まったんですけど。コルドが決まらなくて」


「ホアは暑いから涼しくなるように青、なのよね。じゃあコルドは寒いから暖かくなるように、では……アウトゥと被っちゃうのかしら」


「そうなんです。昨日もそれでリリアさんと考えてて」


「白?それだけじゃ寂しいわね。白い布に暖かい色で刺繍するのは?」


「それ良いです。それにします」


「決まったわね。って話してる間にそこまで進んだの?」


「デザインは決まってたから下書きして、まだ茎だけですよ」


「茎だけって……本当に早いわね。デイジーが興奮してたわよ。自分と同じくらいの速度だったって」


「刺繍は好きなんです」


「それはそうなんでしょうけど。まぁ、刺繍ってしている最中は人に見せたりしないものね」


「ガラスの花って正式名称も綺麗なんですね」


「あぁ、あの長い名前?」


「フルールアルカンスィエルエフェメールです」


「覚えたの?」


「せっかく綺麗な名前なのに呼ばれないのは可哀想です」


「綺麗ってそうかもしれないけど」


「この名前をつけた人って、どんな人なんでしょう?」



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