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ーーー大和とリリアの会話ーーー
「行ったか。リリア嬢、ありがとうございます」
「別に構わないわよ。彼女、昨日、そんなに街門での事で悩んでたの?」
「自分を襲った相手の手当てを始めると言うとは思いませんでした」
「シロヤマさんなら言い出しそうだけど」
「万全の状態ならいいんですよ。魔力が回復しきってない状態でですから心配で。しかも4人立て続けです」
「その内の3人は貴方が怪我させたんでしょ?」
「傷は一ヶ所のみに限定しましたけどね。力が入らなくなる場所を狙って。相手が素人だから出来たことです。下手に体術を使うと危険な場合もありますし、相手が武器を持ってましたからね」
「貴方って……怖いわね」
「何がです?」
「力が入らなくなる場所を狙うとか」
「相手を無力化させるのに必要なことですよ」
「それ、シロヤマさんにも使うつもりとか、ないでしょうね」
「使ってどうするんです?朝から何を考えてるんですか」
「貴方ってそういうの慣れてそうよね」
「慣れてって……10年間毎週末歓楽街には連れていかれてましたけどね。ですから、朝からそっち方面に誘導しないでください。貴女の相手はプロクスでしょう」
「当たり前よ。彼以外なんて嫌よ」
「なら、なおさらです」
「でもあの幼さを見てると心配になるのよ」
「精神面の、ですよね。どうも元の世界の家庭環境に原因がありそうですが」
「家庭環境?」
「そろそろ終わりましょう。出てきそうだ。水音が止まった」
「聞き耳たててたの?」
「聞こえるだけですよ。降りますね」
「ホントに甘いわねぇ」
ーーーーーー
「咲楽ちゃん、髪乾かそうか?」
声をかけられてびっくりする。
「大和さん?何故分かったんですか?」
「なんとなく」
なんとなくって……
「やって欲しかったらこっちに来て」
脱衣室から出ていくと2階からリリアさんが降りてきた。
「髪が濡れてるわよ」
「あの、大和さんが……」
「乾かすって?何て言うか新婚家庭にお邪魔している気分だわ」
「すみません」
「この場合は謝らなければいけないのはトキワ様ね。無駄にそういう雰囲気を出すんだから」
「咲楽ちゃん?」
「トキワ様、髪を乾かすのは譲るけど、アレンジはさせてよね」
「って事だけど?咲楽ちゃん」
「あ、はい」
ダイニングの椅子に座って大和さんに髪を乾かしてもらう。髪を撫でられるのが気持ちいい。
「はい、終わり」
「ありがとうございました」
お礼を言って立とうとすると押さえられた。
「次は私よ」
ふふふ、と笑うリリアさん。ちょっと怖いです。
髪のアレンジをされながら、話をする。
「さっきの話だけど、ユカタ、とか言うの。簡単なの?」
「細かい寸法は覚えてません」
「?その人に合わせるんじゃないの?」
「えぇっと、大和さん、助けてください」
「そこでこっちに振る?まぁ、毎日着てたけど。浴衣も含めた着物は大体ワンサイズですね。大人用、子供用の区別はありますが。太目の紐と帯と言う幅広のベルトで調整します。デザインに男女の区別は特にありません。着付け方と丈が違うだけです」
「毎日着てたって何?」
「剣舞の為ですよ。舞う際には着物と、袴と言う幅広のズボンを履きますから」
「奉納舞もその衣装にしましょうか?」
「別にどんな衣装でも舞えますけどね。作り方がわからないでしょう」
「じゃあ、今回は?」
「神殿騎士の白い騎士服かな、と考えてたんですが」
「衣装なら作りましょうか?寸法はあるし。もう一回計った方がいい気もするけど。色は?」
「作るのは決定ですか?白ですね。浄衣の扱いですし」
大和さんと話をしながら、リリアさんの指は止まらない。結われたり解かれたり、今、私の髪はどうなってるんだろう?そういえば、この世界って鏡があまり無い。
「リリアさん、鏡って無いですか?」
「鏡ねぇ、高価なものよ。欲しいの?」
「小さな物があったら便利なのに、って思って」
「そうかもしれないわね。はい、出来た。可愛いわ」
「へぇ。似合ってる」
「当たり前よ」
「どうなってるんですか?」
「サイドからみつあみにして、ハーフアップ?かな。こう言うのは分からないな」
「こんな事まで詳しかったらちょっと引いたわね。準備がいいなら出掛けましょうか?」
「ジャケットを取ってきます」
大和さんが行っちゃった。
「シロヤマさん、香りをつけてみない?」
「香水とかですか?ああいうのは苦手なんです」
「練り香水って言ってね、香水ほどキツくないのよ。今度一緒に市場に見に行きましょう。今日でもトキワ様が一緒ならいいかもね。あの方そういうの慣れてそうだし」
「慣れてるんでしょうか?」
「慣れてないよ。リリア嬢、変なこと吹き込まないでください」
大和さんが降りてきた。
「行きましょうか」
エタンセルとナイオンを庭から出して大和さんが結界具を作動させる。ナイオンには鞍を着ける。エタンセルには轡を着けた。
「大和さん、ナイオンって昨日だけじゃなかったでしたっけ?」
ナイオンに乗りながら尋ねる。
「騎獣屋に今朝から行ったらなんかバタバタしててね。新しく引き取ったのが結構大変らしくて、ナイオンはそのまましばらく預かることになった」
「新しく引き取ったのって?」
「あれはなんだろうな?強く怯えてたのは伝わってきたけど」
「どんな騎獣だったんですか?」
「赤い鳥?かな?かなり大きかったけど」
「大きな赤い鳥?」
「珍しいわね、飛行型の騎獣なんて。ピヨーリなんかもいるけど、あれは飛べないしね。なんて種類なのかしら?」
「種類は聞きませんでしたけどね。よく見えなかったし。とにかく怯えてたのは分かりました」
そのまま神殿に向かう。
「トキワ様、どうします?お衣装、作らせて貰っていいの?その場合は採寸をもう一回させていただきたいけど」
「儀式用の衣装が増えますね。採寸をもう一回ですか?」
「腕回りとか変わってそうだし、その他は……」
「多分変わってないと思いますよ」
大和さんとリリアさんが話してるのをぼんやり聞いていた。
大和さんの衣装か。袴とか絶対に似合うよね。作り方は分かんないけど。と、言うより身近で見たことがない。でも騎士服でってそれも似合う。
「……ちゃん。咲楽ちゃん!!」
顔をあげると大和さんとリリアさんが心配そうな顔があった。
「大丈夫?ぼーっとしてたけど」
「どうした?」
「ごめんなさい。考え事をしてました」
「大丈夫ならいいんだけどね。無理だけはしないで」
「そうね。神殿へはいつでもいいんだし」
「大丈夫です」
笑顔を作る。心配をかけているのも分かってるし、体調を気にしてくれてるのも知ってる。
元々神殿に行きたいと言ったのは私だ。大和さんとリリアさんはそんな私に付き合ってくれてる。
「まぁ、大丈夫ならいいんだけどね」
気が付いたら神殿がすぐそこに見えていた。神殿前にはデルソルさん?あ、誰かが走ってった。
「知らせにいかなくて良いんだが」
「トキワ様が来た~って飛んでいった感じね」
「さっき走ってった騎士さん、施療院に初日に見えました」
「あら、そうなの?どこか怪我したとは聞いてないけど」
「あ、ご本人じゃなくて、付き添いでした」
神殿入口に着くと大和さんにデルソルさんが言った。
「団長に知らせましたからね。この前逃げられた、って大変だったんだから」
「エリアリール様かスティーリア様に聞きたいことがあって伺ったんだが」
あ、団長さんが来た。
「トキワ殿、よく来た。さぁ、行くぞ!!」
「さっきデルソルにも言いましたが、エリアリール様かスティーリア様に聞きたい事があって伺ったんですよ。あぁそうだ、団長にも伺いたいことがあったんです」
「エリアリール様はいらっしゃるが、何の話だ?」
「認識のすりあわせです。団長には奉納舞の件ですね」
奥からスティーリアさんが出てきた。
「シロヤマ様、トキワ様いらっしゃいませ。エリアリール様がおまちかねですよ」
リリアさんは衣装部に行くと言って離れた。団長さんは着いてきてる。エタンセルは神殿の駐馬場?に、ナイオンもそこにいるみたい。
そのまま神殿奥に案内される。
「エリアリール様、シロヤマ様とトキワ様をお連れしました」
「お入りになって」
エリアリール様の声が聞こえた。
部屋に入るとエリアリール様が立って迎えてくださった。
「突然申し訳ありません。お聞きしたいことが出来まして」
大和さんが言う。
「聞きたい事?何かしら?」
「大至急聞かないといけないと言うことではないんです。少し気になっただけですから」
そうして今朝の事を話し始める。
「聖人?聖者?聖女?そういう認定をされた方は生きている方ではいらっしゃいませんね。特に聖女と言うのは聞いたことがありません。聖人、聖者と言う称号は、その身を民衆の為に捧げた方を、神殿の調査機関が裏付けを取り、会議で協議した結果授けるのですよ。だから、シロヤマ様は『天使様』だなんて呼ばれてますでしょう?」
お恥ずかしい。
「あれは『聖』と言う言葉を使ってしまうことがないように、吟遊詩人の方が考えられた結果なのですよ。ここにも見えましたよ。吟遊詩人の方が「こう言う方がいると聞いたが本当か、通称をなんとすればいいか」とね」
「まさか天使様、と言うのは……」
「あれは『神殿騎士の間でこう呼ばれてる』と伝えただけですよ。トキワ様はどうやら王宮騎士団の練兵場の見物客の間での呼び名を使ったようですね」
2人で黙ってるとエリアリール様が笑われた。
「私なんて『王を叱る女』ですわよ。1度意見を申し上げただけですのに」
「私はそのまま『赤毛の騎士団長』でしたな。あれは神殿騎士団長に就任した直後でした。吟遊詩人が演ってしまうと止められない。諦めるしかありませんからな」
団長さんまで、そう言われてたんだ。
「シロヤマ様、体調の方は大丈夫ですか?昨日の街門での事は聞き及んでおります」
「大分よくなりました。魔力量はまだ戻りきっていませんが」
「トキワ様、くれぐれもご無理しないように見ていてあげてくださいましね」
「心得ていますよ」
「で?トキワ殿、奉納舞の件とはなんだ?」
団長さんが聞く。
「あとで聞こうと思ったのですが、まぁいいか。そうですね、舞台をどうするのか、どちらを正面とすればいいのか、この2点ですね」
「舞台はプロクスに聞いて、同じくらいのものを練兵場に作る予定だ。最初は神殿内で、と思っていたんだが、日を公表してからの問い合わせからすると、神殿内では狭いようなのでな。エリアリール様と相談して練兵場になった。後は正面は……見てもらった方が早いな」
「舞の前に口上を述べさせていただきます。あちらの言葉遣いでの口上なので意味が通じるかが心配ですが」
「口上?」
「本来、奉納舞と言うものは神々に捧げるものですから、神々に対してこう言うことをさせていただきますと、ご挨拶をさせていただくのですよ。今回は音の無い素舞ですから、なおさら口上が必要となるわけです」
「聞かせていただけません?」
「ここで、ですか?」
「はい」
エリアリール様がワクワクした目をされている。
「こちらも多神教のようですし、特に変える所も無いようですからそのまま言いますね」
大和さんはそう言うと息を吸い込んだ。
『只今より、常磐流第28代が2子、常磐大和、神々に舞を奉る。どうぞ御照覧あれ』
「こんな感じですが……いかがなさいました?」
「これは……1度神々にご挨拶しておきましょう。その方がよろしいですわ。こちらにどうぞ」
エリアリール様は部屋から出ると神像が安置されている所に私達を案内した。皆が入れるところにも神像はあるけれど、ここにあるのが本殿から運ばれてきたものなんだって。
「ご挨拶をと言われましても、作法も分からないのですが」
大和さんがそう言うとエリアリール様は笑われた。
「もちろん正式なものはございますよ。でも、自由でいいのです。その方の心のままに祈っていただければ」
「では、せめて塩水を用意していただけませんか?」
「塩水?どうなさるの?」
「うがいをします。神々に少しでも失礼がないように」
「まぁ、そこまでしなくとも……」
「私のけじめですので。お願い致します」
やがて塩水が来ると
「咲楽ちゃん、この水に浄化ってかけられる?」
と言った。エリアリール様達はその様子を黙ってみている。
「浄化ですか?」
「うん。清浄な気を取り入れられるように。それからこれにも」
差し出されたのはハンカチ。
お水とハンカチに浄化をかける。清浄なものとなるように願いを込めて。
浄化し終わると大和さんは手洗所に近づいてなにかを唱えながらうがいをし、残りの水で手を洗った。
そのまま中央の神像に近付くと足を組んで座った。そして礼を2回、柏手を2回、床に手をついて深い礼を1回。
「お初にお目もじいたします。常磐流第28代が2子、常磐大和にございます。こちらで舞を奉納させていただく事と相成りました故、ご挨拶に伺わせていただきました。宜しくお願い致します」
大和さんが頭をあげるとキラキラとした光が降り注いだ。
「何て事……」
エリアリール様が口に手を当てて驚いている。
大和さんが立ち上がってもう一度深く一礼する。
「エリアリール様、どうなさいました?」
スティーリアさんが聞いているけどそれに答えないままエリアリール様は大和さんに言った。
「トキワ様、先程主神リーリア様から祝福を受けられました」
「祝福?」
「えぇ。奉納舞の時には皆様お見えになられますわよ」
「ご挨拶しただけですよ」
「興味を持たれたのでしょう。これは楽しみですわね」
エリアリール様はなんだかニコニコされている。
「何かあった?」
「大和さんがご挨拶をして頭をあげたとき、大和さんにキラキラした光が降り注いだのは見ましたけど」
「光?」
エリアリール様を先頭に部屋から退出する。次は練兵場で正面を確認するんだって。でも練兵場に行ったら模擬戦って言われちゃったりしないの?
エリアリール様とスティーリアさんにお暇を告げて、外に出るとリリアさんとミュゲさんが待っていた。
「トキワ様、行きますよ」
そう言って両腕を掴まれかかる大和さん。
「待ってください。これから練兵場です」
「あら?模擬戦が先?」
「確認したいことがあるのですよ」
「シロヤマ嬢、あぁ言うのを見て、なにも思いませんか?」
デルソルさんがコソっと聞く。
「何もって?」
「トキワ殿はおモテになるでしょう。嫌な思いとか、しませんか?」
「えっと、リリアさんとミュゲさんは衣装部に連れていこうとしているだけですよね」
「彼女らの事だけじゃなくてですね。ですから……」
「何を吹き込んでいるんですか?デルソル」
顔をあげると笑顔の大和さん。
「何でもありません!!」
とたんに背筋を伸ばして直立不動になるデルソルさん。
それを見て爆笑している団長さん。え?何この状況。
リリアさんとミュゲさんが側に来た。
「何を言われてたの?」
「リリアさんとミュゲさんが大和さんの腕を取ろうとしているのを見て、嫌な気分にならないか、って……」
「どう答えたの?」
「衣装部に連れていこうとしているだけですよねって言いましたけど」
「そうよ。その通り。ベリーズ様が変なことを言ったわけね?」
ジロッとデルソルさんを見るリリアさんとミュゲさん。
ますます直立不動になるデルソルさん。
「そろそろ練兵場を確認しても?」
笑いながら大和さんが言う。
「そうだな。確認したら模擬戦な」
団長さんの言葉に大和さんが脱力する。
「今日は何戦やらせるつもりですか?」
「希望者次第だな。あぁ、今日は来月から異動してくる予定のが2人来てるから、ソイツ等ともしてもらうか」
「ペリトード団長様、トキワ様の事は衣装部も待っておりますのよ?」
「トキワ殿、モテるな」
「モテるな、じゃ、ありません。練兵場に行ったら模擬戦、と言うのは決まりになってるんですか?」
「そんなもの、トキワ殿だけに決まっているだろうが」
「何故です?」
「俺が連敗してるんだ。悔しいからに決まってるだろ。カイルも呼べば良かったか?」
「止めてください。あぁ、アインスタイ副団長に関しても話があったのですが」
「何だ?」
「出来れば団長室で」
「ん?まぁ模擬戦が終わってからだな」
「ペリトード団長様、トキワ様は模擬戦が終わったら衣装部です。忘れないでください!!」
あ、ミュゲさんが怒った。
練兵場に着くとプロクスさんがこっちに気付いた。
「あれ?トキワ殿、どうされたんですか?今日はエタンセルを管理場に戻すって言ってませんでしたっけ?」
「そのつもりだったんだが、確認したいことがあって神殿に来たら捕まった」
「トキワ殿が来たぞ。希望者は集まれ」
団長さんが声をかける。そんな集め方なの?こっちに来るのは3人。アルフォンスさんもいる。
「来月から異動の奴らは強制な」
2人が固まった。あの人達が異動してくる人達?
「あ、天使様と黒き狼」
もう定着してるって街門の兵士さん達も言ってたけど、諦めるしかないよね。
「団長。まずは確認をさせていただきたい」
「おぉ、忘れてた、すまん。プロクス、お前もこい」
何かの説明を受けて方角を確認する大和さん。そのまま何かを話してる。
「シロヤマさん、座ってた方がいいわ」
「あら?具合でも悪いの?」
「魔力切れを起こしちゃって、まだ完全に戻ってないんです」
「え?でも、魔力切れって大体一晩寝れば治るじゃない。施療院なら魔力量が多い人もいるんだから魔力譲渡してもらっても……」
「その辺は事情があるのよ」
「事情って?」
「スティーリア様に確認してからね」
話をしている内に確認が終わったみたい。次は模擬戦?
大和さんがジャケットを脱ぎながらこっちに来る。
「咲楽ちゃん、持ってて」
「はい。無理しないでくださいね」
「怪我した場所の事?もうすっかり良くなってるよ。動きに違和感もないしね」
「トキワ殿。希望者は6人。いけるか?」
「いけるかって、やるしかないんでしょう」
大和さんは私にジャケットを預けて団長さんの方に歩いていく。
「ミュゲ?何してるの?」
「あ、コリンさん」
「あら、シロヤマ様、来てたのね?で、何事?」
「今からトキワ様と騎士団員の模擬戦よ」
「へぇ。って、対戦相手、何人いるの?」
「6人だそうです」
「6人!?むちゃくちゃね。まさか連続で?」
「多分そうです」
そう言っている間に模擬戦が始まった。
「トキワ様って双剣だったの?」
「そっちの方が得意になったって言ってました」
「でも綺麗よね。模擬戦って見たことなかったけど、トキワ様ってなんだか舞ってるみたいね」
「あ、舞ってるって言えばトキワ様でしょ?奉納舞って。あれを見ちゃうと納得ね」
「リリア、奉納舞の衣装って白の騎士服でいいのよね。装飾はどうするの?」
「最低限の物でって言われたわ。何でもジョウイだからって。シロヤマさん、ジョウイって何?」
「汚れがない、とかの意味だと思うんですけど、すみません、はっきり分かりません」
「って事は、ジョウは浄化の浄よね。イは衣装の衣かしら」
3人との模擬戦が終わった。大和さんが剣を1本にする。
次は今度異動になる人?
「黒き狼殿、剣を1本にしたのは何故です?」
「貴方にはこちらの方がふさわしい、そう思っただけです」
「私を侮っての事か」
「まさか。私は双剣を得意とはしていますが、普段は1本ですよ」
「なるほど。2本無いと戦えないわけではなさそうですね。お手並み拝見です」
ようやく大和の流派の名前が出せました。
我ながら捻りのない名前です。
トキワを「常盤」でなく「常磐」としていた自分を誉めてあげたい……。