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異世界転移って本当にあるんですね   作者: 玲琉
同棲開始
21/664

18

短いです。「蛇」と文字を打つのも嫌な私は、これと前話が地獄でした。


咲楽の「フラッシュバックのように映像が見えて目を閉じることができない」と言うのは、私自身の話でもあります。


騎獣屋さんをお暇して、家に戻る。プロクスさんも一緒だ。


「まずは何をしましょうか?木を乾燥させてしまいましょうか」


プロクスさんが張り切ってる。


「まずは昼食じゃないか?ほら。3の鐘だ」


「そうですね。ギルドの近くの屋台で色々買ってきましたよ。アレの代金もお渡ししますね」


「アレの代金って……三等分で良いだろ?」


「トキワ殿お一人で倒されたじゃないですか」


「でも咲楽ちゃんを守ってくれてたからな」


私は何もしていないよっ!!


「あのっ!!私は何もしていないので、お二人で分けてください。この状態でお金だけ貰っても情けなくなるだけなので」


「そうは言っても……」


「お願いします」


頭を下げる。しばらくするとため息が聞こえた。2人分。


「こういうところは頑固だな」


頭をポンポンされた。


「分かった。プロクスもそれで良いか?」


「まぁ、今回はそうしましょうか」


テーブルにプロクスさんが屋台で買ってきた物を出す。サンドイッチとか串焼きとか気軽に食べられるのが多い。後はジュース。大和さんはレモン水を選んでた。私は桃とリンゴのミックスジュースみたいなの。プロクスさんは……それ何?


「これは東方のお茶でしてね。こう言う肉料理の後なんかさっぱりするのですよ」


「ちょっと見せてもらって良いか?」


「どうぞ。もう一つありますから」


匂いを嗅いでみる。中国茶っぽい。


「味は中国茶より薄い感じだな。ん?どっちかと言うとオリエンタルビューティか?」


「何ですか?それ」


「東方美人って言う紅茶?確か台湾茶だったかな。爺様が好きでよく飲んでた」


そんなのがあるんだ。


「プロクス。コボルト族やオーク族については分かった。あっちの世界で知られてるのは、後はオーガ何てのもいるんだが」


「はい。オーガ族ですね。力が強く鉱山帯に住んでます。特徴としては角が生えてる事でしょうか」


「ゴブリンと言うのは?」


「それはコボルト族の別名です。ただ、コボルト族は『ゴブリン』と呼ばれるのを嫌がります。ゴブリンと言うのは、大昔に滅びた知能の低い種族らしいのです。ゴブリンと言うのは今は居ない、と言われています」


「後は魔物じゃないけどエルフとかドワーフとか、獣人とか」


「エルフにドワーフ?聞いたことがありません。獣人と言うのは?」


「獣の特徴を持った人だな。耳が獣耳だったり尻尾があったり。えてして身体能力が高い」


「そう言う特徴の方ならいますよ。獣人とは言いませんが。犬人族、猫人族、狼人族、狐人族、狸人族、竜人族の方がいらっしゃいます。この国でもよく見かけます。シロヤマ嬢は、施療院で働くことになりますからお会いするでしょうし、トキワ殿も市内巡回でお会いするでしょうね」


「後は魔族かな?」


「魔人族ですね。魔法行使に長けてて、魔道具を作られてます。魔人族の方の国はすごいですよ。馬の無い馬車があったり、長距離の通信具もあります。中には友好的でない方々の国もありますが」


「戦争があったりするのか?」


「戦争と言うか、ちょっかいをかけてくると言いますか。コラダーム国は国境を接してないのでまだ良いのですが、我が国の友好国には攻撃されたりする国もありますね。ただ、宣戦布告はしてこないんです。ちょっと手をだして逃げる等の嫌がらせと言いますか、極小さい爆発物を仕掛けて爆発させるだとか」


「ゲリラかよ。こっちにもそう言うのが居るのか」


大和さんが顔をしかめて言う。


「ただ、ここ数年は沈静化しつつあります。一応協定は結びましたから」


プロクスさんはそう言って立ち上がる。


「作業をしてしまいましょう。アズマヤでしたっけ?どんなのか見てみたいんですよ」


庭に出て木材を出す。水分を抜くのは私。でもどれくらい抜いたら良いの?


「理想的なのは15%って言われてるけど」


「その位まで抜いたら良いですか?」


「出来るの?咲楽ちゃん、すごいね」


全部で50本くらいあった木材の水分を抜いていく。


その木材を設計図通りに加工していくのはプロクスさんなんだけど……。


「トキワ殿?こんなに細かいんですか?」


「だからこれが要るんだ」


と言って大和さんが取り出したのはあのとき買っていたノコギリ。


「本当はノミとか欲しかったんだけどな」


と言いながら切り込みを入れていく。凸型の方は大和さんが全てノコギリで切ってしまった。凹型の方は切り込みに合わせてプロクスさんがくりぬいていった。


んー。これって私にも出来るかも?


「私もやってみて良いですか?」


「やってくれる?」


大和さんの設計図ってすごい精密。って言っても細かいのは簡略化したみたい。


全部切り終わったら大和さんは組み立て。その間に板材を作っていく。半日で四阿(あずまや)ができちゃった。


「よし。こんなもんだな。二人ともありがとう」


組み立てが始まってからは私達は何もしていない。ホントに大和さん、一人で建てちゃった。


「これがアズマヤですか……」


プロクスさんは出たり入ったり見上げたりしてる。


「本当にガゼボのようですね。あっちは石造りですが。木を使うと雰囲気が変わりますね」


「本当はこれに虫除けだとかした方がいいんだろうけど。ここでお茶とかもできるな」


3人で家に入る。


「プロクスさん、お茶淹れますね。大和さんはどうします?」


「コーヒーを淹れるよ。その前に豆を挽かなきゃだな」


プロクスさんに紅茶をお出しする。この前の市場(バザール)で買っておいた紅茶。その間に大和さんはミルで豆を挽いていて、それをプロクスさんが興味津々で見ていた。


「それがコーヒーというものですか。香りが良いですね」


「紅茶の香りが消されるけどな」


2人が話している間にケトルにお湯を沸かしておく。


淹れた紅茶を運びながら大和さんに言う。


「大和さん、キッチンあきました。お湯はケトルに沸かしてます」


「ありがとう。プロクス悪い。ちょっとコーヒーを淹れてくる」


大和さんがキッチンに行って、プロクスさんと2人になる。


「シロヤマ嬢、この家で不自由なことはないですか?」


「はい。特に無いです」


「それは良かったです。明日から施療院に出勤だと聞きました。ここから少し距離がありますが、通いはどうされるんですか?」


キッチンから大和さんが言う。


「俺が送っていく。王宮騎士団のアインスタイ副団長には話はついてる」


いつの間に?


「ではトキワ殿の所属は王宮騎士団になったのですか?」


「どうなるかは明日の光の日に決まる。明日は朝から王宮だ」


コーヒーを持って大和さんが戻ってきた。


「そうなんですね。出来れば神殿騎士団に来ていただきたいですが」


「騎士団って勤務地異動があると聞いたが」


「上層部、つまり地方騎士団の団長、副団長は期間が決まってます。王宮と神殿はあまり異動はありません。季節が5巡り程すると異動する人も居ますが」


「プロクスはどうなんだ?」


「私は実家がこちらにあることもあって、王都以外は近場ばかりですね。まぁ、独身の者には寮が用意されてますし、妻帯者には一軒家が貸し出されます。大抵は溜り場になりますが」


「若いののってことか」


「そうですね。隣の領に行ったときには、3日に1度はお邪魔してました」


それ、ご迷惑なんじゃ……


「3日に1度はさすがにご迷惑だろう」


「ですよね。次の日に掃除だとか買い物でこき使われましたが。さすがに新婚の方の家は遠慮しますよ」


笑ってプロクスさんは立ち上がった。


「そろそろお暇しますね」


「あぁ、今日はありがとう」


プロクスさんは帰っていった。


「咲楽ちゃん、今日はお疲れ様。怖い思いをさせてごめんね」


「あの、私も迷惑をかけてしまって……」


「迷惑ではないけど……大丈夫?」


「分からないです。フラッシュバックみたいになることもあるので」


「それって……」


「もしかしたら今日、夢に出てくるかも……」


「抱き締めててやろうか?」


冗談とかからかいだと思うには、大和さんの口調も表情も真剣で、どうして良いかわからなくなった。


「何かあっても護るから」


大和さんはそう言って頭をポンポンっとしてくれた。


お夕飯の準備の時もその後も、目の届くところに居てくれて安心出来た。


考えすぎるとダメなのは分かってる。でも、一人になるとどうしても考えてしまってあの蛇の顔が浮かぶ。怖い。目を閉じるのが怖い。寝るときが怖い。


お風呂に入って寝室に行くと、大和さんが気遣わしげに見てくる。


「そんなに気にしないでください。大丈夫ですから」


笑って言ってみた。ライトを消して横になる。目を閉じるとやっぱりあの蛇の顔が浮かんだ。気付かれるな。大丈夫。大和さんに心配をかけたい訳じゃない。その夜はなかなか寝付かれなかった。



ーー大和視点ーー



絶対無理してるよな。心配かけたくないって思ってるのが丸分かりだし。


あそこまで大きな蛇は見たことがなかったから俺も驚いた。


「出会ったら咲楽ちゃんを抱えて逃げる」


あんなこと言っておいて逃げる余裕もなかった。


そもそも視線を感じなかったらあの蛇がいることに気がつかなかっただろう。気づけたからこそ動けた。地球のに比べて大きさは桁違いだし、完全にこっちを獲物として狙ってた。


蛇がウサギを狙うのは地球でも同じだが、大きさが違いすぎる。


咲楽ちゃんには悪いことをしたな。フラッシュバックって結構重症なんじゃないのか?苦手だって言ってたのが何度も甦るって想像つかないけど。もしかして映像として幻覚みたいに見えてるのか?


しかしコボルト族にオーク族か。ここでは友好種とか、常識と思ってたのが非常識ってなると動揺してしまう。オーガ族も友好種なんだな。どうりであの魔物の本に載ってなかったはずだ。載っていないから居ないものだと思い込んでた。思い込みは危険だと分かっているハズだったのにな。


やっぱり情報を集めたい。今のところプロクスか団長しかいないんだよな。あんまりプロクスに頼るのもどうかと思うし、どうしたものか?プロクスも忙しいはずだし。


咲楽ちゃんはまだ寝付けないようだ。大丈夫なのか?



ーー異世界転移16日目終了ーー




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