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異世界転移って本当にあるんですね   作者: 玲琉
芽生えの月
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闇の日になった。今日は大和さんは休みだ。当然のように王宮に着いてきてくれるって言ってた。でもエスコート役ではないらしい。「間に合ったら行くよ」って言ってくれたけど何をしているのかは教えてくれない。


パーゴラは今日、時間があったら一緒に作る事になってる。その為の木材は昨日朝のうちにカークさんと大和さんが購入してきてくれた。


その木材はなんと、地下に置いてあるらしい。「魔空間に入れておいたら、容量を圧迫するでしょ?」って言ってた。いったい何本買ってきたんだろう?


今日は王宮の後、北の湖に行く事になってるから、楽しみだ。エタンセルに乗って行く事になってる。それも楽しみだ。


そういえば、今日はレーヴを蒔いて一週経つ。何が起こるんだろう。


着替えてダイニングに降りる。いつもならそのまま暖炉に火を入れているんだけど、今日は庭に出てみた。レーヴの芽は2つ出ていた。


「ただいま、咲楽ちゃん。早いね」


「おはようございます、サクラ様。レーヴですか?」


「おかえりなさい、大和さん。おはようございます、カークさん。はい。2つ出てますね」


「お昼頃ですかね。お楽しみが起こるのは」


「いったい何が起こるんだ?」


「3の鐘過ぎくらいにはなると思います」


返事になっていない返事をされた。


そのまま庭でストレッチをする大和さん達を見ていた。


「咲楽ちゃん、ストレッチを終えて、シャワーを浴びたら、そのまま市場(バザール)に行くからね。ちょっと待ってて」


「はい」


その間何をしていようかな。


キンカリュに水をやって、花壇の種達の様子を見る。あ、少し芽が大きくなってる。


「何見てるの?」


「少し芽が大きくなってるんです。バラも元気にしてます」


「サクラ様、ベリー類はどうするんです?」


「あの子達は四阿(あずまや)の横に移動します」


「あの子達、ですか?」


「はい」


「サクラ様に育てられている植物は幸せですね。たっぷり愛情を注がれている気がします」


「普通にお世話をしているだけですよ?」


「普通、ね」


「大和さん、何が言いたいんですか?」


「普通に世話をしている人は、光属性は使わないでしょ」


「それは仕方ないと思ってください」


「仕方がない、ねぇ」


「元気に育ってね。綺麗に咲いてね。って祈っちゃうのは仕方がないんです」


「開き直ったね」


大和さんは笑って、シャワーに行った。


「サクラ様、お手伝いしましょうか?」


「あ、じゃあ、ベリー類を庭に放っちゃいます」


「庭に放つですか?」


「言わないのかな?フラワーポットだと植物の根が一杯になっちゃって、窮屈そうだから、お庭に植えてのびのびさせてあげるんです」


「言われてみれば。庭に放つですか」


カークさんと協力してベリー類を四阿(あずまや)の側に運んで、植え付ける。エタンセルが四阿(あずまや)にお泊まりしても届かないような位置に植えた。エタンセルは賢いから大丈夫だと思うけど、万が一を考えて、ね。


大和さんがシャワーから戻って、市場(バザール)に行く。今回もカークさんは遠慮したのか家を出た所で別れた。


「どこの市場(バザール)にする?」


「うーん。どこでも良いんですけど」


「東地区にしようか。王宮にも近いし」


「はい。イストワールにしますか?」


「違う店にしてみる?」


「楽しみです」


2人で東の市場(バザール)に向かう。市場(バザール)内に入って喫茶店を探す。前とは違う店に入った。


「オリエンタル?」


「中東っぽい雰囲気だな」


店内はちょっとエキゾチックな雰囲気がある。なんだか甘い香りがした。


「この香り、大和さんに合います」


「ムスクっぽい香りだね」


出てきたモーニングセットは普通のパンとオムレツ、飲み物なんだけど、雰囲気と香りでいつもと違う感じがする。


「入り浸りたい人と、早く出たい人とに、はっきり別れる店だね」


「落ち着くような落ち着かないような、不思議な感じがします」


「ちょっと早く出ようか」


「何かありますか?」


「香りが染み付くのが気になる」


「大和さん、鼻が良いから」


「そういう訳でもないんだけどね」


「どういう訳ですか?」


「また後でね」


お食事は文句無しに美味しかった。


お店を出て、待ち合わせ場所に行く。ファティマさん達とルビーさん達が待っていた。


「おはよう、サクラちゃん。そっちから来たって事は、早朝デート?」


「おはようございます、ルビーさん、東の市場(バザール)で朝食をいただいてきました」


「なんだか甘い感じの香りがするわ」


「お店の中がこんな香りで。匂いが付いちゃいました」


「トキワ様、危険な男って感じになってるわよ?」


「困りましたね」


「危険な男?」


「女性が引き寄せられるって言うか、トキワ様に似合いすぎてるのよ」


「私は咲楽ちゃんだけで十分なんですけどね」


「私達はわかってるわよ。それにそんな事をする気もないわ」


「ルビーさん、そんな事ってどんな事ですか?」


「困ったわね。説明が難しいわ」


ローズさんとリディー様が合流して、王宮に向かう。


「今日はトキワ様はエスコート役?」


「私は別件ですね。時間が合えば行きますが」


「黒き狼様、今日はヘリオドール様はおみえになられますでしょうか?」


「たぶん団長と来るかと。後2人程神殿から来る予定です」


「あら、そんなに?」


「今年のフルールの御使者(みつかい)様方は熱心でいらっしゃいますから、エスコート役が必要ではないかと、要請がありました。必要でなければ王宮騎士団との訓練に差し替えるだけですのでご心配なく」


「いつものメンバーが遅れてくるようになったというのは、何か訳があるのかい?」


「もう少し、秘密です」


王宮に着いて、私達はいつもの部屋へ。大和さんは騎士団詰所の方へ歩いていった。


「今日はサクラちゃんは北の湖だったかしら?」


「はい。大和さんがエタンセルに乗って行こうって、言ってくれました」


「あそこに行ったらボートを借りるといいわ。水が澄んでいて綺麗よ。でも、まだ寒いかしら」


「膝掛けとかたくさん持ってきました」


「後はセイレーンに気を付けて。イザとなったら何でも良いから歌うといいわ」


「歌うんですか?」


「そう。何でも良いのよ。ハミングでも何でも」


「後、イポポタかしら。滅多に見ないけど」


「イポポタって大きいんですよね?」


「そう言われてるわね。普段は穏やかよ」


「言われてる?」


「私が見たのは頭だけなのよ」


「あぁ、私も頭しか見てないです」


ゾーイさんとアザレア先生が入ってきて、一番馬車の御使者(みつかい)だけ祈りの間へ。他の人達はそれぞれ自主練らしい。


アザレア先生に祈りの作法と、パフォーマンスを見てもらう。


「このパフォーマンスは光属性が2人いるから出来る事ね。次の御使者(みつかい)様方が可哀想になってくるわね」


「でも成功したら、物凄く盛り上がりますね」


3の鐘まで時間を残して、いつもの部屋へ戻る。


「咲楽ちゃん、歩いとく?」


「はい」


成年女性の御使者(みつかい)は、パレードの途中で馬車を1回降りなきゃいけない。だから階段の方に連れってもらった。


「大和さん、あのお店で早く出たのは何故ですか?」


「匂いが付いちゃうから。あっちで索敵の時とか、匂いは邪魔だったから避けちゃったんだよ」


「大和さん、今匂いってしませんよね?」


「咲楽ちゃんから(かす)かに香る程度だね」


「気になります?」


「咲楽ちゃんに合わない気はするけどね。大丈夫だよ」


「王宮を出たらどうするんですか?」


「エタンセルを迎えに行って、いったん家に戻る。レーヴを見たいでしょ?」


「はい」


3の鐘よりかなり早く、解散になった。


大和さんとエタンセルを迎えに行って、お昼を買ってから一緒に家に戻る。


庭のレーヴの芽は、18本出ていた。蒔いたのがそれ位だったから、全て出たことになる。


「咲楽ちゃん、これっていきなり本葉が出てない?」


「ですよね?」


フッと6色の小さな光が生まれた。3本ずつ芽が集まってきて、少し浮きながらふよふよ移動し始める。


「樹魔法、使ってる?」


「使ってないです」


花壇の端にたどり着いた芽達はそこで動かなくなった。光も消えてる。


「光が生まれて、芽が移動したよね?」


「はい。魔力の光じゃなかったです。だけど、綺麗でした」


「これは『楽しみに』って言ったカークの気持ちが分かるな」


「感動しました」


大和さんとお昼ご飯を食べて、着替えてから、エタンセルを連れて北の街門から出る。


久しぶりにエタンセルに乗せてもらった。相変わらず高い。でも後ろで大和さんが支えてくれてるし、エタンセルが落とすと思わない。だから安心できた。


草原を抜けて、小さな林の向こうに大きな湖があった。


「大きいですね」


「そうだね」


エタンセルに揺られて、少し湖の縁を行くと、小屋があった。ここにもコボルト族さんが居るのかな。


「いらっしゃい。ボート使う?」


出てきたのは愛想のいいおじさまが3人。


「貸してもらえますか?」


「こっちだよ。付いてきてね」


案内された先には手漕ぎのボート。


「気が済んだらここに戻してくれたらいいから。じゃ、楽しんでね」


ボートに乗って、湖に漕ぎだす。


「水が澄んでますね」


「そうだね。寒くない?」


「はい」


泳いでいる魚が見えるくらい綺麗な水だ。風も無いし、静かで気持ちがいい。


湖の中心辺りに来て、大和さんがオールを引き上げた。


「困った。ボートの上じゃ、咲楽ちゃんを抱き締められない」


「立ったら不安定ですもんね」


「おいでとは言えないね」


「言われても動けません」


鳥の声が聞こえる。


「何の鳥でしょうね?」


「青い大きめの鳥はこっちに飛んできてるけど」


「青い鳥ですか?」


「尾羽が長い。全体の色は青。何だろうね」


大きな青い鳥さんがボートに止まった。


「綺麗な鳥さんですね」


不思議な旋律が聞こえた。ボートの鳥さんからだ。


「セイレーンさん?」


「そうかもしれないね」


大和さんが笛を取り出しながら答える。


「咲楽ちゃん、歌う?」


「何の曲ですか?」


「咲楽ちゃんも知ってると思うよ」


流れてきたメロディーは『花』。確かにこれなら知ってる。大和さんの笛に合わせて歌ってると、鳥さんがもう1羽、やって来た。


結局セイレーンと思われる鳥さんは、3羽来てくれた。何曲か歌って、笛と歌が終わったら飛んでいっちゃったけど。残されたのは青い腕輪が3つ。


「1つはエタンセル用?」


「え?」


「だって、1つ径が小さいし。2分割出来るようになってる」


「確かに1つだけ、幅もありますけど」


「こっちの2つは俺と咲楽ちゃん用だと思うけど」


「戻ってボートを貸してくれた人に聞いてみますか?」


「その方がいいね。でももう少しこのままで居ようか」


のんびりボートの上で過ごして、元の場所に帰る。


「おかえりなさい。楽しめた?」


「青い鳥が飛んできて、こんなのを置いてったんですが」


「おめでとう。ん?これは何?」


おじさま達も首を傾げた。


「馬用かとも思ったんですけどね」


「そうかもしれないね。付けてみたら?こっちのちょっと大きいのはお兄さん用、こっちのはお姉さん用だね」


「あの青い鳥さんは何ですか?」



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