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集合場所には未成年の部の御使者(みつかい)の子達も全員居た。


「私達、交流会ってどうして良いのか分からないんです」


「リディアーヌ様にくっついてて良いですか?」


「良いんじゃないかしら。エリザベート様とかジュリエッタ様とかと、お話も出来るわよ」


「あの人達は貴族様だけど、変に偉そうじゃないから、話しやすいんだよね」


「名前で呼んで良いって、普通に言ってくれたしね」


「礼の仕方とかの教え方も上手いよ。あんな事、自分が出来ると思わなかったけど、なんとかなっているもんね」


「足はプルプルするけどね」


「私は筋肉痛で大変だったよ。施療院に行こうかと思ったもん」


「そうだねぇ。旦那に叱られたけどね。『そんな事で施術師様に迷惑をかけるな』って」


「来て頂いて、よろしかったのに」


私が言うと、ファティマさん達が物凄く遠慮していた。


「いやいや、ルビーさんも天使様も仕事だろう?こんな事位で、ねぇ」


「たかだか筋肉痛だよ。放っておいても治るしね」


「そういえば、ルビーさんや、天使様は筋肉痛にならなかったのかい?」


「私は自分で治癒術を掛けちゃったわ」


「私は……」


チラッと大和さんを見る。


「黒き狼様が優しくて良かったねぇ」


「初々しいと言うか、熱々というか」


「こっちが恥ずかしくなっちまうね」


「本当に大切にされてるね」


淑女世代の方々に、物凄くからかわれた。


「え?なんですか?」


「恥ずかしい事?」


「天使様と黒き狼様はいつも仲が良いけど」


「天使様の事をいつも見てるよね」


未成年の部の子達はいまいち分かっていないみたいで、助かった。


「皆様、参りましょうか」


ローズさんとリディー様も集合して、副団長さんが声をかけて、全員でゾロゾロ移動する。


「何をからかわれてたの?」


「夜に言います」


「まぁ、大体分かるけど」


「分かっちゃいます?」


「まぁね」


「大和さんはからかわれなくて良いですね」


ジトッとした目で見ると、笑われた。


「まぁ、その辺は、ね?」


何が、『ね?』なんだろう。


私達がこうして話していると、周りから『仲が良い』とか言われるんだけど、これって普通じゃないのかな。


王宮の入口でスサンヌ様と合流した。


「皆様、ごきげんよう」


「おはようございます」


「今日は交流会ですけども、イストワールはどうなさいます?」


「あぁ、それがありましたね。どうしましょう」


「私は行きたいわ。でも時間的にどうかしら」


「そうですわよね。いつ終わるかって言うのが、分からないんですわよね」


5人で話をしながら、いつもの部屋に行く。


「集まれるのが、闇の日だけになっちゃうのよね」


(わたくし)、施療院まで参りましょうかしら」


「それだとユーフェさんが」


「あら、私も行きますよ?私は家の手伝いをしているだけですし」


「さすがにお茶の時間って訳にはいかないけど、集まりたいわよね」


「ユーフェさんって、お家の手伝いって言いましたけど、何かお商売をされてたりするんですか?」


「西地区で花屋をしてます。種や苗から育てるって事もしますよ」


「撒いておくだけで育つ花って無いかしら?」


「ローズさん……」


「それだとミントとかでしょうか。でもあれはお勧めできませんけど」


「あら、何故?」


「繁殖力が強くて、気が付いたら、お庭がミントだけって事になりかねません」


「ミントテロ……」


「後は、そうですね。ハーブとか、薬草と言われるものは、育てやすい物が多いですけど」


「ユーフェさん、ラーム ドゥ ラ リュンヌの種をもらったんですけど」


「あら、珍しい。どなたから?」


「西地区の本屋のおばあ様からです」


「えっと、()()?」


「サクラちゃんの言っている『西地区の本屋のおばあ様』って、気難し屋のばあ様で合っているわよ」


「サクラちゃんは気に入られちゃったのよね」


「どうやって気に入られたんですか?」


「その『西地区の本屋のおばあ様』ってどなたですの?」


「西地区で本屋というか、雑貨やというかを営んでいる、とても気難し屋のばあ様です。気に入らなけりゃ、物も売ってくれない処か追い出されちゃうんです。でも、あそこって珍しいものがたくさんあるんです。希少な魔道具とか、希少本も売ってるって噂だし」


「実際に売ってますよ。薬草辞典と薬草茶(ハーブティー)のレシピ本を買いました」


「いまだに信じられないわ。しかも元はくれるって話だったんでしょ?」


「はい。でも辞典なんかは知識の塊ですから、タダとか嫌だったんです。だからちゃんとお金は払いました」


「サクラさん、ラーム ドゥ ラ リュンヌの種は芽生えの月には撒いた方がいいわ。その後、芽出しした方がいいけど、出来る知り合いはいらっしゃる?」


「はい」


ローズさんとルビーさんにチラチラ見られてしまった。だって私がって言いたくなかったんだもの。


アザレア先生とサファ侯爵様達が入っていらして、今日のスケジュールが伝えられた。


「今日は練習の合間に数人ずつ、仮合わせに入っていただきます。食後だと体型が変わる方もいらっしゃるでしょうし、それを気にして食べていただけないと言うのもお気の毒ですからね」


笑い声が起きた。


「五番馬車の方からいきますね。一番馬車の方が、手間がかかる……確認事項が多いようなので」


ゾーイさん、誤魔化せてません。


「まずは五番馬車の方、参りましょう」


五番馬車の御使者(みつかい)達が別室に行って、私達は礼の練習から。


何度か繰り返して、休憩をしていると、エスコート役の騎士様達が入ってきた。でも大和さんがいない。


「シロヤマ嬢、今回は私ですが大丈夫ですか?」


「ゴットハルトさん、大和さんは?何か御用事ですか?」


「あぁ、ヤマトだけではないのですがね、少し用事が入ったのですよ」


「え?」


気が付いたら、いつものエスコート役の騎士様の何人かがいない。


「何があったんですか?」


「別に緊急事態と言うわけではありませんので、ご安心下さい。さぁ。歩きに行きましょうか」


たぶん初めての方向にエスコートされた。


「どこに行くんですか?」


「階段がある所です。心配しなくても、皆様一緒ですよ」


角を曲がった時、ローズさんが見えた。


「本当だ」


「一周回ったら、少し休憩しましょう。その頃にヤマトが戻っていると良いんですが」


「お気遣い、ありがとうございます」


「どうですか?樹魔法は」


「えっと……」


「何やら芽吹かせたのでしょう?また見に行っても良いですか?」


「はい。いらしてください。今、花壇を作ろうって計画しているんです」


「花壇ですか?」


「はい。種を頂いたりしたので」


「そうですか。もう少ししたら日差しがキツくなってきますから、帽子は忘れないようにしてくださいね」


「はい」


「シロヤマ嬢なら分かっているのでしょうけどね」


「分かってはいるんですけどね」


一周回ったら、休憩の為に部屋に戻る。大和さんが待っていてくれた。


「終わったのか?」


「今回はな」


「シロヤマ嬢が待ってる」


「あぁ、すまなかったな」


「いいさ」


ゴットハルトさんは退室していった。


「咲楽ちゃん、ごめんね」


「なにか用事があったって、聞きました」


「まぁね」


「何か聞いても良いですか?」


「まだ内緒」


「内緒ですか?」


「そう。内緒。もう一周行っとく?」


「そうですね。行っておきます」


「ちょっとコースを変えようか」


「どこに行くんですか?」


「みんな行ってるよ」


どこだろう?


連れていかれたのは、王宮の尖塔の1つ。


「ここって?」


「お楽しみ。さぁ、頑張って上がろうか」


「え?どこまで?まさかてっぺんまでですか?」


「咲楽ちゃん、俺はそこまで鬼じゃないよ。2階分だね」


「みんな行ってるって本当ですか?」


「本当だよ」


覚悟を決めて、階段を登る。2階分上がると、そこにはエレベーターがあった。


「乗るよ」


「仮合わせはまだ大丈夫でしょうか?」


「今、三番馬車位でしょ。もう少しなら大丈夫」


最上階は展望室のようになっていた。


「あ、スサンヌ様」


「サクラ様もいらしたの?綺麗ですわよ、ここからの景色」


「本当だ。スッゴい綺麗」


少しの間眺めていると、スサンヌ様が言った。


「サクラ様、(わたくし)はそろそろ失礼いたします。仮合わせの時間がもうすぐでしょうし」


「はい。またあちらで」


スサンヌ様とお別れして、もう少し、景色を眺めていた。


「あら?シロヤマさん?」


「あ、アリスさん」


「今日は交流会だったっけ?私は行かないけど、何人か魔術師も参加するわ」


「どうして?」


「風属性の魔術師よ。私もメンバーの一人だけど」


「フルールの御使者(みつかい)の馬車に乗るんですか?私、アリスさんも御使者(みつかい)に選ばれるって思ってました」


「風属性の魔術師は選ばれても外されるのよ。各馬車に2人ずつだから、全部で10人要るでしょ?」


「そうなんですか?」


「咲楽ちゃん、そろそろ行くよ」


「はい。アリスさん、失礼します」


「相変わらず仲が良いわね。楽しんできてね」


「ありがとうございます」


尖塔を降りて、部屋に戻る。


「疲れました」


「マッサージしてあげるからね。あぁ、呼んでるね。行っておいで」


「はい」


フィッティングの所に行くとこの前の奥さまと、ブランさんが待っていた。


「遅くなって申し訳ありません」


「大丈夫ですよ。天使様。合わせてしまいましょうか」


「はい」


ブランさん達に手伝ってもらって、仮縫いの衣装を身に付ける。


「あら。ここは手直しがいるわね。書き留めておいてね」


「はい」


いったいどこの手直しなんだろう?その後も色々と奥さまに言われて、ブランさんがメモを取っていく。


「天使様、噂は聞いておりますよ。黒き狼様とデートなさったんですって?」


「どこから?って、隠れたりはしませんでしたし、普通に歩いてましたからね」


「仲睦まじくて、見ていた者がほっこりしたって言ってました」


「恥ずかしいです」


「どうです?フルールの御使者(みつかい)の後、この衣装で結婚式など」


「それは……」


「余計な事でしたかしら?」


「いえ。ごめんなさい」


「天使様が謝られることなんてありませんよ」


「はい」


「サクラ様、大丈夫ですか?」


「さっき、尖塔に登ってきたから、少し疲れたのかもしれません」


「あそこに登られたんですか?街並みが綺麗でしたでしょう?」


「はい。とても綺麗で、朝日の昇るときとか、夕日の沈むときとかも綺麗だろうなって思いました」


「そう言われてみれば、そうですね」


「問題は朝日の時はまだ暗いだろうし、夕日の時は夕食時なんですよね」


「確かにそうですね」


フィッティングは無事に終わった。初めて衣装を着たけど、オフショルダーのドレスだった。


「これにオペラグローブを付けていただきますからね」


「オペラグローブって肘丈以上の手袋でしたっけ?」


「そうですよ。よくご存じですね」


「そういうのって好きなんです」


フィッティングから戻ると、すでに、セッティングが済んでいた。


「サクラちゃん、おかえり」


「お衣装、どうだった?」


「あのデザイン少しずつ違うらしいわよ」


「一番馬車は白一色で、だんだん色が増えるそうでしてよ。(わたくし)のはアクセサリーが色付きでしたわ」


「私は胸の辺りの刺繍にも色が入っていたわね」


「そうね。私のは胸の下辺りまでね」


「私のはお腹の上辺りまでです」


「サクラちゃんのは真っ白でしょ?」


ローズさん、ルビーさん、スサンヌ様、ユーフェさんに取り囲まれた。


「皆様、お疲れさまでございました。昼食をご用意いたしました。御使者(みつかい)様同士、ご歓談をしていただいて、親睦を深めていただければ幸いです」


ゾーイさんの声が聞こえた。


「そういえば、風属性の魔術師も紹介されるらしいわね」


「えぇ、何人かこの会場に来てるわね」


「騎士様達は来ないんですって」


「ほら、通常業務がありますから」


「ユーフェ様、ヘリオドール様がお気に召されたって聞きましたわよ」


「きゃあ、スサンヌ様、言わないで下さい」


「あら?ヘリオドール様って婚約者って……」


「ねぇ、サクラちゃん」


「居ないって聞いてますよ」


「トキワ様と仲がいいもんね」


「遊びにいらしたりするの?」


「あまりないです。大和さんはほぼ毎日会ってるようですけど」


「ほぼ毎日会ってる?」


「ゴットハルトさんと後数人、毎朝一緒に走ってるらしいです」


「あぁ、結構長い時間走ってるってライル様が言ってたわね」


「1/3刻位だそうです」


「サクラちゃんは走って無いのよね?」


「走ってません」


「数人ってどなたなの?」


「聞いているのは、ゴットハルト・ヘリオドール様、エスター・パイロープ様、ダニエルさん、アッシュさん、ラズさん、エイダンさん、シンザさん、カークさんですね。ダニエルさんも貴族だって言ってたような?」


「ダニエル・アジュール様でしょ?。本人が凄く嫌がってたわ。その名前で呼ぶな~。僕は冒険者だ~って」


「アジュール?ヘリオドール様の隣の領でしたわね。少し前に何人かを保護していたって、話題に上がっておりましたけれど」


「サクラちゃんは名前で呼んでるわよね」


「最初にそう呼んでいいって言われたので。私も言ったんですけど、呼んでくれないんです」


「ヘリオドール様はそこはきっちり分けてるわよね」


「トキワ様と兄弟みたいだけど」


「あぁ、そんな感じ」


「兄弟ですか?」


「いつも仲がいいじゃない。友人って言うより、兄弟って感じ」


「どっちがお兄さん?」


「トキワ様かしら」


「トキワ様って、見守ってるって感じがするのよね。お兄さんって感じ」


「ヘリオドール様もそんな感じがするわ」


「気を使ってくださって、色々と話してくださるんです」


「ヘリオドール様ってそんな感じよね」


「サクラちゃんにも話しかけてるわよね」


「あぁ、私のは、大和さんに頼まれてるみたいです」


「頼まれてるってどうして?」


「私って、大和さんから見たら危なっかしいらしくって」


「危なっかしいって言うか」


「見ててハラハラするときはあるわね」


「サクラさんってしっかりしてますけど?」


「特に施術師関係になるとね」


「しっかりしすぎて、余計にハラハラすると言うか」


「必要な事しか言っていませんけど」


「分かるのよ。分かるんだけど、ねぇ」


「睡眠不足とか、ライル様が先生に叱られたみたいになっていたわね」


「はい。すみません。気を付けますってね」


「ライル様とは、フリカーナ様ですわよね。それは確かにハラハラすると言うか」


「でもサクラさんってきちんと叱ってくれますよね。頼りになります」


5人で食べながら色々話した。スサンヌ様の学園時代のお話では、「学園生に身分の区別無しとは言われておりますけど、やはりねぇ。身分の下の者から上の方へは話しかけ難いですわね。そんな事を気にしない剛胆な者もおりますけれど」と言う話を聞いた。やっぱりそんなものなんだ。


「天使様」


「エリザベート様」


「いいかしら?」


「はい」


「シャルロッテ様が、天使様に伝えてくれと。これを」


手紙を渡された。


「出来れば、サファ侯爵様にも見ていただきたいの」


(わたくし)達、シャルロッテ様とは、手紙のやり取りをしておりますけれど、どうしていいのか分からなくて」


「天使様はサファ侯爵様と、お話しされておりましたでしょう?」


「分かりました。失礼します」


少し離れた所で、手紙を読む。予想通り、光神派についてだった。





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