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異世界転移って本当にあるんですね   作者: 玲琉
同棲開始
19/664

16

翌日起きたら隣に大和さんが座ってた。何で座ってるの?


「おはようございます」


「おはよう。今朝は雨が降ってるからね。ランニングは辞めてストレッチだけで終わらせた。で、咲楽ちゃんが寝てる間に設計図を仕上げた」


「魔力切れはもう良いんですか?」


「怠い感じはなくなったよ。魔力全回復したかどうかはわかんないけど。そういえばみんなどうやってそう言うのを計ってるのかな?」


そういえば……


「スティーリアさんが国民証を見せてくれたとき、なんか書いてあったような?あんまり覚えてませんけど」


「俺は見てなかったな。女性の胸元を見つめるのはマナー違反だろ?そう言えば国民証っていつ貰えるんだろうな。謁見が終わったら、って言ってたけど」


そんなことを話しながら、階下に降りる。


朝御飯を手早く作って二人で食べる。


「大和さん、今朝はコーヒーは?」


「咲楽ちゃんが寝ている間に飲んだよ」


えぇ、見たかった。


「大和さんがコーヒーを淹れてるの、見たかった……」


思わずそう呟いたら、笑われた。


「なにそれ?」


だってカッコよかったし。でもそう言うのもなんとなく恥ずかしくて、黙ってた。


大和さんの書いた四阿(あずまや)の設計図を見る。木材の寸法なんかもきっちり書かれてた。


「凄い。これ、大和さん、全部計算したんですか?」


「大体4.5畳位で考えたからね」


ん?4.5畳ってどのくらい?


「面積にして8.2㎡。大体だから一辺3m位かな。本当はちょっと違うけどね。計算しやすくしてみた」


へぇ。そうなんだ。私の部屋はフローリングだったからそう言うの、分かんない。


「まぁ、畳も色々サイズがあるから。異世界なんだし、その辺はいいかなって」


そんな話をして、いつもよりゆっくりしたら、お掃除をして、それぞれの部屋で過ごすことになった。私は白衣のアレンジの続き、大和さんは剣のお手入れをするんだって。


雨の降る中、静かな時間が流れる。


コンコン。


ノックの音がした。ドアを開けると大和さんが居た。


「咲楽ちゃん、魔物についての本があるって言ってなかった?貸してくれる?」


「私も一緒に見たいです。これ、もう終わりますから下で待ってて貰って良いですか?」


シチューもどうなったかな?ホットキルトを被せて置いてあるんだけど。


部屋を片付けて階下に降りる。お鍋のシチューの様子を見てちょっと味見。でもこれ、シチューって言うのかな?ブラウンソースは入ってるけど、赤ワイン煮込み?

食べる前に味を整えたら良い感じかな。


「お待たせしました」


大和さんの横に座る。


「何かしてきた?」


「今日のお夕飯の仕込みって言うか、様子見を」


「味見でもしてきた?」


え?まさかっ。付いてたり、とか……。


「付いてないよ。良い匂いはするけど」


魔物の本を見ようと思ったんだけど、もうすぐお昼かな?


「大和さん、先にお昼、食べちゃいます?もうすぐお昼っぽいし」


大和さんが時計を見る。あ、あの腕時計、してる。私が時計を見ているのに気付いて大和さんが言った。


「時間時間で動く癖がついててね。ここじゃ必要ないんだろうけど」


「ずいぶん使ってるんですか?」


「10年くらいかな。自分で買った。丈夫だから長く持つぞって言われてね。狂いも少なくて重宝してる」


「懐かしかったりします?」


「まぁね。もう戻りたくない気持ちと、また戻りたい気持ちがあるってところかな。平和なときを過ごしていたい、緊張の日々から抜け出せて良かったって言う気持ちと、忙しくて緊張の連続だったけど、充実感があった日に戻りたいって気持ちもある。でもまぁ今は、咲楽ちゃんと一緒にいたいかな」


私は大和さんが過ごした日々を知らない。でも確かに傭兵時代の大和さんも、今の大和さんの中に居るんだよね。


3の鐘が鳴った。あ、お昼ご飯。


動いてないから、お昼ご飯は軽めにして、魔物についての本を開く。一番最初はウサギさん?でも凄くカラフル。パステルカラーでもこもこしてる。


「愛玩用らしいな」


「クルーラパンって言うんですね」


「次は角の生えたネズミか。かなり大きいけど。コルスーリ、か」


「こっちは狼ですね。群れで動くって書いてある。トレープール?」


「鹿。大きすぎないか?角はヘラジカだな。グランセーってどれもフランス語っぽい名前だな」


「そうなんですか?」


「完全に一緒じゃないよ。ウサギの『クルーラパン』ってフランス語の色の『クルーラ』とウサギの『ラパン』をくっつけたような名前だし、鹿は大きいの『グラン』と鹿の『セール』だったか?をくっつけたような名前だ。全部覚えてる訳じゃないけど」


全部覚えてる訳じゃないって、でも分かるんだ、フランス語。


「やっぱり熊もいるのか。ウルージュ。赤熊か」


「猪、猿。大きさはともかく見慣れた動物ばかりですね」


「ん?この蜂は魔物だけれど殺さないようにって注意書きが……あぁなるほど。蜂蜜でも取れるのかな?ミエルピナエ」


「蜂って怖いイメージですけど、共存してるんですかね」


「かもね。咲楽ちゃんは苦手な物は居ないの?」


「爬虫類が駄目です。特に蛇。見たら硬直します」


「硬直しちゃったらダメでしょ。分かった。森で会ったら咲楽ちゃんを抱いて逃げる」


「大和さんって動物とかって退治したことあるんですか?」


「海外でならね。日本って野生動物を殺しちゃいけない所もあるし」


一日中雨だったから、のんびり過ごした。大和さんとこうやって一日中ゆっくり話したのって初めてかも。大和さんの隣は安心する。だから、かな。そのままソファーで寝ちゃったみたい。気が付いたら大和さんに膝枕されてた。


「すみません!!」


「おはようって、もう夕方だけど。疲れてた?昨日は色々あったからね。俺は幸せだったよ。咲楽ちゃんの寝顔も見れたし」


恥ずかしい。


「お夕飯の準備をしますね。ちょっと待っててください」


慌ててキッチンへ向かう。ホットキルトをはずして、ひと煮立ち。ちょうど良いとろみも出てる。塩、胡椒で味を整えてパンを薄めにスライス。パリっと焼いて。出来たビーフシチューもどきを盛り付けてテーブルに運ぶ。飲み物は……


「大和さん、お料理に使ったワインが余っちゃってるんですけど、飲んでもらえません?」


酸化しちゃったら勿体ないよね。


「どのくらい?」


「ボトルに1/4位です」


「分かった」


そう返事をして大和さんがお料理を運んでくれる。私の分の水と、大和さんのワインを運んだら準備完了。


「「いただきます」」


大和さんがグラスにワインを注いで一口。


「良いワインだね。飲みやすい。こっちにも当たり年とかあるのかな?」


当たり年?


「ブドウの出来が良くて美味しいワインが出来た年の事」


「そうなんですね、私全然知らないです」


「飲む人間でも分かってない事あるよ。知らなくても良い事もあるし」


お酒に関しては全く知らないんだよね。


「これ、ビーフシチュー?美味しいね」


「もどきです。そもそもこのお肉も牛じゃないかもしれないし」


「そう言われればそうか。鑑定の魔法とかもないみたいだし、分からないな」


食べ終わってソファーに移動。二人でまた、魔物の本を見る。


と、大和さんが次のページを開いたとたんに本を閉じた。


「これは、咲楽ちゃんは見ない方がいいかな?」


「何が載ってたんですか?見せてください」


「咲楽ちゃんの苦手な物」


「分かりました。絶対に見ません」


それってアレだよね。絶対に見たくない。


そのページを飛ばして、最後の方のページを開く。


「こんなのもいるんだな」


そこに載っていたのは、いわゆる地球の神話に出てくる魔物。ユニコーン、グリフィン、ヒッポグリフ、ドラゴン、他にも、シーサーペント、ワイバーン、クラーケン、スキュラ、アラクネ。この辺は王都の周りにはいなくて、もっと辺境の方にいるんだって。


「明日は絶対に護る気で行くけど、油断はしないで。多分木を伐っているときは無防備になるから、十分に気を付けてね」


「はい」


「それからこれ、一応持っておいて」


渡されたのは大振りのナイフ。


「絶対に鞘を外すな。だけど、使うときはためらわずに使え。いいね」


真剣に言われたから、私も真剣に頷いた。


「けど、これ、どうしたんですか?」


「俺の部屋にあった。後、解体ナイフかな?刃の薄いナイフもあった」


「大和さんってもしかして……」


「解体?出来るよ」


本当に傭兵ってそこまでするものなの?


「そろそろ……」


「お風呂入って寝ます?」


「そうしようか」


まず大和さんがお風呂に行く。私は明日の服の準備。やっぱりパンツスタイルだよね。


大和さんがお風呂から上がってきた。


「咲楽ちゃん、お風呂空いたよ」


そう声をかけられて、私もお風呂に行く。


明日、森に行くってどんなところだろう。魔物がいるって聞いたけど、どんなのがいるのかな?


ちょっとワクワクしてる。不謹慎かな?


お風呂から上がって寝室に入る。あれ?大和さんがいない。自分の部屋かな?


大和さんの部屋からシャリン、という音が聞こえた。なんの音?


「大和さん?」


金属っぽい音が聞こえてすぐにドアが開いた。その手には剣。あれ?いつものより太い?


「多分これはバスタードソードと呼ばれるものかな?ロングソードかも?長さと重さでは判断つかないな」


へぇ。


「なんか色んな種類の剣が用意されてた。見えてた4振りの剣だけじゃなくてね。使えないのもあるけど。一番得意なのは双剣だからそれにするかな」


「大和さんって日本にいるときは二刀流だったんですか?」


「舞の関係でね」


私は剣の事なんて分からない。けど、大和さんが剣を2本持って、それを使うのを見てると、凄いと思う。綺麗というか、目が離せなくなる。でも、良く考えなくても左右別々の動きをするって大変なんじゃ……。


剣を仕舞った大和さんがこっちに来た。


「そろそろ寝る?」


「大和さん、緊張しません?」


「久しぶりの緊張感はあるけどね。どっちかというとワクワクしてる」


「私もです」


二人でベッドに横になる。


「結局さっきは何をしていたんですか?」


「明日の準備。あ、そうそう。革鎧って言うのかな、胸部保護のプロテクターもあった」


「そうなんですか?私の方にはなかったですけど」


「ほら、魔法使いって前線に出ずに後方で遠距離攻撃ってイメージだし」


「大和さんってラノベって結構読んでたりしました?」


「あぁ言うのってさらっと読めたりするから。男子衆(おとこし)の若いのとかが持ってたし、借りて読んでた。咲楽ちゃんは?」


「私は友人が貸してくれたり、図書館で借りたりしてました。息抜きにちょうど良くて」


その日はワクワクが勝ちすぎてなかなか眠れなかった



ーー異世界転移15日目終了ーー

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― 新着の感想 ―
[一言] 武術やってる人の素振りを見ても綺麗とは思えないけど剣舞とか舞踊とかやってる人が振ると綺麗に見えるから不思議だな。
2021/09/14 18:27 退会済み
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