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作中、剣舞について何だか語ってますが、全て作者の妄想です。


生暖かくご覧ください。

翌日、緊張しているのかいつもより早く目が覚めた……気がする。


とは言っても、常磐さんは既に居ないみたいだし、時間は分からない。


けど、窓を開けても、常磐さんが居なかった。5分位待っていると常磐さんが戻ってきた。


そのまま型稽古に入る。今日も剣舞は無しって聞いてる。型稽古が終わると、そのまま座禅を組んで集中しだした。しばらく見ていると常磐さんの身体からまた赤い龍が飛び出した。赤い龍は直ぐに常磐さんの身体に戻った。その時赤い龍と目があった感じがした。襲ってきたのは凄い威圧感。


「きゃあぁ!!」


思わず悲鳴をあげて座り込んでしまうと、常磐さんがこっちを見た。


「どうした。大丈夫だったか?」


常磐さんが飛んできて聞いてくれた。


「大丈夫です。けど、あれは何だったんですか?」


「あれって?ちょっと先に汗を流してくる」


常磐さんは答えずに行ってしまった。


戻ってきた常磐さんは、何も言わずにソファーに座る。私も何も言わずに髪を乾かし始めた。


「何を見た?」


常磐さんが聞く。


「常磐さんの身体から赤の龍が出てきて、赤い龍は直ぐに常磐さんの身体に戻ったんですけど、目が合った感じがしたんです。あれは何だったんですか?」


「あれなぁ。俺は見えないんだけど緋龍(ひりゅう)と言われるモノだな」


「り、龍?え?」


分御霊(わけみたま)だよ。俺の流派は色々特殊でな。ああ言うモノに好かれやすいらしい。といっても日常に問題はないし、特に何かあるって訳じゃないんだが」


あの見えてたのって。桜とかブリザードとか紅葉とか……


「ああ言うものは普通の人には見えないはずなんだ。咲楽ちゃんには見えてたけどな。あれを観客にはっきり幻視させる剣舞を舞うことによって、神に舞を奉納する。龍はその媒体みたいなもんだ、と言われる。俺には見えたこと無いけどな。ご先祖様には見えた人も居たらしいけど」


「え?」


「その眼だよ。ウチの一族ではたまに生まれる、(ハシバミ)色の瞳。その眼を持つ者は人の見えないものを見ると言われてる。巫女なんかに近いのかもな。まぁ、気にすることはないよ。何をするわけでなし。龍は集中すると出てくるだけと言われているだけだから」


ものすっごく気になります。


「俺の流派な、元は剣舞を神に奉納していたらしい。その内『()()に通じる』とか言い出したのが居たらしい。それからだな。実戦に放り込まれるようになったのは」


えぇっと、元は舞だったの?でも騎士さん達も認めてたけど。


「実戦で通用はするけど無双出来るほどじゃないよ。傭兵時代も銃があったから通用したようなもんだし。剣だけで戦える時代でも無かったしね。体術は通用したけどね」


銃、ですか。そう言えば傭兵団に放り込まれたって。


「そろそろ朝食に行った方がいいな」


うん、そうですね。龍についてははぐらかされた気がします。


朝食に行ったら、知らない人に取り囲まれた。えぇっと。どちら様?


「本当にお小さいですわね、それにずいぶん小柄と言うか」


「でも素材はいいわよ」


「髪は編み込んだ方がいいわね」


「メイクはあんまり濃くない方がいい感じ?」


「パートナーはこちらの……ずいぶん背が高いわね」


「こちらの方はパートナーと言うより、姫を守る騎士って感じね」


「衣装を見せていただいたけど、そんな感じだったわよ」


きゃあきゃあと騒がしい。


「すまない、お嬢さん方。朝食だけ摂らせていただいても?」


常磐さんが言ってくれたんだけど……


「お声も良いわ~」


「これはお嬢様方が放っておかないわね」


「あら、こちらのお嬢さんはご子息様方が五月蝿いわよ」


「しっかりガードしなきゃね」


なんだか頷いていらっしゃる。


朝食をいただいたらそのままお姉さま方に拉致られた。


それからはお風呂に入れられ、髪を洗われ、マッサージをされ、髪を結い上げられ、メイクをされ、ドレスを着付けられってこのドレス、刺繍が細かい。デイジーさんが喜んで刺繍している光景が思い浮かんだ。


お姉さま方はその間もおしゃべりを絶やさない。


昼食は持ってきてもらって食べた。


昼食が終わってしばらくしたらメイク直しをされ、衣装部の方々に見送られて神殿入口に行くと、エリアリール様とスティーリアさんが、常磐さんと話をしながら待っていた。


常磐さんの衣装は黒の騎士服で、袖口に翠の刺繍が入ってた。合わせと裾には赤の縁取り。肩マントの裏地は深紅。そこには私が刺繍した桜があるはず。


馬車には私と常磐さん、クォール先生とアザレア先生が乗り込んだ。エリアリール様とスティーリアさんが見送ってくれる。


お姉さま方は後で王宮に戻るんだって。


クォール先生から馬車を降りるときの注意を聞かされた。


「まず私とトキワ殿が降ります。トキワ殿は私のやり方を見てシロヤマ嬢のエスコートをお願いしますね」


「シロヤマさんはドレスの裾を踏まないように気を付けて。ゆっくりでいいからね。トキワさんの手をとってゆっくり降りるのよ」


やがて馬車は、王宮の入口に着いた。クォール先生と常磐さんが先に降りていく。

馬車に二人になった時、アザレア先生が


「多分貴女が降りたらちょっと凄いことになるわよ。覚悟はしといてね」


緊張することを言わないでください。


「大丈夫よ。私たちも居るしね。ほら、笑顔」


笑顔、作れているのかな。


やがてアザレア先生が降りていく。


「咲楽ちゃん」


常磐さんが私を呼んで手を差し出してくれた。


その手を取って、ゆっくり降りる。


途端に周りがざわついた。クォール先生とアザレア先生が私達の側に来てくれる。


「用意は良い?行きましょうか」


ザワザワした雰囲気を感じながら、クォール先生とアザレア先生の後をついていく。やがて応接室らしき所に通された。


「しばらくこちらでお待ちください」


案内してくれた人が一礼して去っていく。


その後侍女さんらしき人?が紅茶を出してくれた。


常磐さんが


「こう紅茶が続くとコーヒーが飲みたくなるな」


と言った。ブラックのコーヒーとか飲みそう。私はコーヒーは苦手なんだよね。


4の鐘がなる少し前、案内の人が来てくれた。


常磐さんのエスコートでクォール先生達の後をついていく。


いくつかの角を曲がって、10分位歩いたかな。やがて豪華な扉の前に着いた。


「異邦人のヤマト・トキワ様とサクラ・シロヤマ様をお連れしました」


「サファ様とモース様はこちらからお入りください」


「入れ」


重い声が響く。


扉が開く。中には沢山の人がいた。ザワザワと言う声が聞こえる。


「咲楽ちゃん、行くよ」


声を掛けられて歩いていく。クォール先生とアザレア先生が見えた。


教えられた印のところで止まり、礼をとる。


ザワザワした声が止んだと思うと、壇上に3人の人が現れた。


「許す。顔をあげよ」


常磐さんに一拍遅れて顔をあげる。


壇上の人が王様と王妃様かな。もう一人はどなただろう?


「よくいらした。私はコラダーム国国王、ディートリヒ・ドゥ・コラダームと言う。貴殿方の名前を教えていただけまいか」


「私はヤマト・トキワと申します。お目にかかれて光栄に存じます」


「私はサクラ・シロヤマと申します。お初にお目にかかります」


「この度は私共のためにお時間を割いていただき、ありがとうございます」


二人でゆっくりと礼をする。


「この後お時間はありますか」


王妃様が聞く。


「はい」


魔法属性のことなどを質問されて、謁見は終わった。


「二人とも堂々としてたじゃない。良かったわよ」


謁見室の近くの控室に案内されると、クォール先生とアザレア先生が来てくれた。


「緊張しました」


私が言うと、


「上出来ですよ」


とクォール先生に誉められた。


この後王様たちとお茶をする予定らしい。


「貴方達、これから大変よ。何人かの貴族の方に婚約の打診をされたもの。『あの二人は婚約者同士です』って言っといたけどね」


「煩わしいですね」


常磐さんが言う。


そこに案内人の人が来た。


「トキワ様、シロヤマ様、どうぞこちらへ」


素敵なバラ園に案内された。


「こちらでお待ちください」


凄いバラ。赤、白、ピンク、黄色、オレンジ。カラフルな色の洪水でめまいがしそう。


そこにさっきの3人、王様と王妃様ともう一人の男の人が来て、お茶会が始まった。


「先程は失礼した。改めてディートリヒ・ドゥ・コラダームだ。こちら王妃のヴィクトリア・ドゥ・コラダーム、これが王太子のシグムント・ドゥ・コラダームだ」


「ではこちらも改めまして、常磐 大和(トキワ ヤマト)、こちら風に言うとヤマト・トキワです」


「私は白山 咲楽(シロヤマ サクラ)、こちら風に言うとサクラ・シロヤマです」


「お二人は異邦人なのですよね。お話を色々と聞かせてください。トキワ殿はこちらに来る以前は何をされていたのですか」


王太子様が聞く。


「実家が武術の道場でしてね。その手伝いをしておりました」


「ではお強いのでは?」


「そこまででもありませんよ」


「シロヤマ嬢は何をされていらしたのですか」


「私は学生でした。こちらの施療院の様な所で働くための、専門の知識を持った人を育てるための学校で学んでおりました」


「そんな学校があるんですね。貴族の通う学園のようなものでしょうか」


ほぼ質問は、日本で居たときの話となった。


「お二人はあちらにいらしたときから、お知り合いだったのですか?」


「いえ、こちらに来てからですね。知り合えたのは、幸運だったと思いますよ。転移させられた、と言うのはいささか不可解な出来事ですけどね」


常磐さんが答える。


「こちらに来られて、不自由なことはございませんか?」


不意に王妃様から聞かれる。


「いえ、皆様に優しくしていただいて、不自由なく過ごさせていただいております」


「おぉ、そうだ。二人ともこれからどうするつもりだ?こちらとしてはトキワ殿には騎士団に所属していただいても良いと思っている。シロヤマ嬢は王宮魔術師に入っていただくのも……なんなら貴族と言う身分を用意するが」


「お気持ちはありがたいのですが、爵位は御遠慮申し上げたい」


常磐さんが答える。私も貴族なんて荷が重いし、自由で居たい。


「お二人は婚約者、と言うことでよろしいのですか?」


王太子様に聞かれた。


「対外的にはそういうことにしております。いかんせん知り合って間もないので今、お互いの事を理解している途中ですね」


こういうのは気恥ずかしい。


「そうそう、この後軽いパーティーを行う予定なので、参加してくれないか」


王様からのご要望をいただきました。


王妃様が眼を輝かせる。


「あら、じゃあ、シロヤマ嬢のお召し替えをしなきゃね」


はい!?このドレスで十分なんですが。


「そうだわ。私のドレスを少し手を入れれば良いですわね。シロヤマ嬢には何色が似合うかしら。楽しみね」


えぇっと。これは断れないのかな。


「お二人は婚約者同士と知らしめておかないと、貴族の子息、令嬢が大変でしょうね」


王太子様がそんなことを言う。常磐さんはモテるだろうな。私はそんなことはないと思うけど。


「実際に何件か申し込みが来ているよ。シロヤマ嬢の方が多いけどね」


どうして?!常磐さんを見る。常磐さんは少し不機嫌に見えた。


「そろそろお開きにしようか。シロヤマ嬢の準備もあるし」


王様が言われたけれど、どうすれば良いの?侍女さん達が寄ってきて、常磐さんと別の部屋に案内される。


「あらあら、そんなに心細そうにされて。大丈夫ですよ。トキワ様にも驚いていただきましょ」


侍女さん達に言われ、髪を解かれる。髪の結い方を変えるみたい。


「サラサラのお(ぐし)ですね。あら?こちらのアクセサリーは……これは外しちゃダメね。神殿の祈りの力が込められてるわ」


このブレスレット、そんな効果が有るの?


「それにこれってトキワ様の色でしょう。愛されてますね」


少し気恥ずかしい。そこにアザレア先生がやって来た。


「シロヤマさん、大丈夫?疲れてない?」


「モース様。今からシロヤマ様のお召し替えですのよ。王妃様がご自分のドレスに手を入れられて、御下賜されると」


侍女さん達が言う。


「トキワ様のお衣装は黒だったからどんな色でも合うわね」


なんだかどんどん決められていく。


緑と青のドレスだった私は鮮やかなレモン色のドレスを着させられた。


髪もさっきとは違う形に結い上げられた。


「後はトキワ様を待つだけね。緊張してる?」


アザレア先生が気遣ってくれるも


「大丈夫よ。ダンスは既に合格点なんだし、この分だとうるさい貴族なんかも寄っては来ないでしょう。私たちも側にいるわよ」


やがて時間となって常磐さんが迎えに来てくれたんだけど、動かない。え?どこか変?


「よく似合ってる」


照れたようにそう言って、常磐さんはそっぽを向く。


「はいはい。照れるのは後でね。しっかりエスコートしないと、うるさい貴族連中にあっという間にかっさらわれるわよ」


アザレア先生の言葉に常磐さんが手を差し出す。


「かっさらわれてたまるか」


ボソッと言った言葉は私には聞こえなかった。


パーティーの会場に入ると貴族の方達に取り囲まれる。


挨拶したいってこれ何人いるの?


5の鐘が鳴る時間でもあるので、会場には軽食も用意されていた。


クォール先生とアザレア先生に守られながら軽食コーナーに移動する。そこでも貴族の御子息や御令嬢が待っていて一斉に話しかけられた。


常磐さんは御令嬢に、私は御子息に。


そう、男の方々に取り囲まれた。怖い。助けて。誰か。常磐さん。どこ?


「悪い。お嬢さん方退()いてくれ」


常磐さんの声が聞こえた。ご子息方も道を開けてくれる。


気が付いたら常磐さんに抱き締められていた。


「失礼。彼女はこういう事態に慣れていないのです。申し訳ない」


「いけないわ。お顔が真っ青よ。少し休んでいた方がいいわ」


聞いたことのない声が聞こえた。


そこには真っ赤なドレスを身に纏った御令嬢が居た。


「ちょっと、誰か彼女を椅子に座らせてやって」


ウェイター?の方に案内され、会場の隅の椅子に座らせてもらう。


先程の御令嬢もついてきた。


「ごめんなさいね。あの人たち、何とかして貴方方と繋がりを持ちたいのよ。こんな可憐な方を怖がらせるなんて、なっちゃいないわね。あぁ、私はサファ家の娘、ヴィオレット。よろしくね」


クォール先生の?


「そう。ウチは侯爵家なのよ。今回お父様がそちらにいらしたでしょう。こういったことは得意だからって、ウチに話が回ってくるのよね」


なんかごめんなさい。


「あぁ、気にしないで。お知り合いになれてとても嬉しいのよ。シロヤマ様の事はアザレア様に伺ってて、是非お友だちになりたかったの。もちろんトキワ様もね」


ヴィオレット様はそう言って笑った。


「何か召し上がる?ちょっと、見繕って持ってきてちょうだい」


他人への指示の出し方も手慣れている。


私は食欲がなくて、飲み物だけ頂いた。


「トキワ殿」


クォール先生の声が聞こえる。


「お父様、今、彼女からトキワ様を引き離されますの?」


ヴィオレット様が仰った。


「少し話があるだけだよ」


常磐さんはクォール先生に連れられて行ってしまった。


アザレア先生がやって来る。


「ヴィオレット様、申し訳ございません」


「こういったことはあちらの世界には無いんでしょう」


「有るのはあるんですが、私には縁遠いものでした」


そう答える。


クォール先生と常磐さんが戻ってきた。


「参った。陛下と王妃様が踊られた後、トキワ殿とシロヤマ嬢のダンスが決まったよ」


え?


「それって実質ファーストダンスの扱いじゃない。お父様?!」


「とは言ってもな。実際、問い合わせが凄いんだそうだ。このパーティーは略式のものだし、上位貴族しか居ないけど、シロヤマ嬢のデビュタントのような感じになってしまった。しかも王妃様からドレスを賜ったと言うのも広がっていて、ざわついて居るよ」


拍手が起こった。両陛下のダンスだ。私、座ってて良いの?


「少し休んで顔色も良くなったみたいね。そろそろ立っていましょう」


アザレア先生に促され、立ち上がる。常磐さんが素早く寄ってきてくれた。


「大丈夫か?」


「大丈夫です」


「無理は……」


「してません」


笑顔を作ると頭をポンポンとされた。


やがて、両陛下のダンスが終わる。


「「行ってらっしゃい」」


アザレア先生とヴィオレット様に声をかけられ、常磐さんに手を取られて中央に進む。


ダンスは教えていただいたワルツ。ゆったりと曲が始まる。


笑顔を作って。リズムを聞いて。早くなりすぎないように。下を向いてちゃダメ、顔をあげて。


顔をあげると常磐さんがこっちを見ていた。お互いに微笑み合う。


その時周りがザワっとした。何だろう。


やがて曲が終わり拍手を頂いた。


ヴィオレット様が常磐さんに話しかける。


「そのマントの裏の刺繍は何?」


「裏?」


「さっきダンスを踊っていたときに、見えたのよ」


常磐さんは刺繍の事に気が付いてなかったみたい。


「それは桜です。私達の国の花です。国の象徴でもあります」


私が答える。


「それってあれか?咲楽ちゃんが刺繍してたやつ」


私は頷いた。


「サクラってシロヤマ様の名前と一緒よね。素敵ね」


ヴィオレット様が言う。


それからは賑やかに、でも穏やかに時は過ぎていった。


やがてパーティーは散会し、神殿に戻……れなかった。


「今日は王宮に泊まっていかないかい?」


お暇の挨拶の時に王様がそう言われたからだ。神殿には連絡してあると言う。


客室に案内された。広い。いつも使ってる部屋の3倍はある。王宮の侍女さんに手伝ってもらって、着ていたドレスから楽なワンピースに着替えた。その後お部屋の探検。こう言うのってワクワクする。でもこれ、明らかにカップル用の部屋だよね。


しかもベッドルームもあったんだけど……。


ベッドが一つだった。キングサイズより大きいベッド。


「咲楽ちゃんはベッドを使って、俺はソファーで寝るから」


「ダメですよ、そんなの。私がソファーで……」


「女の子をソファーでなんか寝かせられない」


ここで「じゃあ一緒に寝ましょ」と言うほど、物知らずじゃない。


「とにかく、今日は疲れたでしょ。咲楽ちゃんがベッドを使いなさい」


「でも……」


「でも、じゃない。でないと襲うよ」


割りと真剣に言われて、急いでベッドに潜り込む。


「側に居て良い?」


常磐さんに言われて、頷く。


私が寝付くまで、常磐さんはいろんな話をしてくれた。


(うち)で修行していた頃の苦労話だとか、傭兵部隊に居たときの仲間の話、剣舞を舞っている時の話。


「俺の中に居るのは龍じゃない。あれはそう言う形をとっているだけだ。剣舞が5番あると話しただろ。『春は翠龍(スイリュウ)、夏は緋龍(ヒリュウ)、秋は黄龍(オウリュウ)、冬は黒龍(コクリュウ)、四季の舞の時はすべてが合わさって白龍(ハクリュウ)となる』そう言われている。そこまで集中し、気を高めてあの剣舞は完成するんだ。実際にどう動いて敵を斬るかを理解しないと、舞に気は込められない。習い始めたときにそう言われた。今はそこまで制御できていない。咲楽ちゃんには高めた気が龍に見えたんだな」


そんなことを話してくれた。


分かったような分からないような……。


眠りに落ちる寸前に、額に何かが触れた気がした。



ーー異世界転移11日目終了ーー

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― 新着の感想 ―
[良い点] 定番の着せ替え人形化♪ 喜ぶ王妃様(笑) [気になる点] トキワさんの演舞の順番は春→夏→秋→冬ときて何かになるのかな? え~と、龍の舞? [一言] 王太子が絡むかと思ったけどね。 ヤッ…
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