表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

第七話 ブラック給料日

 勇者が奴隷たちを雇い入れてから早一月。勇者は社員達をホールに集め、日課の報告会を開いていた。この日は休みの社員も出席させられ、報告会の最後に、勇者は重要な話があると前置きをしてから茶封筒の束を机に並べた。



「よろこべっ……! これから給料を配る! 呼ばれた順に取りに来い!」


「給料……?」

「給料だって……」


「あ~、まずはニール!」


「は、はいっ!」



 ニールが膨らんだ茶封筒を受け取り、戻って中身を確かめてみると、何枚もの銀貨がその中に入っていた。



「おお……」


「(くくく……)」



 感嘆の声を漏らすニール。他の社員達も同様の反応を示す。それを見て勇者はほくそ笑んだ。



「(気づいてねえ気付いてねえ……馬鹿な社員共め。誰一人、給与明細がないことに気が付かねえんだからな……!)」



 そう、勇者は確かに給与は払った……しかし、その内訳に関しては一切明かしていなかったのである。



「(基本給は相場の最低っ! さらにそこから食費、寮費、職員会費……いろいろ差っ引かせてもらったぜ……もちろん職員会費の使い道を決めるのは俺っ……! ククク、これが給与の節約方法よ……!)」



 全員に給与を手渡し、まるで慈悲深い社長のようにふるまいながらも実際は必要経費のみならず用途不明なピンハネを行う悪辣な勇者……しかし社員達はそんなことに微塵も気づかず、まるで子供のように貰った金を数えながら、夕食のパンを食べていた。



「大銀貨が30枚……信じられるか? 奴隷の俺たちが、金を貰ったんだぜ」


「これ、私たちが使って良いのよね? ああ、勇者様……」



 口々に喜ぶ社員達だったが、そもそも働いたら給与が出るというのは当たり前も当たり前の大前提、それを感謝すべきこととするのは雇用者側に都合のいい理論であり、典型的なブラック企業の詭弁なのだ。だが洗脳されてしまった社員達はそんなことにも気付くことができない。彼らが解放される日は一体いつになるのか。それは未だ、わからないままだった……



第七話 ブラック給料日 終


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ここまで半信半疑でしたが、 ここからはギャグかコメディ作品として読ませていただきます笑
[一言] ……勇者側の当たり前が、この世界(若しくは奴隷)の文化と差があり過ぎて、現地の常識では普通に高待遇になっているのが面白いww 食事や物資のレベルとか、奴隷に休みとか給料とかもそうだけど、字が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ