三十話 決戦準備
短めです!
計画失敗から一週間。急ピッチで計画が練られ、ついに実行日を迎えた。ターゲットは前回から変わらず、筋肉馬鹿の女だ。さすがのあいつといえども一週間で傷の完治は無理だろう。それでも三日ほどで日常業務に復帰したというのはたいそう驚いたけど、むしろ狙いやすくてラッキーといった具合だ。事前の調査だと特に警備の人数が増えたり、ターゲットの周辺に動きがあったりはないらしい。西条の言う通り、草刈の部下たちは組織の中でも異例の対応をされているようだ。
「全員揃ったね?」
「あいよ」
「いるわ」
「はいっす」
「仰せの通りに」
僕、西条、愛美、イオ、ソラと全員集合だ。本当は愛美には念のためアキについていてほしかったが、期間の短さから結界の成立が不確実のため、なるべく近くで支えなければならないらしく、ここにきている。それならばとイオかソラをアキについてもらおうと思ったが二人とも、今回の計画への参加を熱望しているようで、断られてしまった。
協力してくれるのはすごいありがたいのだけど、これまで積極的に戦闘へ関わってくれるのは初めてだから、僕もどうやって計画しようか戸惑った。最終的にこれがダメだったらこう、といったように決めた。
「うん、よし。計画はさっき言った通りだから、みんなよろしくね」
運のいいことに今日も草刈は家にいなかったから、僕の家に全員が集合している。一室のカーペットの上に全員が座っているのは、少ししょぼいけどこれが今の全力だから仕方ない。
「あいよ。今回は頼んだぜ」
「うん、頑張るよ」
正直この計画は、事前の調査がほぼできていない。一週間だけじゃターゲットの行動を監視しきれなかったし、その身辺で何か変化が起きたかもわかっていない。組織の中で草刈の部下たちが、先週の襲撃からどんな変化をしたすらも、全くわかっていない。だからこの計画では、以前よりも更にイレギュラーの想定がされている。それもあって戦力が増えるのは助かる一面もある。
「結界、間に合わなくて申し訳ないわ」
「時間が足りてないからしょうがないよ。むしろこんなに突貫的なスケジュールを組んだのに、ここまで成立させてくれて本当に助かるよ」
「そ、それならよかったわ」
僕に愛美の能力である結界の詳細はわからないけど、不完全な状態の結界は効果が十全に発揮されない場合や、指定した条件がすり替わってしまったりするらしい。それでもないよりはマシなので、無理をいってできるところまでお願いした。
「戦闘っすか……迷惑かけないように頑張るっすよ」
イオは普段何に対しても消極的だ。何かに意欲を抱くことは少ないし、自ら能動的に動くことはもっとない。だから今回もぎりぎりまで迷ったようだけど、理由があって参加するらしい。それが何か、語ってくれるといいな。
不老不死の能力を持つイオは、死にたい、という思いがあるらしい。僕がイオと出会った時からこれは変わらない。死にたいからそう思うのか、死ねないから死にたいと思うのか。それは僕に明かしてくれていないからわからない。だからこそなのか、イオは戦闘になると人が変わり、自ら死地に飛び込んでいく。本人も気にしているようで、集団での計画的な戦闘は避けている。
「協力してくれるって言ってくれて嬉しいよ。いざというときは、好きなだけ暴れてくれて構わないから」
「いいんすか!? それは俄然、楽しみっすね……」
僕が話すと、途端に目を輝かせてにやりと舌なめずりをする。イオはパフォーマンスに波があって、気分屋だ。悪くいうと情緒不安定だったりするが、ケアはソラと協力したりして何とか対処しているらしい。以前と比べると大した進歩だ。
戦いのたびに四肢が欠損したり血をだらだらにたらす姿は、こちらからすると衝撃的な姿だけど本人はとうに慣れてしまったようである。ほんとどんな暮らしをしていたのだろうか。
「ついに計画が進むのですね。涼風さんの願いが果たされることを祈っていますね」
「ありがとう。ソラも協力してくれることになって頼もしいよ」
「まあ、お上手ですね」
パっと口を手で押さえて照れたようにする。ソラは丁寧な口調でお嬢様然とした見た目だから、性格もそうだと誤解されるけど、実際は人をからかうことが好きなザ女子高生だ。頭がものすごくいいけど、それをからかうことに使ったり訳の分からないネタを振るために使ったりするので、はたから見ればもったいないといわれがちだ。本人は何とも思ってないみたいだけど。
「みんな、僕に付き合ってくれてありがとう。明日、よろしくね」
そうして僕たちは、明日の準備をするのだった。




