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異能世界で最強と謳われる可愛くて人殺しの男の娘が裏世界で暗躍するちょっぴりえっちなセカイ系の物語はいかがですか?  作者: 独りっ子
黒き彼は月を歩む

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二十五話 不老不死と魔女

 西条の言葉がしんと静まった僕の部屋に響き、しばし沈黙が保たれた。


「ま、ってなわけで次の計画実行はそこまで間を開けないほうがいいと思うぜ」


 へらーっといつもの軽い笑みを浮かべて西条は明るく振舞った。

 西条の言葉にどんよりとしていた心が少し腫れたような気がする。今までずっと自分を信じてブレないようにしてきたから、他人の言葉を受け入れようとすると何ともくすぐったい。でもきっと、これをうまく取り入れることがまた成長につながるのかな。

 絢斗は、西条の言葉をかみ砕いて理解し、次の行動を練ることにした。


「ねえ西条、計画のリベンジはいつくらいがいいかな?」

「あん? 急に素直になりやがって気持ちわりいな」

「僕はワビに意見を聞いてるだけなんだけど。僕の性格を勝手に思い描いて妄想先走りじゃない?」


 また口が悪くなりやがって、と元気を取り戻した絢斗に西条はにやりと笑い、話をつづけた。


「俺は計画を立てるのは好きじゃねえんだ。だから、参考になりそうなことだけ言うわ。おそらくだけど、舟子さん……あ、ターゲットのことな。舟子さんの完全回復までは二週間くらいだと思うぜ」

「つまり、それまでにはリベンジってことか」

「そこは勝手に解釈してくれ」


 二人が計画を練っていると、伊緒がおずおずと口をはさんだ。


「あー、えっと。あんまはっきり言うのもあれなんすけど、実際二週間以内にやれそうなんすか?」


 その言葉に、絢斗は苦い顔を浮かべる。


「うーん、正直厳しいな。戦ってみて気づいたけど、ターゲットはやたら勘が鋭くてね、暗殺しようにも直前に気づかれかねない。でも、向こうはいくら肉体が強いといっても非能力者だからこっちの土壌で戦えれば勝算はあると思うよ。問題は、どうやって敵と水入らずの状況にするかかな」

「そこはなかなか考えるところでしょうね。向こうの方がどれだけ対応戦力を見繕ってくるかはわかりませんが、おそらく派遣される人数自体は多くないでしょう。組織は草刈さんとできるだけ関わらないようにしていますし」


 僕らの会話を聞き、西条がまとめてくれる。


「つまり俺たちは、どうやってターゲットを誘導するか、また誘導した後どう殺すのかってことを考えるわけだな」


 うーん、とまた一同揃って考え込む。その後一日、計画を考えたがとりあえずやれることからやっていくことにした。

 誘導の仕方はまた考えるとして、戦闘について考えることにする。


「ってかお前らの能力の詳細、俺よく知らねえんだけどさ、どんな感じなん?」


 思い出したかのように西条が問いかける。その言葉に伊緒たちは絢斗に視線を向ける。


「契約も結ばせてもらったしね、二人とも、いっていいよ」


 絢斗は二人に許可を出す。二人は顔を見合って、どちらから話すか作戦会議を始めた。その結果、伊緒からになったみたいだ。


「わたしの能力は前にも聞いたかもしれないっすけど、不老不死っす。煮ても焼いても死ねません」

「本当にそうなのか……組織でも耳にするけど目の前で見るとびっくりするな」

「まーわたし有名人ですから生で見て感動するのは当たり前っすよねー」

「そんな俗っぽいとは思わねえわ。一応アイドルなんだろ、大丈夫か?」


 白髪から垂れたおさげを揺らして伊緒はカッカッカと息を吐いて大きく笑い飛ばす。


「いろんなアイドルいるし、余裕っすよ」

「……ちなみにテレビに出るときもその口調なのか?」

「んー、テレビんときは気分っすね。丁寧にすることもあるし、やる気なかったら適当にって感じで。あ、でも歌はどんな時でも全力でやるっすよ!」


 ふんふん、と鼻息荒く伊緒は語った。容姿は幸薄そうな美少女だが、表情豊かで明快な様子に西条は意外性を感じた。

 二人が会話をしていると、空が口をはさむ。


「ちなみに伊緒さんは私と話すときはもっと口が悪くてタメ口ですよ」

「え、そうなの」


 タメ口、という言葉に西条が驚いていた。伊緒といえばだれにでも適当な敬語をつけて話しているというイメージが、会って間もない中固まっていた。


「ちょっと夢野、それはあんま言わないでって」


 デレデレといった様子で伊緒は空にすり寄る。


「まあこんな感じでイオとソラは仲がいいみたいだよ」


 いちゃつく二人を傍目に眺めて絢斗が肩をすくめて言う。普段からこのやり取りは見慣れていて、さいきっかーずのファンからも定番のネタとして親しまれていた。


「それは結構ことで。……んで、不老不死ってのは復活はどれくらいですんだ? 怪我して速攻回復ってわけじゃあなさそうだけどよ」


 特に関心を持たず二人のやり取りをスルーし、西条は気になっていることを尋ねた。


「えー、答えようか迷うっすねー」


 ニヤニヤと挑発するように伊緒は笑う。薄幸な美少女に可憐な表情が色づくのはなんとも魅力的かもしれないが、西条にとっては子供が揶揄ってくるようなものだと感じていた。


「まあ計画がどうでもいいなら、答えなくてもいいんだけどな?」

「……アキちゃんの為になるなら、答えてあげなくはないっすけどね。西条サンはアキちゃんの為に、動くって誓えます?」


 アキちゃん、と口に出すと同時に伊緒は真剣なまなざしを浮かべる。


「俺は楠の能力に興味がある。それと、絢斗と楠の関係にもな。だから、それを達成するためなら、動くと誓えるぜ」

「つまり、自分にメリットがある限りは協力するってことっすか?」

「そうだ。なんの根拠もなく全面的に協力する、なんて無邪気に言ったところで信じてくれねえだろ? お前ら人のこと信じられてなさそうだし」

「絢斗サンはともかくわたしは信じますよお」

「不老不死が一番嘘っぽいわ」

「えーひどいっす! 夢野、変な奴がいじめてくるー」

「よーしよしよし。変質者さんとおさらばしましょうねー」

「いや変質者呼ばわりすんなよ」


 和気あいあいと会話する彼らを満足げに眺め、絢斗は計画のことを考えていた。

 もし、イオが戦闘に加わったら。何か変わるだろうか。今まで積極的な戦闘は避けてきたけど、今回は参加してもらうべきときではないか。でも、イオは情緒不安定だしできる限りこっちからの戦闘は避けないとまた大変なことになる可能性がある。戦闘自体はできるとはいえ、暗殺向きではないし。


「んで、魔女は? どんな能力なん?」


 考え込んでいたら、話が移り変わっていたようだった。ソラは素直に答えると思ったら、どうやらそうではなかった。


「秘密です」

「……計画に支障きたしてもいいのか?」

「秘密です。戦闘向けではないですし、伝えるメリットがありません」

「茶化してるわけじゃねえってことか?」

「はい。私とて楠さんを守りたいという気持ちはありますので」

「訳アリってとこか。ま、いいんじゃねえの」


 ソラにも何か考えがあるのだろう。ソラは自分の軸を持っている思慮深い人間だから、根拠のないことはあんまりしない。何が引っかかっんだろう。正直僕はソラのことをよく理解しているとは言い難い。ソラは好奇心旺盛で興味を持ったことはなんでもやる性格だから、その時々で違ったソラを見せられる。常に変わっていく人だと思っている。

 とりあえず情報の共有が終わったところでまた計画の策定に入ることにする。


「西条も僕たちのことをそこそこわかってくれたみたいだし、また計画を詳細を練ろうか」

「あー、それなんだけど、一ついいか?」


 僕が再び計画の話をしようとすると、西条が横やりをはさんだ。なにかな、と僕は促す。


「絢斗さ、武器とか使ってみねえか?」

「武器? 僕らはまともな戦闘をしてはいけないような集団だと思うんだけど」

「昨日の時も思ったんだけどよ、結界があるなら多少はマシに戦う環境ができる。だから、暗殺以外の手段も持っておいた方がいいと思ってな」

「暗殺以外かあ。あんまり考えてなかったかも」


 絢斗は学校で身体強化の能力だと表向きには偽っている。だからたびたび武器を使うことはあるのだが、学校外では武器を使った戦闘は目立ちかねないため控えていた。戦うとしても暗殺を狙い、戦闘が長引いて敵の能力を使わせないようにしている。


「ま、適当に考えといてくれ。それじゃ、今日はここで失礼するぜ」


 それだけ言って西条は帰っていった。

 西条が帰ってからも伊緒たちと計画を練っていたが、武器を使うかどうかはまた明日決めることにした。

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