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異能世界で最強と謳われる可愛くて人殺しの男の娘が裏世界で暗躍するちょっぴりえっちなセカイ系の物語はいかがですか?  作者: 独りっ子
黒き彼は月を歩む

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十九話 二人の能力について

 何を聞いても笑顔を崩さず答えもしない絢斗にしびれを切らした西条は、とりあえず先ほど答えてもらえなかった質問を再度することにした。


「楠の能力は、何だ? アスファルトの地面をぶっ壊すなんて能力者でも簡単にはできねえよな」

「それは、計画に必要な質問?」

「ああ、大有りだね」


 んー、と絢斗は困った顔で告げた。


「正直に言えば、僕もよくわかってないんだよね」

「わからないって、今どき学園で【看破】で自分の能力を診てみらうんじゃないのか?」


 能力者が一般人にも認知されるようになった現代、子供はある一定の年齢になると能力に関する検査をする義務があった。そこでは超能力を看破する能力者が検査をしており、子供たちはそこで能力の有無や自分の能力について知ることができた。学園に通っている生徒たちは全員、能力の種類にかかわらず能力者かつ自分の能力を把握している。


「【看破】って実はそんな万能じゃないんだ。大抵の人は知ってると思うけど、一般的には強い能力ほど【看破】されにくいってのがある。アキの場合はまさにその例だね」

「あー、そうなのか。看破の能力者にも優劣はあるってことになるわけか」

「まあ、そうだね。もしかして君、能力診てもらってない?」

「さあ?」


 いつも笑ってごまかす絢斗を真似て、西条も笑った。


「そういうわけで、アキが興味をもって自分の能力について調べないとよくわからないな」

「なら絢斗が見てなんとなくわかってるところでいいぜ」


 しつけえな、と絢斗はあからさまに嫌な顔をする。やはり西条はブレない芯をもっていて、知りたいことはしっかり聞いてくる。ごまかせたらごまかすが、無理そうなので素直に告げることにした。


「大体でいいなら。んっとね、めっちゃ大雑把にいうなら、力を操ることかな?」


 大雑把にもほどがあるだろ、西条は呆れた。


「どんな力が操れるんだ? その能力を使うことでかかる本人への負担は?」


素朴な疑問に、絢斗は困ったように笑った。


「さあ?」

「え、マジ? それもわからんの?」


 西条の問いに絢斗は表情を崩すことなく、申し訳なさそうにしていた。


「申し訳ないけど」


 かー、西条は頭を抱える。せめて味方の戦力になりそうな存在はしっかり把握しておきたかった。あの時地面を穿った能力の持ち主なんかは、ぜひとも戦力に加えたく思っていた。

 まあ、こいつがそれを許すわけないか。

 絢斗の様子を見ていて、彼が明穂を戦闘に関わらせるようには思えなかった。きっと、本人に守るということすら伝えてないのではないだろうか。抱え込みそうなやつだ。独善的とも言えるのかもしれない。女っぽいカオの癖に、誰にも屈しない負けん気を持っているギャップは少し興味深かった。


「じゃあ、絢斗の能力は?」

「僕? 僕は身体能力強化だよ。部位は特に指定なしだから汎用性は高いけど、そこまで効果は強くないな」


 つらつらと絢斗は語るが、西条は忘れていなかった。


「コントラは?」

「ん?」


 絢斗は首を傾げるが、西条は追及する。


「さっきお前、契約を結ぶって言ったよな?」

「……大抵の人は雰囲気で流してくれるんだけどな。ねちねちしてるね、ワビ」

「人聞きの悪い言い方をするな。もとはと言えばお前が勝手にやるのが悪いだろ」


 怪しげな詠唱を、西条は忘れていなかった。絢斗は少し驚いた顔をするが、なら仕方ないかとだるそうに説明をし直した。


「身体能力強化ってのも嘘じゃないんだ。もう少し広く言えば、決めたことができるようになるっていうか。自己暗示みたいなものだよ」


 身振り手振りを織り交ぜて絢斗は語った。その言葉に西条は溜息をつく。


「全然ちげえじゃねえか。全くこっちが言わなきゃ嘘をつかれっぱなしだったぜ」

「聞かれなきゃ答える義務はないからね」


 絢斗は悪びれなく笑った。

 ほんとにあくどいやつだ、西条は気を引き締めることにする。


「んで、自己暗示が俺との契約に結び付くのか?」

「ある程度はそうみたいだよ」

「信じていいのか?」

「自己暗示を僕が破ったら大変なことになるよね?」


 論理も証拠もあやふやだが、西条はこの場は抑えることにした。


「絢斗が今できることは、身体能力強化と契約くらいか? もっといろいろできそうなものだけどな」

「使うと疲れるから、あんまりいろんなことはできないかな」


 あっけらかんと絢斗は述べる。


「身体能力強化はどのくらい疲れるんだ?」

「脚力強化をすると、10km走ったあとくらい疲れる」

「……結構なのか?」

「君の感覚は壊れていることを認識したよ」


 うるせーな、と西条は悪態をつく。自覚はあるが、絢斗に言われるのは癪だった。曲がりなりにも自分は常識人だと信じているから、変人に変とは言われて気持ちのいいものではない。


「陸上競技をやってるわけでもなければ、結構な疲れだよ。少し使うだけでこれだから、なかなか僕としても苦しいかな」


 おそらく試行錯誤をしてこれなのだろう、と西条は感じた。絢斗ならば自分の持つ可能性を極限まで試すだろう。それが明穂を救うかもしれないなら、その努力に際限はないように思えた。


「おーけい、わかった。これは強制ではないんだが、作戦を確実に実行するために聞いておきたいことがあるんだが、いいか?」

「胡散臭いけど、聞くだけ聞こうじゃないか」

「絢斗と楠、いつ出会った?」


 ああ、その質問か。

 覚悟はしていたが、実際聞かれると感情が高ぶる。絢斗は拳をギュッと握った。

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