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一条サラサの窮地


 一条は顔を曇らせていた。

 そのせいだろうか、とても嫌な予感がする。

 世の中、成功もあれば失敗もあるのだ。

 立て続けに成功していればその分だけしっぺ返しが怖い。

 

 ……そして、その勘は当たる事になった。

 

 一条は早速張り切って何度か奴の財布を抜き取る事にチャレンジするも、あと一歩の処で密集している人に揉みくちゃにされた。


 事件はこの後、起こる。

 恰幅の良いおっさん達にマークされていたからだ。

 多分私服警官だ。

 皆、片耳に小型ワイヤレスイヤホン、しかも通話可能なマイク付きを装備している。

 あからさまだが、捕まればただじゃすまない筈だ。

 下手したら一条は退学になってしまう。


 だが、本来なら己自身が警戒しなければ為らない処だが、残念ながら本人は一向に気づかなかった。


 どうするべきか。

 ここは上手く立ち回らないと、一条が公僕の手によって人生が台無しになってしまう。

 しかし、俺がただ動いたところでミイラ取りがミイラになるのが落ちだ。

 どうする?


 俺は警戒しながら危機の脱し方を模索していると、「――あれ、バカつらじゃんか?」いつも俺の神経を逆撫でしてくるビターボイスが耳に纏わり付く。


「その人をコケにしたあだ名はやめようか香月」

「そいつにあだ名がついて初めて一人前なんだよ」

「それは芸人の話だろう?」

「細かい事はいい」


 香月も浴衣だった。

 白地の上に赤で縁取った牡丹が全体に咲き誇っていた。

 帯はバラ色に小さく描かれた蝶々が沢山舞っている。

 まるで牡丹目指して飛んでいるみたいだ。

 流石は着物のプロ。

 センスが桁外れだ。


 茶髪をやめて黒髪に戻した。

 それだけで大和撫子に見えるとは和服の魔力は恐ろしい。

 そう、香月は香月流を継承する事を正式に親に告げ、ギャルの格好から卒業した。

 だが、それは姿だけであって、挑発的な性格まではまだ改善されていない。


「あれ? さらっちは?」

「おい、いつも一緒にいると思うなよ」

「誤魔化しても無駄。あーし達フレンド情報網を舐めたら駄目だよ」


 スマホのメールには事細く一条が情報を記載していた。

 

 一条いつの間にメールしていたんだ?

 でも、シャイニングフィンガーな指さばきで文字を打てるから別に不思議じゃない。

 

 それに良いタイミングで来てくれた。

 神は一条を見捨てない。


「香月、頼みがある」

「デートはお断り」

「違う」

「髪の毛や下着は売らないよ」

「そんな気持ち悪いのいるかよ」

「うっそ。じゃ、キスしたいの?」

「自意識過剰だ」


 こいつどれだけ自分に自信があるんだ?

 世の男共は皆、香月に恋していると錯覚してそうだな。

 まぁ、美少女だということは認めてやらないでもない。

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