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デートお邪魔作戦


 通勤ラッシュの満員電車や正月の初詣なみの混雑。

 子供の泣き声や、屋台の呼び声や、友達同士の弾む笑い声や、神輿の掛け声。

 まさに喜怒哀楽のカルテット。

 普段はただのノイズだが、期間限定の異世界では気分を盛り上げるBGMへと変貌する。


 色彩豊かな屋台群、街のメインストリートをまるまる占拠しているので、昼間からシャッターを閉めているやる気のない商店街もこの日だけは商魂逞しく活気づいていた。

 歩いていると商店街会長で昔馴染みの駄菓子屋のお婆ちゃんに捕まり、地味だからとはっぴを渡されてもとてもハッピーな気持ちにはならない。

 でも折角だからと袖を通すのは、結局祭り好きの人種なんだろうと無意識に楽しんでいる自分もいた。


 イカ釣り漁のみたいな眩い灯りに幼少へかえったみたいで元気が出るも、好奇心が旺盛な相方は注意散漫。

 カラーひよこと目があって停止したので無理矢理歩かせた。


 一方、前方には楽しそうに相手と語らっている早乙女嬢。

 黒髪ロング。

 顔は地味。

 背と体格も普通。

 特筆することが何もないキングオブノーマル。

 それが早乙女ゆずるを表す唯一の言葉だ。

 ホクロとかそばかすぐらいのトッピングは欲しい処。

 浴衣も地味な白地に紫陽花。

 如何にも安易にプリントされた量産タイプだ。

 これだけの普通は一つの才能だぞ。

 と、地味研究者のじみー桂は馴染深い地味っ子ぶりに太鼓判を押す。


 早乙女のデート阻止が目的だ。

 何故にそんな事をしなければならないか。

 それは彼女の能力が関わっていた。


 『オート好感度アップ』


 それが早乙女のユニークスキルの名前。

 

 地味だが全就職戦線を戦っている大学生や、愛の狩人や、営業職全般にとって、口から手が出る程のとても魅惑的な力だ。


 そのスキルを強奪するのが今回のミッション。

 当然だが事前に詳細などの調べはついている……実行したのは一条だが。


 勝利条件


 ・早乙女が相手にフラれる。


 敗北条件


 ・デートが成功する。


 ・タイムリミットを超える。


 デートお邪魔作戦 

 

 内容


 1 良い雰囲気に発展しないように早乙女と相手の間にはいる。


 2 男の見せ場をことごとく失敗させる。


 3 男の財布スッて恥をかかせる。


 4 早乙女と相手を喧嘩させる。


 5 サプライズゲストで早乙女の正体を暴露する。


 6 昔の彼女が登場する。(即ち修羅場)


「もぎゅもぎゅ(桂ちゃん、作戦通りに行くよ)」 

「了解だ」


 いつの間にかドネルケバブを口に咥えている一条はモグモグいいながら、ノートに書かれた内容を再確認。

 ってか、こいつの言っていることが分かるだけで、俺達の信頼度が上がっているのだろうか。

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