新たなミッション
人類が世界の異常に気づくことはない。
世界は詐称も一流なのだ。
時代の流れが幾ら変動しようと、その事が無かったかのように補填されてしまう。
全くもって憎らしいが、俺達が相手にしている敵がどれだけ強大で凶悪で脅威なのか理解出来るだろう。
なので一条の胸囲は魔族変革前と同じなのは本人には黙っておこう。
脱線した話を戻すが、俺達は宇宙そのものを騙さなければならなかった。
それがエドウインから預かった最後の指令だからだ。
それしか滅びを止める方法が思い付かない現在、刻々と近づいている終幕に対応する為にも、色々と模索しながら歩みを止める訳には行かない。
無論、今回のこれも一見には遊んでるように見えて、実のところれっきとした作戦の一環だ。
標的に怪しまれないように作戦フィールドに溶け込んでいる。
「桂ちゃん、何時までやっているのだ」
「もう少し待て」
なのでこのようにゴリラのヌイグルミを取るために輪投げに夢中になっているのだって、世界を騙す為の極めて重要なファクターと宣言しておこう。
だから分からなくてやけになってとか『五里霧中』にはなっていない。
どっちかというと『ゴリに夢中』だ。
「あ、桂ちゃんちゃん、ターゲットが移動したのだ」
「分かった」
ゴリラに後ろ髪引かれながらも別の景品は取り敢えず取ったので、心置きなく本道へと返り咲いた。
俺達は再び尾行を開始。
気付かれないように一定の距離をとる。
そう、これが本来の俺達の祭りに来た目的。
ターゲットのデートを邪魔する事だ。
名前は『早乙女 ゆずる』。
今までは俺と同じで地味な陰キャラだったが、ユニークスキルを覚醒した事によって積極的になり、見事高校デビューを9回の裏ツーアウト満塁でギリギリ果たす。
このまま早乙女の能力が上昇すれば勇者王になる可能性も出てきた。
放置する訳にも行かず今に至る。
「まずいな、早乙女達が先に行ってしまう」
「むむ、生きる壁なのだ」
数えるのが面倒な程、人でごったがしていた。
ここを掻い潜って追尾しなければならないとか無理ゲーだろ。
幸い一回ミスで残機が減る昭和ゲームのような鬼畜な仕様じゃないので、大いにもみくちゃになりながらも先に進む。
一条はついていけず足がもつれ倒れかかるも、「あっ!?」はぐれそうなので手を繋ぎ引っ張り上げた。
「ありがとう桂ちゃん。もう手を離して良いよ」
「駄目だ。ここではぐれて別行動になったら計画に支障が生じる。ここは連結していた方がいい」
「……分かったのだ。ならばここは桂一号車に私の全権を委ねるのだ」
何故か赤くなった一条はそっと手を握り返してくる。
こいつは幼女のように体温が高いので手の平が汗ばんでいた。




