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変貌する世界


「ああ、僕のとっておきのバナナが!」

「うるさい、これでも食べてろ」

「――もがっ! もぐまぐ……」


 大きく開いた口にゲソを食らわしてやった。

 

「美味いか俺の触手?」

「イカ臭いがイケるのだ」

「……………………」


 流石はイノセントガール。

 

 俺のお下品なトークに無反応。

 でも良かった。

 これがインセクトガールなら無視されていただろう。

 逆にセクシャルハラスメントをかました自分が自己嫌悪になった。


 もう言うまいて言うまいて。


 などと、太郎冠者風に纏めた処で人の多さにうんざりする。

 気を抜いたらところてんのように外へ押し出されてしまう。

 それもその筈、今日は祭りの最終日で花火大会が催されるからだ。

 貧乏市役所の大事な財源確保だから普段とは気合いが違う。

 これが市販の花火並みの子供騙しなら、市会議員達は地元のじじばば軍団に全国ニュースで打ち上げられてしまうだろう。


 それはそうと前々から素朴な疑問がある。

 何故に花火を打ち上げるイベントの事を『花火大会』と銘打つのだろうか?

 競技ではないのなら『打ち上げの会』、若しくは『花火を愛でる会』や『爆発愛好の会』でも良かろうに。

 花火を使った格闘大会なら敵にぶちこんで『汚え花火だぜ』とか言うのであろうか。

 想像がつきない。


「桂ちゃん、何時まで私に見とれているのだ。公衆の面前でやられると注目される」

「すまない。だが、一条が見られているのは別件だ」

「そうか、じゃ私が可愛いからなのだな」

「……そうだな。そうだったならいいな」


 俺の手には積み重ねたトレーの塔。

 たこ焼き20回目のおかわりだ。

 これじゃ好奇の目で見られて当然。

 だが、敢えて真実は伝えなかった。

 これが俺流の優しさなのかもしれない。


 だが、それよりも、こいつに少しは羞恥心があった事に驚く。

 これならミッションの度にコスプレをして来なくなるのではないかと、僅かながら期待した。

 

「てっきり桂ちゃんがまだ世界の変化に付いて行ってないのかと心配したのだ」

「それはある。生憎俺は一条程、順応性は高くはないんだよ」


 そういうと、イカ焼きを耳からかぶりついた。

 

「ふはははっ、最初は戸惑ったが憧れの存在になれたのだから、我輩的にはオールオッケーなのだぞ」

「牙に青のりが付いているぞ」

「桂ちゃん、デリカシーがない」


 何の事を言っているかって?

 それは……、


「魔族になったって別段良いってもんじゃないぞ」

「いいの」


 そう、何故か一条は魔族になっていた。

 即ち、その銀髪も赤い瞳も自前になっていたって事だ。


 これも全て俺のユニークスキル『アンチファンタズマ』の効果が薄れてきた事が原因だ。

 その内、魔法を使える奴やモンスター化する輩も現れるのは必定だろう。



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