プロローグのようなエピローグIN夏祭り
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光陰矢の如し……とまで大層なこと口にするのはおこがましいが、エドウインとの化かし合いから僅かばかりか時が刻まれた。
ようは季節は春から夏へ。
冬服から夏服へ。
青春から朱夏へ。
ならば我が心も成長したのかといえば、心情のスクリーンセーバーが桜から向日葵へ、性癖がナマ足からおへそへ代わった程度だ。
夏の風物詩と言えば、かき氷、風鈴、アイスクリーム、夏期講習、甲子園だろうか。
でも、最近授業をさぼりがちのせいで、追試が夏休みに実施される事が決定された事は、このカテゴリーに入れたくはない。
しかも幾らボッチ大好きでも、あの顎が割れてるオネェ先生とサシで、憧れの高校一年夏休みのサマーレッスンとか有り得ないだろう。
というか超SOS。
「モグモグ」
「おい……」
だが、忘れてはいけないのが学生なら避けては通れぬ大イベントと言えばお祭りだ。
学生の30%はこのイベントで赤の他人から友or恋人に進展する。
また、友から親友へまたは恋人から運命の人へクラスチェンジもこの場で行える。
安価で誰でも可能な社交会場。
まさに人生のターニングポイントと言える一大行事だ。
「モグモグ」
「なぁ……」
しかしながら嘆かわしいかな。
神を讃える大事な神事へ邪な煩悩を持ってきてはいけない。
なので、りんご飴にむしゃぶりついている食欲まみれの隣人にも、説法を聞かせなければならないだろうか。
「モグモグ」
「…………………」
軽蔑の眼差しで目をやると、銀髪はちょうちんが放つ淡い灯りのせいで飴色に光り金色にも映った。
なので芳ばしい匂いでぎとぎとなった訳でも、燻製へとコーティングされた訳ではない。
幼女ぽいあどけなさは残るが、しっかりと自分を持った意思のある眼差しは健在で、濃度の高い朱色の瞳は次のターゲットへとをロックオン済みだった。
この我が運命共同体にしては珍しく浴衣のようなまともな俗物を着用。
藍色にアサガオが何輪か描かれていた。
アサガオには毒がある。
つまり自分に近付く物は死より苦しい地獄が待っているという警告に違いない。
勿論俺もその中に含まれている可能性も払拭出来ないが、この少女の思慮深い性格を考慮すれば自ずと安全だという答えが見えてた。
「くっ、たこ焼きが我を呼んでる。だが、お好み焼きも捨てがたい。ぬぬぬっ! 一体どうしたらいいのだ?」
「一つ言える事は食べ過ぎだろ?」
「暴食の悪魔が囁くのだ。だから私のせいじゃないのさ」
いやいや、貴女の意志がヨワヨワなだけなのですよ。
と、天使にも見える暴食の悪魔少女から、手に持つチョコバナナを強奪または鹵獲してそのまま食べた。




