魔王よ、空気読め
さてさてと、これからどうやって告げようかな。
ここが最大の見せ場だ。
僕がかっこよく決めて桂ちゃんに最高のパートナーだということを認識させないとね。
順序としては、
まずは長口上を述べて雰囲気作り、カッコいいシリアス感を演出。
次に見当違いな答えを並べて油断を誘う。
そこで相手がぽろっと綻びを見せたところでバーンと証拠をつき出す。
そして、最後に犯人はお前だと言わんばかりに指をさそう。
そう、びしっとね。
「――お前もしかしてエドウインじゃないか?」
「ああああああ! ちょっと桂ちゃん! 僕のセリフ取らないで!」
何の前触れもなく思い出したように口に出した桂ちゃん。
なんたる事、なんたる失敗。
折角、僕が言おうとしていたのに!
ふかくぅううううう!
今までの全部台無しじゃんかぁぁ!
桂ちゃんは探偵ものセオリーを知らなすぎるよ。
などと僕が心の中で大いに地団駄をコザックなみに踏んでる間にも、
「何故そう思う?」
「何か懐かしい匂いがするんだよ。シナモンのほんのり苦さを含んだ甘さって奴かな」
「ふふっ、匂いで嗅ぎ分けてしまったか」
「魔王だからな」
匂いって……凄い嗅覚。
「実に素晴らしい勘だ我が友よ。そうだ、私が『エドウイン・エリーゼ・シュタットハルト』勇者王なんて烏滸がましい名で呼ばれている者だよ」
予言者がフードをまくり上げると、ブロンドの髪を三編みにしたヴァルキリーを彷彿させる少女が姿を見せた。
勇者王エドウイン。
そこには死闘を繰り広げた魔王終生のライバルがここにいた。
ってか、女の子だったのね。
猫のような切れ長の目。
深みのあるブルーアイズで意思の強そうな眼差しを僕らに向ける。
雛が卵から抜け出すようにぼろ切れローブを脱ぎ捨てた中から現れたのは、白銀のプレートアーマーと上下がない純白ウエットスーツ系インナーウエア。
言葉で表現するのなら、まるで純白の乙女または目眩がする程の白い肌の妖精。
同性でも呆けてしまう程の破壊力が、僕の僅かな自信を粉々に打ち砕いてしまう。
それにしてもエドウインはファンタジーぽくってカッコいい名前だね。
一条 サラサに誇りを持っているが勝てる気がしない。
ちなみに桂ちゃんのかつらは英語にしてもカツラなので何だが可哀想だ。
ならせめてキャツーラーと呼んであげよう。




