史上最高のサプライズ
燃えるような紅の髪、強い意思を強調している眉、釜戸の炎を連想させる赤く光る瞳、極限まで無駄な肉を落として鍛え上げた鋼の肉体。
そこに赤いマントと黒一色に統括された鎧を身に纏っていた。
特に注目するのはヤギの如く太い二対の角。
最上位の魔族の証。
そして……如何にも脳筋だ。
非常に嫌な予感がする。
ラストボス前でセーブしないで停電になったぐらいの悲壮感が俺を支配した。
「ふははははっ! 全愚民諸君! 刮目せよ、喝采せよ、渇望せよ。我が名は魔人連合国首領、魔王ガンナム・レイドラーム。このローグエンドバーグ七界の支配者にして魔族の長なり!」
『バカちんが、元やろ、元』
そこには馬鹿が立っていた。
全てのセオリーや雰囲気をぶち壊して大馬鹿が高笑い。
然り気無く突っ込むブラックドラゴンはお笑いの心得を分かっているに違いない。
「そんな馬鹿な……だが、紛れもなくその体は魔王。ではそこにいる桂 勘太郎はなんなんだ? 私は何と対話していたのだ?」
一人現実を受け入れられない者は、ワナワナと震えながら俺に指を突き付けた。
「予言者、まだ気づかないのか?」
『くくくっ、あんさんらえげつない事するなぁ』
未来が視認可能な予言者といえども、この異常事態の予測は無理だったと見える。
「どういうことだ? 一体何をやったんだ?」
「お前の目の前にいるのは桂 勘太郎でもましてやガンナム・レードラームでもない。俺は――いや、僕は魔王ガンナムレイドラームの参謀にして唯一無二のパートナー、一条 サラサだよ」
「そんな馬鹿な」
常にジェントルマンとして平静を保っていた予言者も遂に声を荒げる。
そう、俺いや、僕は一条 サラサ。
紅葉ヶ丘学園のピチピチの一年生。
勿論女の子だよ。
「どういうことだ? お前の心も心理も魔王そのものだったぞ」
「トレースだよ。一杯桂ちゃんの研究したからね。行動性格心理全て丸パクリ可能なのさ。この夢の中ならそれが出来ると思ったんだよ」
今の僕は思念体。
だから思い込んでいたから姿形も桂ちゃんになっていたんだよね。
もう目的は達成したから思考をサラサにして、元のプリティーガールに戻った。
どうせ夢の中なら、大人になったりバニーガールも捨てがたいけど、どうやら見慣れている姿でないと姿が安定しないみたい。
桂ちゃんを悩殺出来なくて非常に残念だ。
「それより、桂ちゃんの馬鹿。何で君自ら来るのさ。また段取りが違うよ!」
「悪い、いてもたってもいられなくてな」
僕の側に降り立った魔王レイドラームこと桂ちゃんは、意図も容易く魔法による呪縛を解除してくれる。
カッコいい……。
何時もと全然違う大人の男性に、僕の心臓がまた跳ね上がった。




