予言者の崇高なる企み
「魔王、悪いが君の体の時間を止めさせてもらった」
「何て事をするんだ」
金縛りではなく時間を凍結されているので、ウインク処か瞬きも無理。
お陰さまでドライアイになりそうだ。
しかも公民的な変なポーズでフリーズしているから、各所から著作権侵害で訴えられたらどうするんだよ?
「これも私の思惑を外し想定外の道へ進もうとする、聞き分けの悪い魔王に非がある」
「お前が素直に真相を語らないからだろ?」
「ただの駒にどうして私の崇高なる目的を共有しなければならない」
それが予言者の本音なのか。
「そんな事よりもだ、この魔法、どうやって発動したか興味がないか?」
「簡単だ。今までのは行動の過程を推測すると、言葉だけの見えない魔法陣という結論が浮き彫りになってくる」
「ご名答。おお、魔王だけあって魔法円にも造詣が深いようだな」
魔法陣……正式には魔法円というまじない的な特殊サークルの事を差す言葉だ。
うろ覚えだが俺の世界だと、基礎となる二重丸に五芒星や六芒星や十字の記号配置。その周りをヘブライ、ラテンで年月日とそれに対応した天使を書き連ねないと機能しない。
ましては召喚となるとそれ相応のマジックアイテムが必要になる。
だが、単純にもこれが正解と言えないところがこの魔法円の奥深さなのだろうか。
具現化したサークルなしで大掛かりな魔法を行使するのは並大抵じゃないはずだ。
人知を超える相当な実力者でなければ、こんなサーカス的荒業の構築なんてやれるものか。
しかしながら、どうしてわざわざ油断させて、俺にこれほどのある意味反則な魔法を仕掛けたんだ?
昔ならいざ知らず、ただの人間の俺なら通常魔法でも致命傷も可能だろうに……。
「そろそろ教えてくれるか? お前が何を考えているのか?」
「よかろう。我の目的はローグエンドバーグと君の世界を繋げる事。隠居魔王よ」
「何だって!」
俺は衝撃の事実に驚愕した。
「我のユニークスキル『予言』の能力でそちらの世界も征服しようとしていたのだよ」
「おいおい、なんて物騒なんだ」
「だが、その為のゲート製作には大量の光力が必要だったのだ」
「だから俺に光属性を勇者王の転生候補と偽って破壊させていたのか?」
「御名答だ」
最悪だ。
では最初から勇者王は俺の世界にいなかったって事なのか?
ただ単にピエロの様に踊らされただけなのか。
なんて惨めなんだ……。




