それは羽毛の如く
「俺の事を良く知っているのなら、この言動がはったりか疑念を抱いているか理解しているのでは?」
「……………………」
「俺はお前を恩人だと思っている。だからこそ、納得させる理由と証を立ててその疑念を払拭させてくれ」
相変わらずフードが邪魔でこいつの表情が読めない。
声色だけだと先読みの判断が鈍りそうで怖かった。
「……何度も言うが予言はあくまでも予言。繊細で移ろいやすい物だ。全てを鵜呑みにされ責任転換されても過去の私にはどうする事も叶わない」
「そうか。だが、そんな事はどうでも良い。俺が欲しいのは確固たる動機だ」
予言者は予言の性質を逆手に取って、一条の予測通りに逃げ道を選択した。
俺の中にある信頼のメッキがまた1枚剥がれていく。
「再確認だ。勇者王エドウインが俺の世界にいる事に間違いはないか?」
「ああ」
「探し当てる条件は?」
「善行を邪魔して光属性を折ること、そして復活すれば勇者だ」
「そうだな。俺はこの言葉を信じて実に下らない計画を遂行してきた」
理念は大層だが、やっている事はまるで悪ガキのイタズラ。
ピンポンダッシュやスカートめくりで世界を救えるのなら、世の中の活発な小学生は皆英雄だろうよ。
「それも崇高な行為なのだがな」
「だが、エドウインが三人なんてどう考えても変だ。これは根本的前提条件を間違えていると考えるのが道理だろう?」
「……………………」
黙秘か。
論戦に於いてだんまりは最強のイージスの盾だ。
俺も弟にこれを1週間やられた時は天井に吊るすロープのくくりかたを練習したもんだ。
「何でこの時のお前は不機嫌だった? 何か予測外の出来事が起こったんじゃないのか?」
「それは三人現れた事だと説明した筈」
だが、一条は演技と睨んでいる。
一流の舞台俳優は自分さえも騙す。
つまり、予想外の吉報だった事もあり得る訳だ。
「なら質問する。勇者王は一人だけだ。でも、兆候足る現象が三人に起こった。お前はこの矛盾をどう推測するんだ?」
「私も調べている最中だが、例えば、属性の乱れとかはどうだろうか?」
「それは無いだろう。俺のビー玉は白だった」
「そうとも言い切れない。何事も実証を繰り返し初めて結果を知るのだ。だからこそ人間の探究心は素晴らしいとも言える」
こいつの言葉と知識の引き出しが多い。
それに口の上手い奴ほど勝ちに行こうとする傾向があるが、予言者も例外じゃないらしい。
それが正しくても間違ってもだ。
まるで政治とかコメディアンと問答しているみたいな気分になる。




