勇者王エドウインとの因縁
「でも、何故、俺を目覚めさせたんだ? お前は過去、俺は未来。もう、こうして干渉も出来ないだろうに」
どうしてこいつが予言者を名乗っているのか。そう、予言者はこの世界、ましてやこの時間の存在ではない。
そう、こいつは過去。
俺の時間ではとっくに死んでいるからだ。
遥か昔から予言者の力を行使して俺に語りかけているんだ。
たまにセリフがブレるのもそのせい。
そう、だからこれは過去の映像。
これは俺が魔王としての役目を終えたその後のローグエンドバーグだ。
分かりやすくすると、本能寺の変以降の織田家、または三國志演義の主人公達がバシバシ死んだ直後の三国だ。
「何故とは心外だな。私は君の遺体を発見して葬式まで出してあげたのだぞ」
「それは嘘だな。魔族にそんな習慣はないし、あるとしたらそのまま放置が美徳だ」
魔族に墓はない。それでも敢えて言うのなら、死した場所が墓、骸が墓標だ。
「ははっ、バレたか。だが、遺体を発見したのは本当だ。魔王の記憶している通り勇者との死闘の末、重なりあって事切れていたんだよ」
自身の事ながらいい幕引きだと感嘆するも、「死体はガチホモなネクロマンサー共に持っていかれたけど……」と続く。
最後のは聞かなかった事にしよう。
予言者は友の如く気軽に話しかけてくるが、まだ記憶が曖昧でこいつの事を思い出していない。
何でも前世の記憶を甦らせてくれたは良いが、魔王のデータ量が膨大でバグが発生。
開けないファイルとかがあるそうだ。
「再会した当初に言った筈だ。ガンナム様の行く末が心配なのだ。だが、それも当然であろう。仮にも忠誠を尽くした我が主がまた危機に瀕しているとあらば、何物にも代えてお助けするのが世の道理だ」
「勇者からか?」
「ああそうだ。本来ならばそこまで過保護にはならないのだが、勇者も一緒に転生したとあれば話は別だ。どういうことかというと、勇者王エドウインが本来の力を取り戻したら、過去も平行世界も改変可能だからだ」
「お前の今の地位も危ういからか?」
「そうだ」
「それに個人的恨みもあると」
「あのチート野郎にはどれだけ辛酸を舐めさせられたか分からない」
流石魔族、元上司を気遣ってオブラートに包む気は更々無いようだ。
それが本音か。
「でも、予言で全て分かるんじゃないのか?」
「いや、これも万能じゃない。ほぼ確定した未来しか視る事が出来ないのだよ」
否定。
フードごと横に振る。
だから、予言の力を使ってまで勇者復活を阻止したいわけか。