ヒロインショー
「――よいこの皆、こんにちはー!」
特設ステージに謎の少女が上がってくる。
元々キーが高いのでマイク無しでも隅々にあのアニメ声が浸透。
服装は再び一条の正装『悪の参謀』軍服だ。
「「「こんにちは!」」」
少女はわざとらしく耳を澄ませる。
「声が小さいね。もう一度!」
「「「こんにちはーー!!」」」
ワンモア耳を澄ませると、一度深く頷き、
「はい、皆さん今度は良く聞こえたよ!」
もちろん小泉達図書館班は予想外の出来事で大パニックになっていた。
しかし学校側はサラサを止めたくても、隠れシンパ達が妨害して独壇場になっている。
「お姉さんの名前はサラサ。気軽にサラ姉って呼んでね!」
「「「サラ姉ー!」」」
「はいな! ヨロシクねー!」
「実は今日、ここによい子ばかりいると嗅ぎ付けた悪の皇帝 大マジーンが、最強の魔王を召喚しました。皆、怖いよね? 怖いよね?」
「「「怖いー!」」」
「では巻いてるので、登場してもらいましょうか」一条は一間を置いて、「あああ! なんだ西の彼方に浮かぶ魔方陣は? あれは魔王だ。魔王が来たあぁぁぁ! 助けてー!」
一条の手は遥か後方へと指す。
子供達も釣られて後ろを振り向くがやはり何もない。
しかしながら、無い筈の魔方陣を説明するだけで子供は想像力で補完してしまう。
だから大興奮だ。
これならテーマパークもCG要らずで大助かりなのだがな。
それよりあいつ普通に上手いな。
脚本なしでもヒーローショーのマニュアル通りに事を進められるなんで、俺と同じく相当通ってなければ違和感なく進めないだろう。
「がはははっ! 我が名は魔王カロリートリスギー。悪い子はいねぇが?」
「魔王様、それはなまはげだよ」
「それが流行なんだよ」
魔王カロリートリスギーとは、七つの大罪魔王の1つ暴食を司る魔王。
その素材となっているのが元ゆるキャラ紅葉君だ。
図書館の倉庫でたまたまホコリを被っていた着ぐるみを再利用している。
ちなみに中身は本物の魔王だから嘘はついていないぞ。
『桂ちゃん上手過ぎ』
『ははは、然もあろう。もっと誉めよ。そういうお前もな』
ノリはヒーローショー。
伊達に弟と共にデパート屋上に通い詰めてない。
しかも、自慢じゃないがマニア過ぎて臨時でシナリオを担当したことがある程だ。




