マイブラザー遙斗、マジ天使
「あれ、兄ちゃん?」
「遙斗?」
そこにマイエンジェルが先頭で体育座りをしていた。
元気に手を振っている。
桂 遙斗。
天然カリスマの自慢の弟。
女子にもモテまくりで今からやきもきする兄心。
今回も遙斗が中心となって子供達を纏めあげていた。
少しパーマが掛かった光加減で栗色に見える神々しい髪。
髪型は男の子らしいくちょい短め、前髪は目が隠れない程度だ。
それをミリ単位で毎日切り揃えているから崩れる不覚は一切無い。
生れたてにも負けない透き通る肌が魅惑的だ。
衣装のコーディネイトも快活な性格に合わせて流行のシャツと半ズボンを用意している。
遙斗のマジ天使なキラキラぶりに狼狽していると、「桂ちゃん!」一条に無理矢理エントランスの影に拉致されて作戦会議。
「苦戦しているみたいだがどうかしたのか?」
「どうしよう? 先程から色々と手を打っているのだが、わらべ達は微動だにしないぞな」
小さなお子様達の興味を惹こうと色々と秘密裏に行った小道具の数々が、舞台裏に転がっていた。
だが、けして一条が無能という訳じゃない。
逆に仲間にもバレないという制限付きの中で良くやったと褒めてあげたい。
「普通、パペットとかで集中力を乱せば幾らでも統制が取れなくなると思うのだが」
「それが1人やたらリーダーシップに優れた子供に悉く先手を打たれてお手上げなのだ」
「悪い、原因は間違いなく俺の弟だわ」
一人正座してキラキラ目を輝かせている。
「あの前にいるリーダーシップの塊みたいな子?」
「ああ、可愛いだろ? 天使だろ? あいつの予定を把握していなかった俺のミスだ」
何時もならGPS付けて悪い女へニアミスしない様に完全管制するのだが、ミッションにかまけていた為に怠ってしまった。
遙斗は泣きじゃくったり喚いたりしている子達に好意的に話し掛けて、どんどん仲良しになっている。
ああ、友達がにゃん太郎だけのおいらとしては、あやつがとても眩しいのです。
「なんとかなる? 連れ出すとか」
「あいつは読み聞かせ大好きっ子だから無理だな」
何時も寝るまで何冊も童話を読まされている。
「何より兄としてそんな事出来ない。それなら作戦を根本から立て直した方が効率的だ」
「無茶苦茶だぞ。僕の頭はそんなに万能じゃない。この状況から修正したって意味がないぞ」
「俺は遙斗が大好きだ。だから無理」
「仲良し兄弟だもんね」
「一人の異性として――」
「それは色々と越えてはいけない壁なのだ!」
「冗談だ」
「冗談に聴こえないよ!」
なに、法律を改定する為に政治家目指すのもありかなと思っている程度だ。
気にするな。




