図書館の攻防
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昼間の暖かな陽射しが、寝不足気味な俺の脳内を休息へと誘惑する。
ふらふらと歩くシルエットは徘徊するゾンビに見間違えるかもしれない。
市立の図書館。
いつもお世話になっている我がサンクチュアリだ。
俺を出迎えてくれる色とりどりのパンジー。
でも、眠たくて頭の中身はチンパンジー。
疲れて足が千鳥足で棒、シャフルすると棒棒鶏。
中々のラインナップで寄付してくれている人が結構いるのか、産業もない貧乏市の割には歴史資料が豊富で暇になることはない。
これから暑くなるので、自ずと利用回数が増えていくだろう。
それと、流石にあのままじゃどぶ臭いので自宅に帰って着替えてきた。
図書館で異臭騒ぎを起こして出入り禁止にはなりたくはない。
なので気分的に足取りは非常に軽かった。
自動ドアが開くと図書館玄関広場でイベントをサポートをしていた一条と目が合う。
いつの間にか一般制服に着替えた一条だが、髪は元に戻していないので目立っている事に変わりはない。
予定では語り部役の小泉が壇上に立つ時、一条の主導で子供達が暴走して収集つかなくなる手筈だが……。
今日に限ってまるで子供番組の天才子役共みたく大人しかった。
子供とは制御が難しい。
特に集団となると簡単に暴徒とかすのだ。
そのパワーはスクランブル交差点の悪夢の非ではない。
一条の口がパクパク動く。
俺に読唇術なる高等技法をぶっつけ本番でやれと言うのか?
何と言う無茶ぶりだ。
何々、
『同じ舞台に立つと、おっぱいがないから爆乳の楓子と比較されてマジムカつく』
と、言っている気がした。
魂の叫びが聴こえて来るようだ。
ならば俺は励まそうと、『ナイチチでも望みを捨てては駄目だぞ。例え可能性という言葉がお前にとっては残酷な現実でも――ぶっ!』何故か本が俺の眉間にクリーンヒット。
相棒様よ、広辞苑は敵を屠る為に使うものじゃありません。
正解は頭を乗せる物。
枕にすると頭が良くなった気になる。
どうやら意志疎通は失敗に終わったようだ。
まだ、まともに話すようになってから日も浅いんだ。
理解しろというのが無理難題だろう。




