いたずらタクティクス
「お前らはそこから見学していろ」
「くそ!」
功労者を引っ張りあげ、残ったメンバーで全てを片付る。
俺の出来ることは無言で上着を羽織らせるぐらいだ。
傷心のギャルに余計な言葉は掛けない。
属性を測るビー玉はまだ白いが瞬間的に影が指した気がした。
今ので香月の抱えている物が分かったかもしれない。
あいつは色々と俺達には想像できない試練を掻い潜っているから、さっきの態度の悪い先輩方々にも思うところがあるのだろうよ。
――それからも黙々と作業を進めた。
一度はボイコットした連中も反省したのか戦列に戻る。
泉の女神様も余計な事をしてくれる。
あんな奴等寄越す位ならまだ金と銀の方がましだ。
一通り終わったので俺達は満身創痍になりながらも、管理人さんに報告に行く。
その頃には喧嘩していたメンバー達もお互い腕を組んで友情が生まれていた。
だが、そこでまさかの展開、
「いやぁ、学生さん達やってもらってて悪いけど依頼したのはこの沼じゃないんだよねぇ」
「「「えええっ!?」」」
メンバー達は衝撃の事実にユニゾンした。
しかも管理人に案内されて移動した場所は、もう既に全て片付いていた。
「どういう事だよ?」
「こっちが本来の場所だったみたい」
「誰がやったんだ?」
「さぁね。でも良いんじゃない結果的に終わっているんだから」
「そんなんで納得できないっしょ!」
チームの皆は喜んでいるみたいだが、プライドの高いお嬢様は怒り心頭だ。
流石は日本舞踊家元の御令嬢。
普段ちゃらんぽらんでもちゃんと仕事はこなす。
それが彼女が自ら課した使命のような気がした。
当然だが、これを仕組んだのは俺達だ。
プランAが失敗したらこのプランBに移行する手筈だった。
当初は香月が落ちただけで勝利と思いきや、光が消えた形跡がない。
なので急遽打ち合わせ通り変更と相成った。
この管理人さんも勿論グル。
事前に放送部を名乗って驚かす企画と説明。
これでとどめを刺せればいいのだが。
「あーし達の努力は水の泡になって何で平気なんだよ。喜ぶのは違うだろ。一体何のために頑張ったんだよ?」
「お前、何で自分じゃない人の功績にこだわるんだ?」
俺は興味本位で質問してみた。
「人のプライベートに首突っ込むなし。でも、猫助けてくれたあんたならいいか」
俺はその件を否定するつもりだったが、傷心ギャルはそれを遮るように、
「あーしの姉は日本舞踊香月流宗家の後継者だったんだ。でも、舞台中大怪我して踊れない体になってしまった。それから掌の返して本家の連中はあーしを後継者に擁立しようとした。だから許せなかったんだ。今までの姉の努力を真っ向から否定されている気がした父さん母さんの態度が。だから継承権を放棄した。これが理由ちゃ理由」
軽い見た目と違って結構内容がヘビーだった。




