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円谷さんはお世話好き


「でも、気兼無用だぞ。桂ちゃんと異世界談義に花を咲かせていただけなのだよ」

「あんた、これ以上サラサに変な事吹き込まないでよね」

「俺は何も言ってない」


 世間では俺が一条を中二病に引き込んだと思っている。

 実際は俺は中二病でもなんでもない。

 ただの元魔王の高校生だ。

 無論だが一条にそんな月並みな事を教えている暇なんてない。

 

 「ふん、どうだか」


 不服そうに鼻を鳴らす。

 全くもって信用ない。

 倒産前の会社と良い勝負だ。


「桂、これ食べな」

「うん?」


 そう言うとアルミホイルに包まれた大きめの丸い物体を二個渡される。


「おにぎりだよ。朝ご飯まだ食べていないんでしょう?」

「桂ちゃんそうなのか? 言ってくれればポテト分けてあげたのに」


 一条は袋に入っているファーストフードの定番セットを見せる。

 気持ちはありがたいが、朝からそんな油っこい物はノーサンキューです。


「ああ。さっきも言ったろ。ちょっと弟が駄々こねたって」

「そうだったのだ」

「円谷、聞こえていたのか?」

「うん。遙斗の音量、今回はデカかったからね」


 ぐずった遙斗に付きっきりだった。

 ああなっては中々元通りにはならない。


「とにかく、おにぎりサンキュー。ありがたく頂く。本当お前はいい嫁さんになるな」

「そうかな?」


 社交辞令。

 母さんが良く使っているので真似てみた。


「ああ。旦那になる奴は幸せだな」

「ありがと」


 サブミッション掛けられるのが好きなMにとってはだけどな。


「でも、俺は円谷みたいな性格は御免被る」

「……あそ」

「嘘、こんなに気遣いが出来ている女の子は他にいない――だからアイアンクロー外して! いたたたたっ!」

「ふん!」 


 いたた、頭がクラッシュされる処だった。

 

「サラサも朝からコーラとハンバーガーとポテト食べたら太るよ。第一ジャンクフードは体に悪い。これ食べな」

「僕の分もあったのね……」


 円谷はおざなりに、おにぎり一個とミニサラダを渡す。


「当然でしょう。サラサ危なっかしいんだもん。健康管理も親友の務めだよ」

「うう……、ママ、ありがとう」 

「はいはい」


 本当に面倒見がいい。

 円谷は昔から母性本能が高いからなぁ。


「「――ごちそうさまです」」

「御粗末様です……」


 俺と一条はハモった。

 それに対して円谷は淡白に反応しながら、事前に用意しておいた水筒からお茶を人数分注ぐ。


 美味かった。

 あっという間に食べ終わる。

 最後にお茶で口に残った分を押し流すと至福の気分になった。


「それより、その星のヘアピンまだしているのか?」

「私の体の一部。ボロなのは分かっているけど、桂から貰った大切な物だよ。今さら手放せない」

「でも、みっともないから早く捨てろよ」

「絶対に嫌よ」

「さいでっか」


 包み隠さない言葉に何故か顔が火照った。


 星のヘアピン。

 俺達がガキの頃、縁日でくじを引いて当たった物だ。

 大切にしてくれてるのは嬉しいが、こういう所が律儀というか重い。


「円谷」

「何?」

「頑張ろうぜ」

「ふん、そんなこと一々言われなくても頑張るわよ」


 円谷は背中を向けると、「バカ」などと捨て台詞を吐き、如何にも不機嫌な面持ちで仕事へと戻っていた。


「バカとはなんだ」

「桂ちゃんはバカ」

「あ?」


 一条も後に続いた。

 どいつもこいつも何で俺が馬鹿なんだ。

 秦の二世皇帝に謝れ。

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