会議中
「いたた! 待て待てタンマだ!」
「何?」
気が緩んだ間、外見のギャップ凍り付く幼女アナコンダから抜け出す。
小雨降る領域、カエルになった気分だ。
ゲロゲロ♪
「雨が降っているから戻って来るのだ」
「その笑顔が怖い」
「もうしないよ~」
痛い思いをするぐらいなら、水も滴るいい男になった方が良いと、巣から飛び立った若鳥になりきりコンクリートの大空を羽ばたく。
「嫌なこった。このH2Oに支配された液体世界に逆らってやるん―― ぶほっ!」
勿論調子に乗って転んだ。
4回転フリッツはやり過ぎたようだ。
「お帰り、坊や」
「ただいま、母鳥いやマム……。じゃなくて、俺が指摘しているのは服装だ。今まではマントだったから許容範囲内だったがこれは酷過ぎる。お前は何処の帝国軍将校だ?」
「嫌だ。断る」
膨れっ面は愛くるしいが抗議しても駄目なものは駄目。
純白で統一された軍服にマント、更に帽子もプラスされた。
もう、学童らしい要素は何処もない。
カバンだけが原型を留めていたが、中二達大好きルーン文字シールに占拠、もう手遅れかもと嘆息が漏れる。
「ノンノン、これは魔王参謀将ヴァージョン。桂ちゃんの仲間になった記念に新調したのだよ」
「それだと隠密行動には向かないぞ? 人材不足なんだ俺とお前の共同作業で事に当たらないといけないからな」
「きょ、共同作業!?」
「ん? 変なやつだな」
どうしてか、キョドってしどろもどろになった相方は、うつ向きながらサンドイッチを頬張った。
「大丈夫だよ。これも僕の作戦だよ」
「作戦?」
「これだけ目立った格好をしておけば、陰キャラの桂ちゃんは完全に姿を消せる。効果を出すために作戦時のみ。普段は着用しないよ」
「ならいい」
いいのか?
「でも、なら何で今着てきた? 口頭で良かったろうに」
「桂ちゃんの馬鹿!」
何故か答えではなく叱咤だった。
乙女心はよう分からん。
「では本題。今回の仕事だ」
「次の指令か?」
ノリが昔のスパイ映画だが、一々録音が消去してしまうヤバイ機関の管理下にはいない。
「円谷、香月、小泉、この三人を同時攻略する」
「凛子達を? 確か一度挫いた相手はターゲットにならないって言ってなかったか?」
別段驚いた様子も俺の言葉に耳を傾ける。
もう少し慌てふためくと予想していたが、割りと冷静沈着で驚かしがいのない。
世の中、ノーリアクションだと仕事が回ってこないからお父さんは将来が心配だ。




