仲良し兄弟
文字数を読みやすいように1000ぐらいに変更します。
放課後、下校して帰宅。
我が家は普通の築20年になる量産型建て売り住宅なり。
ガキの頃は同じ造りなのでしょっちゅう隣と間違ったものだ。
途中立ち寄った場所はバス停前のスーパーのみ。
タイムサービスに間に合って良かった。
だが、お一人様用の変装セットを忘れて来たので、二回並ぶ事を断念したのがとても心残りだ。
なので卵がモヤシに変更になっても詮無いことかな。
「帰ったぞ」
「兄ちゃんおかえり!」
謎の物体が俺に特攻、「おふっう!」腹に些かダメージを被いながらも受け止める。
ある意味イジメに近いドッチの球を食らう事に比べたら軽い軽い。
「おお、マイエンジェル遙斗。学校はどうだった?」
「へへ、いつも通りだよ」
歳の離れた我が自慢の弟、桂 遙斗。
これは母による平成初期なネーミングセンス。
ちなみに俺はひい祖父さんによる大正の感性なので古くさい。
これでハイカラと豪語しているのだから、もしかしてまかり間違えれば、権左衛門とか茂助だったかもしれない。
この天真爛漫な笑顔が、俺の不毛な学校生活に多大な潤いを与えている。注いでいる。吸収している。
まだ背負ったままである小学生三種の神器、ランドセルが黒光りしていた。
中々の人気者でクラスのまとめ役だそうだ。
俺とは天と地の差があるな。
「ところで何を食べているんだ?」
「サツマイモ。リンお姉ちゃんからの差し入れ。家に遊びに行ったら持って帰れって」
「そうか。良く噛んで食べろよ」
「うん!」
リンというのは幼馴染みのお隣さんだ。そう、朝方共にいた円谷 凛子だ。
同じ学校だが、最近はまともに話した事がない。
こうして弟が散々世話になっているのだが、実の兄としては複雑な心境だったりする。
昔、遙斗が円谷の弟になると言った時は、ショックのあまり対幼なじみを想定して完全密室トリックを勉強したものだ。
「兄ちゃんの分もあるよって!」
「俺の分も?」
「うん、一杯蒸かしすぎたから兄ちゃんも食べてって言ってたよ」
俺の分もあるとはどういう風の吹き回しだと疑心暗鬼になりつつも、折角なのでご相伴にあずかる。
新聞紙に包まれたお芋を無造作に皮ごと豪快にかぶり付くと、『朝はありがと。それと胃に悪いから皮は剥いて食べなさい』底にあった可愛らしい字で書かれたメモが、一言余計だが俺の乾いた心に若干の潤いを与えた。
「ちゃんとお礼言ったか? 親しい間にも礼儀ありだぞ」
「ロンモチ!」
「偉いぞ! 流石は俺の弟だ」
俺は弟には容赦なく厳しい。
普通の家庭ならホウズリまたは熱い抱擁位はするのであろうが、心を鬼にして頭をなでくり回す事だけで終わらせる。
常に獅子は子を千尋の谷に突き落とすと、泣いて馬謖を斬る、どちらがこの葛藤の使いどころに相応しいか難儀していた。
「へへっ、ボクは勇者だもん。こんなの当たり前だよ」
「ははっ、そうだなハルトは勇者だ。ちなみに勇者はピーマン食べるんだぞ」
「えええええっ!」
我が可愛い弟は今から作る予定の回鍋肉の材料を覗きこんで、大いにテンションダウンしたのは言うまでもない。