にゃん太郎エマージェンシー
小泉も踊っている場合じゃない。
足を上げる度にスカートの中に一際煌めく黄色い布切れが、俺の脳内ハードディスクにパスワード付きで保存したが、それとは別問題だ。
「ぶにゃあ♪」
「フフン♪」
にゃん太郎が訴えかけるも、運命とは無情だ。
小泉はイヤホンしているので効果なし。
気付けや。
運命とはちょっとした事でも変わりやすいと予言者は言っていた。
このままでは小泉が気付かないという、新しい未来が生まれる。
どうする?
動くべきか?
だが、一条に動くなと厳命されている。
もどかしい、もどかしかった。
一条との信用とにゃん太郎との友情。
どちらを優先するべきか、葛藤で変な汗が出ているだろう。
ノリノリなメガネっ子は調子に乗ってジャンプ、「うきゅ!」小さな悲鳴を上げと共に転けた。
しかも前のめり。
運悪く石に足をとられ着地が失敗したのだ。
「…………!」
ダメージがあった小泉は無言で額を押さえながらゴロゴロ回転。
ここが学校のど真ん中でなくて何よりだ。
もう少しで新たなヒロイン誕生になっていたであろう。
「ぶにゃあ♪」
「猫?」
たまたまイヤホンが外れ、鳴き声にやっと反応する。
小泉はズレたメガネを直し、事態の重さに漸く気づいた。
キョロキョロと周囲を確認する。
多分、助けを呼ぼうと思ったんだろう。
だが、ここは元々人が寄り付かない。
たまに車が通る程度だ。
予定通り石を投げて軌道修正を試みる。
一条の予想が当たった。
だが、無論その程度では自然の流れに抗う事などできはしない。
小泉はなおも手頃な小石握りしめる。
投球ホームは意外にもアンダースロー。
投げる度にツインメロンが揺れるが、バレないように携帯の電源オフにしているので撮影不可能。
隠れ巨乳マイスターとしては悔しい限り。
「こっちに来ない。何で?」
移動しながら投擲していたら、狙いなんて定まる訳がない。
それにしても観察すると、ダンボールの動きがどうもおかしい。
見事なドリフト。
にゃん太郎に当たりそうになるとギリギリで石を躱す。
まるでダンスまたは掃除ロボのような動きだ。
にゃん太郎よ、何処でそんな高等テクニックを身に付けたんだと、感嘆を禁じ得ない。
諦めていない小泉はダンボールに歩調を合わせる。
その間にも手は束ねていた髪を一旦解き、邪魔にならないポニーテールにシフトチェンジ。
幸い水の流れは緩やかで、鈍亀でも十分速度を合わせれた。




