ミッションスタート
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暮れ泥む夕日は赤色を増す。
天空に浮くいわし雲が焼き魚になっていた。
今日の夕飯は秋刀魚の予定だったのだが、再考の余地ありだなと、ありもしない香ばしい匂いについ心が踊った。
そうこうしている内に、河川敷を変な鼻歌刻みながら、今回のターゲット『小泉 楓子』が歩いてくる。
漫画なら音符の擬音がふわふわと浮かんでそうだ。
なので音程が外れるのもご愛嬌。
そういえば、たまたま行ったバイトの打ち上げでデスメタル三回連続予約は女子共からブーイングの嵐だったが、JKが同じことをやっても許されるのは差別だ。
っていうか、興味のない歌を強制的に聴かされるのは苦痛または拷問ではなかろうか?
標準に忠実な制服がオレンジに照射されて、朱色が鮮明に際立っていた。
特徴は目付きの悪さを隠している丸メガネとけしからん胸。
性格は真面目。普段からクールで感情を抑えた話し方をする。
歩みは運動部じゃないから遅い。
アニメ同好会じゃメタ知識以外鍛えようが無いからだろう。
なので胸が重たいからだとかはセクハラになるから、口が裂けても言葉にしない。
それより心配だ。
如何にもドジっ娘そうな一条 サラサに任務がこなせるのかと不安が募った。
今回、俺の出番はない。
小さな参謀(仮)の指示に従って姿を隠している。
僕が一人でこなすから、見届けてくれとの事だ。
でも、相手は一条の親友だ。
危害は加えないとはいえ、躊躇いは無いのか?
何をあいつをここまで駆り立てるのだろうか?
そんなに俺のやることが楽しいイタズラに映っているのなら、心外の何者でもない。
一条の立てたシナリオは以下の通りだ。
・1 小泉が流れてくる猫を発見。
・2 小泉が石を投げて軌道を変えようと試みる。
・3 偶然落ちていた棒でたぐり寄せようとする。
・4 浅瀬まで足を進めて、葛藤後、自らの限界に気づく。
・5 諦める。
色々と指摘したい部分はある。
例えば、泳ぐ可能性とか。
でも、小泉は泳げないので浅瀬ならまだしも、川に入る選択は無いそうだ。
それにこのチャート大前提で計画を固めているが、今回は急造もあって別パターンが用意されてない。
ちなみに予言者は、小泉が猫を助けた事実だけで過程と同様に内容が分からないそうだ。
それと大事なのは猫の回収だ。
それは俺が引き受けようと思ったのだが、一条に断られた。
故に心配なのだ。
逆に奴が失敗してトラウマになったら本末転倒だからだ。




