世の中うまい話はない
「良かった。桂ちゃん、やっぱり僕のラブレター読んでくれていたのだな」
「お前なのか、あの企画書を書いていた犯人は?」
彼女はゆっくり挑戦的に頬笑む。
何がラブレターだ。
今まで貰ったのは全部作戦の立案書じゃないか。
「もしかして試したのか?」
「そう、今までの読んでくれてなかったら君はここには来てくれなかった」
そうか、そういうことか。
全ては繋がった。
「どうしたのだ? まるで結果は分かっているけど、1%の確率でも可能性があるのなら賭けてみたいという少年マンガの見せ場みたいな顔をして」
「全くその通りだよ」
「であるか」
くっ、分かっていても、僅かな可能性を信じてしまった。
ラブレターを貰って喜ぶのは男の本能だ。
幾ら策略と理解しても購えない。
まとめると、
1・最近のラブレターに入った立案書は一条の仕業。
2・魔王ガンナム・レイドラームを知っている。
俺を監視していた犯人。
3・勇者討伐と言う名のイタズラがバレている。
4・俺が不信がって相手にしていないから、読んでいるか確める為に、業を煮やし呼び出しという強行策を用いた。
結論・ここに呼んだのも、甘酸っぱい告白イベントの可能性は無いに等しいって事だ。
こういう答えにしか行き着かない。
ようやく理解した。
そう、予言者が指していた『彼女』、それは一条サラサだったのだ。
ある日を境に俺の机にラブレターが投函され始めたのは、先程も述べた通り。
内容は愛を込めた詩ではなく、想いを綴った言葉でもなく、全校生徒の詳しいデーターと対策。
「作戦立案書は役に立っているか? 何度か僕の企画使っているみたいだが」
「少しだけだ。気味が悪いので残りは封印した」
「そうか。最近の無様な失敗は計画性が無さすぎる。軍師だったら一万規模で死傷者を出していたぞ」
「うっ……」
一条は俺を遠回しに馬鹿と言いたいのだな。
ならば俺は陣頭で先陣を切っていた万夫不当タイプと言い訳をしておこうか。
全て拳で解決してきた脳筋だったって事だ。
「だから、そろそろフェイズツーに移行しようと、桂ちゃんをここへ呼んだのだ」
「フェイズ2?」
「そう」
小学生のような小さな手がVサインを突き出し、ふふんっと得意気に鼻を鳴らした。
「じゃあ、告白って」
「もちろん、僕の正体を明かすためだ。それ以外に何がある?」
不思議そうな顔をする。
お前は天然ビッチか?
俺の純情を返せ。
確信した。
所詮アオハルなんてただの創作なんだ。
過去、ゲーム女子と現実女の差に絶望を味わった。
それと同等な希望の消失。
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