サクラサク
そう、俺のイタズラがバレているんだ。
しかも、その作戦内容に個人情報も完璧で、予言者の予言に匹敵する完成度だった。
なので認めたくはないが、最近の俺が連敗している要因はこのラブレターを封印しているからだ。
でも、それは当然であろう。
誰か分からない正体不明の情報なんて頼る訳にはいかない。
予言者に質問しても良い答えは帰ってこない。
唯一のヒントが『彼女』即ち女だと言うことだけだ。
しかもほぼ毎回入っているので、ストーカーかヤンデレをリアルで経験いる気分になる。
でも、でも、それでも健全な男子としては思ってしまうわけだ。
つい来たかと。
このキャワウイ便箋を観よ。
ピンキーカラーをメインに沢山のハートマークがあしらわれている。
これはどう見てもラブレター以外の何物でもない。
極めつけは、『桂様へ』のあと、手書きのハートマークが好感をマックスにさせた。
いや、でも、もしかしたらと。
いやいや、そんな奇跡なんてあるわけがない。
いやいや、望んでいれば現実になるんもんだよ。
いやいや。
いやいや。
否定と肯定が堂々巡り。
結局これでは切りがないので恐る恐る中身を確認する。
『拝啓 桜も散り新緑の季節となりました。一面に散りばめられた淡い色の花びらが、儚げで寂しくもあります。桂様はどうお過ごしでしょうか? 告白したい事があります。放課後、屋上に来てください』
……これ、どう解読するの?
本題に移るの早くね?
しかも簡潔。
前置きなんてどうでも良いだろう。
俺はどうこの原文を読み返しても咀嚼不可能だった。
元々ミステリーは読んでいると爆睡してしまうからトリックの知識が乏しい。
このように期待していたが素直に喜べないのが勘太郎ちゃんクオリティー。
秘密情報工作員になれる位の身に付けた警戒心が、暗号または炙りだしでは無いかと勘ぐってしまう。
これまでに無い展開に、戸惑いを覚えたのは言うまでもない。
初等部から研鑽してきた独りマイムマイムや、遠慮して隅っこにいた集合写真など、学校イベントにことごとく逆らってきた手前、自称孤独を愛する人は悩んだ。
可愛い丸字だ。
憧れの恋文としては簡潔だが、それまで送り付けてきた犯罪ギリギリの個人データの一覧表とは雲泥の差。
俺に春が来た。
教室の窓から入道雲が見える初夏だけど。
名前は書いてないけど香水の良い香りがした。
去り際、偶然円谷と目が合うと、俺は何故か咄嗟にラブレターを隠した。
仲間に入りたそう目で見たって、出来る事と出来ないことがある。
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