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スローライフ夢見て陰キャラ学生に転生した魔王だったが、それでも勇者との因縁から逃れられない ~俺のラブコメは歯車が外れているに違いない~


「それで結局、一条は何を言いかけていたんだ?」

「そう、それそれ!」

「何だよ騒々しいな」


 一条は星を平らげる如く凛子特大おにぎり2個目を完食。

 お子様なので言わずとも分かる程、また口回りがご飯粒だらけだ。


 それはそうと、外はまだ汗が滲むほど気温が高いのに、このお嬢様はトレードマークのマントを羽織っていた。

 それでなくてもこの間、炎天下の海で軍服フル装備を敢行した結果、熱中症でダウンした前歴があるのだ。

 これは決して大袈裟ではない。


「授業中凄い事を閃いたんだよん!」

「お前の凄い事は宝くじの5等より当たった試しがない」

「部活を作ろう!」


「「「はい?」」」


 疑問系のフルコーラスが見事に決まった。

 正規のプロセスを全て抜かして料理を出された気分。

 どうしてそうなったかの経緯をはしょるとは相も変わらず頭がフェスティバル、何が飛び出すが分からない。


「サラサ、話が読めないんだけど一体何の部活をやるつもりなの? 運動系と文系だと手続き違うから思い付きで言ったら駄目よ」

「難しいが敢えて言うならば特殊系なのだ」

「そうか、なら帰宅部とか、よろこ部とか、あそ部とか、くりすますい部か?」

「それは桂ちゃんの理想でしょうが。しかも遊ぶ事だけに特化しているし」

「あーしはアラブとかカリブとかモルディブとかが良いっしょ!」

「それはまどまどの行きたいリゾート名なのだ……」

「アクティブとかオーブとかウエーブだったら格好いいなぁ」

「久保田君嫌い」

「何で俺だけ!?」


 可哀想な奴。


「冗談はさておき、僕達が行っている活動を正当な物にするんだよ」

「サラサ、何言っているの?」

「サラサさんと言えども正気の沙汰じゃない。あんな反社会的なイタズラはもう止めるべきだよ」

「それにさらっち、面白そうではあるけど、ある意味犯罪ギリギリの場面もあるのに学校がそんな部活認めてくれる訳がないんじゃね?」


 分かっていたが反論が返ってきた。

 それだけ俺達の事を心配してくれているんだ、ここは考慮にいれて考え直すのかま妥当だと思うが……。

 それに皆の言っている事はもっとも至極当然だ。

 正論である以上、これを論破するのは至難の技だぞ。


 人差し指を立て、チッチッチと、「そんなのは想定内なのだよ」芝居かかった言い方が格好いいと思い込んでいる一条。


 いつの間にかお昼のご相伴に預かっていたにゃん太郎を頭に乗せ、「ぶにゃあ♪」颯爽と立ち上がると、


「魔王部や勇者部なる部活があるんだ。イタズラ部があってもおかしくはないんだな、これが。ふふん♪」

「あれ? そう言えばそうだよね。こんなサラサさん好みなインパクトあるもの忘れているなんて」

「くそー! そんな面白そうなの今まで気付かなかったんだ。そうしたら俺は魔女部に入っていたのにぃぃ!」


 自分を責めるのは自由だが、入部したところでロリババアどもの魔術の材料になるのが関の山だぞ。


 そう、俺の超ユニークスキル『幻想世界否定』が弱まった影響でどうでも良いものにまでファンタジー化が進んでいる。

 だから元々無かった物が現れてそれが自然に認識されていった。


 だが、


「部活? 冗談じゃない。俺はスローライフ夢見てこの世界に転生したんだ。陰キャラとして勇者にも本来ならもう関わりたくなかったのに――」

「それ、いただき!」

「え?」

「その名も『勇者討伐部』スローガンは――」


『スローライフ夢見て陰キャラ学生に転生した魔王だったが、それでも勇者との因縁から逃れられない ~俺のラブコメは歯車が外れているに違いない~』


「部長はにゃん太郎! モチ、全員参加なのだぞ! 拒否権はない!」

「「「えええぇーー!?」」」


 まだまだ、理想の陰キャラライフは遠そうだ。


◆◇◆◇


 お・ま・け


「こら遙斗、ゲームはご飯食べてからにしろよ」


 焼き上がった野菜炒めを皿に分けていると、「はーい! 兄ちゃんぼくも手伝うー!」とたとたとフローリングに元気な声と共に駆け寄ってきた。


 流石は我が弟、聞き分けがすごぶる良い。


 夕刻、晩御飯、数少ないマイエンジェルとの語らい。

 誰にも邪魔されたくはない一時だ。


「えらいぞ、流石は俺の弟だな」

「そう、なんせぼくは勇者だもんね」

「そうだなお前は勇者だ。だから、今日こそはピーマン残さず食べろよ」

「ぜ、善処します」

 

 元気なマイブラザーが、すこぶるテンションダウンしたのは言うまでもない。


「だから、ぼくが勇者王エドウインって言っているのに……」

「遙斗何か言ったか?」


 ぶつぶつと呟いていたので、良く聞き取れなかった。


「何でもない! 兄ちゃん超大好き!」

「はいはい、俺も超超大好きだよ」


 こうしてまた何気ない日常が音を立てて動き出すのであった。


 完



今まで読んでくれてありがとうございました。

これにて、勘太郎達のイタズラ物語は終演です。


久々に十万超えはきつかったです。

執筆はマラソンや編み物に似ています。

完走するにはそれなりのパワーが必要だと痛感します。


今構想中の次回作もまた読んでくれると幸いです。

ではお疲れ様ですm(__)m

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