魔族と悪魔は別物
「一条、真っ黒だな」
「ふっ、僕……我は魔族なので」
一々ポーズをとって格好つける一条。
呼称を言い直すのはまだまだ未熟だが、ここ一ヶ月でレベルアップした決めポーズは著名なコスプレイヤーの仕事だ。
「ただ単に日焼けだろ? 凛子にこき使われたってぼやいていたからな」
「わわわ、後生だから言わないで」
「ふふふ、サラサにはもっと手伝ってもらうわよ」
「ふかくぅぅぅ!」
お揃いの小麦色の肌。
暑い中じゃれあっている二人は、Yシャツの襟元から覗いている焼けていない部分がくっきり残っていた。
「一条さんは確か暴食の悪魔だっけ?」
「む、我は魔族なのだぞ!」
「はははっ、同じでしょ」
「村重それNGワード。悪魔と魔族は違うらしいぞ」
「久保田君は嫌いなのだ」
「何で俺だけ!?」
空気が読めない村重は、火中の栗状態な顔に出やすい一条の喜怒哀楽にも気付かず地雷を踏んでしまう。
顔はモブのクセに中々個性的な短所だ。
ただの待ち合わせのつもりが、自称魔族の陰謀でこんな個性的なメンバーと何故か屋上で食べることになった。
お陰で鎖国していた俺だけの城が無血開城。
ボッチの夜明けぜよ。
しかし、俺だけじゃなくて凛子達まで集合させて何を考えているんだ?
確かに俺達が裏で何をしているのかはもうバレている。
あれから夏の間、大なり小なり手助けしてもらった事も多々あるのだ。
だが、本人達にとっては崇高な目的なのだが、第三者から見れば所詮はただのしょうもないイタズラ。
出来ることならこれ以上は巻き込みたくはないのだが。
「それでサラサは何で私達を呼んだの? 別にご飯一緒に食べたかったって訳でもないでしょ。はい、サラサの分」
「一条の事だ、ろくでもない気がしてしょうがない」
一条は俺の経験から来る予言をスルー。
海苔を使って地球に見立てたインスタ映え抜群の大型握り飯を受け取り豪快にかぶり付くと、「みなの者良く集まってくれたのだ。もうご存知だと思うが、僕達は勇者王の誕生を阻止する為にイタズラをしている。幸い桂ちゃんと僕の活動はここいる面々以外は周知に知れ渡っていない――うう、くく、苦しいいいいい!」勢い良く頬張ったせいなのか、喉を詰まらせ目を白黒するも、運良く俺のお茶を強奪して事なきを得た。




