真のメインイベント
「それで言うことは?」
「はいはい、わたくしめの敗北でございます。白旗白旗」
負け惜しみタップリおざなりに敗北宣言。
当たり前だが両手を上げる事も忘れないのは、俺が怒っていないよアピールする、または場を和ませる為であって、アメリカンヒーローに憧れている訳でもポリスメンに威嚇されている訳でもない。
などと、勘太郎君の内なる心遣いを理解していない、桂 勘太郎被害者の会一同はしてやったりと言わんばかり破顔一笑した。
元は自分の撒いた種とはいえ、今回のは今までのイベントで一番堪えた。
今後自重したいが、勇者王がそれを許してはくれないだろう。
「さて、桂ちゃんがへこんでいる内に、そろそろメインイベントにいくのだ」
「まだ何かやる気か?」
俺は当然身構える。
ポーズ的には怪獣と対決する時の構えだ。
だが、今までのが前座ならこれ以上のイベントはシラケてしまうのではなかろうかと、自称エンターテイナーとしては構成に疑問を投げ掛けなければいられない。
「「「桂 勘太郎、誕生日おめでとうー!!」」」
クラッカーが一斉に大きな音を立てて鳴り響くと、「……へ?」本当に片隅にも思っていなかったので思考停止。
死んだ爺さんが生き返ったと言われるより衝撃的で、大いにクラッカーの中身が掛かってもさして気にはならなかった。
狐に化かされたのか?
ならばキツネっ子コスプレをプリーズ。
「ふふ、勘太郎、驚いた?」
「学園1の嫌われ者に何の冗談だ?」
という風に自身をディスってみるが内心穏やかではない。
まして自分の生年月日をド忘れしただけでも、長年の友達がいない弊害どころか親にも祝ってもらった事がないのを再確認してしまってショックが大きい。
「どう? どう? 驚いた? 驚いた?」
ぴょんぴょんと何処かの戦闘部族のように飛び跳ねる一条。
「ふん、勘違いしないでよね。ばかつらはどうでもいいんだけど、さらっちが世話になっているから保護者の一人としては何かしないとね」
言いたい事を言ってそっぽを向く香月。
何処のツンデレさんだ?
「おめでとう、でも、桂さん、親友達を危険にさらしたら今度は殺す」
笑顔で冗談ぽく言っているが、鋭い眼光で睨み付けてくる早乙女改め小泉。
相変わらずのツンデレのツンだけのこの方だけは本気でやりかねない……。
そして、
「サプライズ大成功でしょ?」
乱れた髪を手櫛でとかしながらハニカム凛子さん。
恐らくこちらも仕掛人の強制ダブルイベントヒロインはコロコロと笑った。




