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ノープランの対峙


「暑いなぁ」

「桂、何の用だ?」


 木の上で喚いて勇者になり損ねた残念ヒーローは、屈んでいた状態から静かに立ち上がる。


「別に。顔見知りがいたから声を掛けただけだ」

「そうか。お前は寂しくても敵の俺にしか声を掛けられない程のボッチだったもんな」

「誉めるな、照れる」

「嫌味だ」

「さいですか」


 両雄並び立つにしては二人とも役者が不十分だが、それでも互いに目だけは逸らさず見つめている。

 別に見つめても通じあっている訳じゃないが、これが青春男子の古来からの流儀。

 絶滅危惧種どころか、もうファンタジーのカテゴリーに入っているヤンキーまたは不良風に表現すると、ここはメンチを切るかガンを飛ばすが正解だろうか。


 見ての通り俺達は仲が悪い。

 ツラが視界に入る度唾を吐く程だ。

 言うまでもなく、何事も原因があるから結果がある。

 それは武田信玄と上杉謙信な俺達も例外はない。

 と言っても敵に塩送らないで双方傷口に塩を塗り込むが……。


 さて、ノープランでシャシャリ出てきたは良いのだが、ここからどうやってデートの邪魔をすれば望みの結果へ実を結ぶのであろうか?


 周囲を見渡すと、呆然としているのかはたまた無反応なのか、前髪が邪魔で表情が確認できない早乙女が立ち尽くしている。

 その対面には呆れ顔の香月が溜め息を吐いた。

 ボールにはすくった金魚が溢れているが、これでは水槽からすくったのか、この世の生命のくびきから救ったのか密かに物議を醸すだろう。

 離れた場所、要は俺の元の所在には一条が早く戻れと懸命にジェスチャーを送っている。

 だが、よさこいソーランにしか見えないのは俺だけだろうか……。


 キャルゲーでは肝心な場面で選択肢を間違ったらトゥルーエンドどころかハッピーエンドも危ういのが多い。

 俺の決断が正規ルート進んだのかまだ断定は無理だ。

 このくだらない世界が俺と久保田の直接対決がお望みならば、喜んでピエロの如くジャグリングや玉乗りに興じようではないか。

 ついでに、バルンアートは弟にせがまれて既にプロ級だという事をここに記載しておこう。


「……………………………………」

「……………………………………」

「桂、何か俺に言うことがあるんじゃないのか?」

「特に言うことはない」


 遠回しに謝罪を求める久保田に対してしれっと躱す。

 奴をドン底に叩きつけたSNS晒し事件の首謀者が俺だとこいつは思っているみたいだ。

 正解だけど。

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